2024/06/03 19:42:53 更新【キャブレター整備】カワサキ W1S ガソリン漏れ修理カワサキ W1S
ガソリン漏れのトラブルで、初年度登録1970年のカワサキW1Sにご入庫いただきました。

とても奇麗な車両です。 定期メンテナンスによりエンジンのコンディションも良好。 キック一発でバーチカルツインのエンジンは目覚めてくれます。 しかしながらガレージ内でガソリン漏れを起こしてしまいました。 旧いオートバイですからガソリンタンク内にゴミや錆が蓄積されています。 こちらの車両もタンク内の見た目は奇麗なのですが、少しずつたまった不純物がキャブレターに流れ込んでいるはずです。 その為、旧いオートバイのキャブレターは定期的に洗浄する必要があります。

可能であればガソリンタンクとキャブレターの間のガソリンライン(ホース)にフィルターを装着しましょう。 その上で日常的に気を付けてすべきことはふたつ。 ひとつめは燃料コックのリザーブ(予備)を使わないこと。 燃料コックはガソリンタンクに装着されているわけですが、タンク内にストロー上のパイプが突き出ています。 通常はこのパイプの上部からガソリンを吸い込んでキャブレターに送るのですが、ガソリンが減って油面がパイプの先端よりしたに下がってしまうとガス欠症状が発生します。 燃料コックをリザーブ(予備)に切り替えることによりタンクの最下部になる燃料コックの根元からガソリンを吸い込みます。 これによって通常のON状態でガス欠したあとでも、走行を続けることが出来るのです。 リザーブ(予備)といっても、リザーブタンクがあるわけではないのですね。

ところがタンクの最下部にはゴミなどの不純物が蓄積しています。 リザーブ(予備)を使うことにより、この不純物を吸い込んでキャブレターに送り込んでしまうのです。 リザーブ(予備)を使ったあとに調子の悪くなるオートバイが多いのはこのためです。 基本的にはガス欠を起こさないように燃費計算をし、できるだけリザーブ(予備)はつかわないようにしましょう。 あくまでも緊急時に使うべきものであり、リザーブ’予備に切り替えてからガソリンを給油する習慣の方は注意が必要です。 もうひとつは定期的にキャブレターのフロートチャンバー部に溜まっているガソリンを抜いてあげることです。 ドレン(排出)ボルトを緩めれば、キャブレター内でガソリンをためるフロートチャンバーの底からガソリンを排出できます。 こうしてキャブレター内の不純物をためないように注意する必要があります。

キャブレター内にゴミなどの不純物が混入するとフロートの動きが阻害され、ガソリン漏れ(オーバーフロー)を起こすことがあります。 今回のガソリン漏れもその可能性があるため、キャブレターを分解してみたところやはりわずかにゴミが見られました。 よく見ると粉状の鉄分…つまり粉状の錆です。 これによってフロートの動きが悪くなり、オーバーフローを起こしていたようです。 フロートチャンバーにガソリンが流れてくるとフロートが浮き上がります。 フロートの先にはガソリンの流れを止める弁の役割をするフロートバルブがあります。 このフロートがきちんと浮上ってくれないとガソリンの流れが止まらずにオーバーフローを起こしてしまうのです。

フロートがきちんと浮上ってもガソリン漏れや滲みが止まらないときは、弁の役割をするフロートバルブに問題があることがあります。 点検してみると経年による摩耗で段付きが見られましたので交換します。 同時にこの弁を受け止める側のバルブシート部も研磨して表面をならします。 フロートとフロートバルブがしっかり機能すれば燃料コックがONのままでもガソリンはキャブレターに必要以上は流れ込んできません。 逆に言えば摩耗してガソリンが少しずつ流れこんでくることは珍しくありません。 だからこそ、基本的にはオートバイにのらないときはコックをOFFにする必要があります。 (OFF機能がないコックは負圧式といってエンジンを停止すればガソリンが流れ込まなくなります)

今回はコックをOFFにしていたにも関わらずガレージ内でガソリンが漏れました。 つまりキャブレターのフロートやフロートバルブだけの問題ではなく、燃料コックもきちんとOFF状態でガソリンの流れを止められていなかったことになります。 燃料コック内にはゴム製のパッキンが使われています。 経年によりゴムパッキンは摩耗したり、傷ついて破損したり、あるいは劣化でゴムか硬化して滲んでしまうことも。 こうなるとガソリンをしっかり止めることが出来ません。

純正の通常「ダルマコック」です。 この内部のゴムパッキンを交換する方法もありますが、今回はオリジナル部品(新車時からの純正部品)にはこだわらず、確実にガソリン漏れを止めることを優先するというオーナーの方針に従い、燃料コックを新品に替えることにしました。

確かに取り外したダルマコックにも錆が蓄積されているのがわかります。 一応、コックには目の細かな網があり、これがフィルターの役割を果たしていますが粉状にこまかくなった錆はキャブレターに流れて行ってしまうのです。 今回は新品のコックに変更し、キャブレターまでのガソリンライン(パイプ)にフィルターを追加し、更にキャブレターを分解洗浄、フロートバルブの交換を行いました。

燃料タンクを外して整備したのですが、アクセルワイヤーの表皮が一部破損しているのを見つけました。 これも交換しました。 数日間、燃料コックをONにしたままガソリン漏れや滲みがないかを確認。 わずかなガソリンの滲みも、ガソリン臭さもまったく感じなくなりました。

これにて作業完了。 キャブレター内の不純物はガソリン漏れを引き起こすだけでなく、ジェット類に入れば吹け上がりにも問題が生じます。 可能であれば定期的にキャブレターの分解整備をしてあげるのが良いでしょう。