ドライブベルト、ウェイトローラー、スライドピースといった駆動系部品の交換（オーバーホール）と、オイル交換でヤマハジョグにご入庫いただきました。

スクーターはエンジンの動力をベルトを介して後輪に伝えています。 自転車や多くのオートバイはチェーンで駆動しており、大型車のツアラー車ではシャフトドライブといういこともありますが、スクーターはほぼベルト。 原付スクーターになれば100％ベルト駆動です。

普段はカバー内に収められているので気付かない方も多いのですが、樹脂製のベルトで駆動しています。

ベルトは伸びることも無く、注油も必要ないメンテナンスフリー部品ですが摩耗すると切れます。 切れてしまえばオートバイは前にすすみません。 エンジンは調子よく始動しているのにまったく駆動力がなくなったときは、このベルトがきれているときです。 ベルトは目視点検しても寿命がよくわかりません。 カバーされているので点検するのも手間がかかります。 その為、一定の距離ごとに交換をしてください。

ベルトと同時にウェイトローラーとスライドピースも交換します。 これらの部品はスムーズな変速（スムーズな加速）の為に必要な部品です。 一般的に原付スクーターのベルトなら12,000〜15,000キロぐらいで交換しましょう。 高速走行時にベルトが破断すると、駆動系等の部品に破損したベルトが噛みこんでリアタイヤがロックすること。 いきなり予期せず急ブレーキです。 危険です。 乗りかたによって劣化具合に差はありますが、12000キロを超えたら注意して出来るだけ早めに交換しましょう。

普段は見えないベルトですが、ケースを取り外せばご覧の通りプーリーやクラッチと共にベルトが見えます。 前方のエンジン側にあるのがプーリーで、ベルトを介して後方のクラッチに動力を伝達しています。

プーリーのセンターナットを緩め、プーリーを取外し、プーリー表面の汚れや劣化を確認。 この表面をベルトがスライドしてるわけですが、一定の個所ばかり使っていると稀に段付き摩耗を起こしてしまうことがあります。 そうなるとスムーズな加速（変速）ができなくなりますのでプーリーを交換する必要があります。

プーリーの内側にはウェイトローラーが仕込まれています。 ウェイトというだけあってコロコロ転がる重りです（正確には転がるというより滑るわけですが） エンジンの回転数に連動し、遠心力でウェイトローラーが位置を変え、プーリーを稼働させています。 これによってスムーズな変速をしてくれているのですが、ウェイトローラーは消耗品で摩耗して平らな箇所ができてしまいます。 こうなるとスムーズに動いてくれずに変速しなくなります。 ベルト交換時には同時にウェイトローラーを交換します。

後部のクラッチも取外し、駆動ケース内やプーリー、クラッチを清掃します。 クラッチも摩耗しますが、ベルト程は交換頻度が多いわけではありません。 むしろプーリーやクラッチは汚れの方が気になります。 ベルトのカス（カーボン）や油分を奇麗に除去しておきましょう。 作業中に手の皮脂が点くのもNGです。 作業中は小まめにせっけんで手を洗いながら作業します。

ベルトの交換をが完了すれば続いてオイル交換。 古いオイルを抜いている間に車両各部の点検。 タイヤの空気圧もだいぶん減っていますね。 適正値まで調整し、車両の各部をのぞき込むように目視点検。

オイル漏れはないか？ 部品の脱落、欠損、破損は無いか？ ネジなどのゆるみは無いか？ オイル交換後には洗車をしますが、素手でオートバイ全体をまんべんなく触れることによってネジのゆるみなどを発見することがあります。 洗車はサービスではなく、仕上げの点検（触診）なんです。 洗車はしなくていいよ！ というお客様の場合は、このオイルを抜いている最中にあちこちを触って触診します。 ついつい乗りっぱなしになりがちな実用車としての原付スクーター。 わすれずに定期的にオイル交換、点検をしてあげましょう。

抜いたオイルは若干白濁気味。 水が混じっていますね。 通勤で最寄り駅までの近距離走行がほとんどの50cc エンジンがじゅうぶんな熱を持つ前に停止するので、エンジン内部に結露が発生しちゃうのです。 冬場は仕方ないと言えば仕方ないですね。 次のオイル交換は暖かくなったら早めにやりましょう。 いつもご用命いただきありがとうございました。