

低中回転域で心地いい鼓動とトラクションが味わえる一方で、高回転域では振動が収束し、鋭い吹け上がりが堪能できる90度Vツイン。このエンジン形式に最も力を入れてきたのはドゥカティだ。

DUCATI PANIGARE V2
ドゥカティ製スーパーバイクのエンジンは、2019年からV2→V4に移行。ただしスーパーミッドの新型車として、2020年の同社は955ccのパニガーレV2を発売。約半世紀にわたって継承してきたドゥカティ90度Vツインスポーツの血統は、まだまだ途絶えないのである。
新車価格:225万円
中村のひとことインプレ!
ライディングポジションがかなりスパルタンだから、とっつきはあまりよくないものの、パニガーレV2のキャラクターは意外にフレンドリー。現在の旗艦であるV4や既存の1299パニガーレは、限られた場所でしか楽しめなかったけれど、排気量とパワーが控えめで、電子制御の洗練が進んだこのモデルなら、多くのライダーがドゥカティ90度Vツイン特有の爽快感とヒラヒラ感を満喫できるはず。
20年にわたって生産が続く
スズキの90°Vツイン
SUZUKI V-STROM 1050XT
ドゥカティほど長い歴史はないものの、スズキの90度Vツインもかなりの長寿機種で、生産期間は20年以上。現在は、リッタークラスでVストローム1050、ミドルクラスでVストローム650とSV650/Xを販売。
新車価格:151万8000円
※写真はEICMA2019出展モデル
Vツインの一番人気はシリンダー挟み角90度
パラレルツインにさまざまな位相角が存在するように、Vツインには多種多様なシリンダー挟み角が存在する。
既存のVツインで最も採用例が多い挟み角は、不等間隔爆発特有のトラクションが得られるうえに、現代のパラレルツインで必須のバランサーがなくても、高回転で振動が収束する90度だ。そして最も有名な90度Vツインといえば、多くの人がドゥカティを思い出しそうな気がするものの、ホンダVTシリーズや、スズキTL/SV/Vストローム系、1960年代中盤以降のモトグッツィも、エンジンは90度Vツインである。
また、BMWが得意とするフラットツインは、360度の等間隔爆発だが、2つのピストンがお互いの慣性力を打ち消す動きをするため、360度位相のパラレルツインのように、高回転域で過大な振動は発生しない。ただし偶力振動の解消を意識したBMWは、2000年代前半以降のフラットツイン全車に、バランサーを採用している。

バイクの世界では特殊なエンジン形式。とはいえ、重心の低さや振動の少なさ、冷却性能の高さ、シャフトドライブとの相性のよさなど、フラットツインには数多くの美点が存在するのだ。
ネオクラシック系モデルは
空水冷ではなく、空油冷を搭載
BMW Motorrad
R nineT Urban G/S
2014年から発売が始まったR nineTシリーズは、空油冷フラットツインを搭載するBMWならではのネオクラシックモデル。オフロードテイストを感じるアーバンG/Sのモチーフは、1980年に登場した初代R80G/Sだ。
新車価格:193万4000円〜 中古相場:112.9万〜172万円


最新のR1250シリーズが搭載する空水冷フラットツインが、パワフルでシャープな特性になっているのに対して、R nineTの空油冷フラットツインは牧歌的なフィーリング。縦置きクランクならではのトルクリアクションも大きめだ。
※中古車相場価格はグーバイク調べ(2020年5月)。