ハーレーのVツインエンジンはなぜ、ライダーを魅了するのか?

ハーレーのVツインエンジンはなぜ、ライダーを魅了するのか?
V型2気筒

Vツインにはさまざまな挟み角/位相角が存在する。ただし、世界中で最も多くのライダーから支持を集めているのは、ハーレーが100年以上にわたって堅実な熟成を続けている、空冷45度Vツインだ。

重たいクランクがゆったり回る感触は他では味わえない

中村のひとことインプレ!

現在のハーレーが販売する空冷45度Vツインのなかで、フレンドリーさとスポーティさを最も高次元で両立しているのがアイアン883。トルクの太さや豪華さという面では、1200ccの兄貴分や1746/1868ccビッグツインに及ばないけれど、重たいクランクがゆったり回る感触は十分に堪能できる。

Harley-Davidson IRON 883

2009年の登場時はファクトリーカスタムだったものの、現在のアイアン883は、空冷45度Vツインのベーシックモデルという位置づけ。エンジン内にバランサーは装備していないが、前後マウント部に巨大なラバーを使用しているため、振動はほとんど気にならない。ただし低回転域では結構ユサユサ。

新車価格:137万3900円〜 中古相場:49.8万〜134.3万円

Harley-Davidson IRON 883

1930年代の基本構成を80年以上にわたって維持

 形式はVツインになるものの、ハーレーの主力機種は、他社のVツインとは異なる構造を随所に採用している。
 最もわかりやすい相違点は、エンジンとミッションの部屋を分けていることだが、チェーンを用いた1次減速も、昨今のバイク界では珍しい機構だ。
 とはいえ、それ以上に重要な要素、ハーレー独自のフィーリングを構築している要素は、OHVの動弁系、相当に重くて左右幅が狭い組み立て式のクランクシャフト/フライホイール、雄雌式でオフセットがないコンロッドだろう。逆に言うなら近年のVツインは、DOHCあるいはSOHCの動弁系、一体鍛造の軽量なクランクシャフト、横並びのコンロッドが一般的なのだが、ハーレーの空冷45度Vツインは、1930年代に確立した基本構成を、現在でも頑なに維持しているのである。
 そういった構成を維持しているからこそ、ハーレーは低回転・低速域が楽しいのだ。エンジン上部に高速回転するカムシャフトが存在せず、下部にヘビーなクランクが備わっているおかげで、低重心ならではの安定&安心感が味わえるし、それでいてクランクとコンロッドはスリムだから、左右への動きは予想以上に軽快。もちろん、不等間隔で爆発するエンジンも、低回転・低速域が楽しめるキャラクターに仕上げられている。なかでも、重たいクランクがゆったり力強く回る感触は、現代の他のエンジンでは味わえないものだろう。

ハーレー3つの魅力

  1. 乗り手を急かさない、穏やかなキャラクター
  2. 昔ながらの構成で実現した、重心の低さ
  3. チューンアップパーツが豊富に揃っている

ハーレーの空冷エンジンは2種類

ビッグツイン

ビッグツイン

スポーツスター

スポーツスター

ハーレーの王道と言うべきビッグツインのエンジンは、吸排気バルブを動かすカムシャフトが1または2本で、エンジンとミッションが別部品だが、親しみやすさと運動性を重視するスポーツスターファミリーは、カムシャフトが4本で、エンジンとミッションが一体式(ただし部屋は分かれている)。

※中古車相場価格はグーバイク調べ(2020年5月)。

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