個性あふれるホンダV型シリーズ
ホンダというメーカーは他にないものづくりを好み、技術的なチャレンジを惜しまない集団だ。様々なエンジンを生み出してきた中で、多気筒化により世界を席巻した歴史はつとに有名。それを市販車として具現化したCB750から遅れること8年後の77年に、ホンダでは初めてとなるV型エンジンを搭載した市販車“GL500”が世に送り出される。搭載されていたのはOHV80度V2で、エンジン以外にも様々な技術的チャレンジが盛り込まれていた。
以降、ヤマハのRZ250に真っ向勝負を挑んだVT250FのDOHC90度V2、大排気量車の新たな指標を目指したVF750セイバーのDOHC90度V4など、ホンダ製V型エンジンは常に新たな価値観の創出を狙っていた。GL系V2エンジンにターボを装備したCX500ターボや、当時のGP500マシンを彷彿とさせる2ストV3搭載のMVX 250など、ユニークでエポックメイキングなモデルが多いこともホンダ製V型エンジンの特徴である。
V型のおもしろさは、エンジンをコンパクトにまとめられるというサイズの優位性と、フレキシブルな特性にある。それはレーサーからクルーザーまで、ホンダ製V型の幅広い車種構成を見てもらえればわかるだろう。
V2、V3、V4、縦置きに横置き、4ストに2スト……現行車はもちろん、絶版車も豊富なホンダV型エンジンは、トルクフルな乗り味と緻密な作りを楽しめる名機が多いのである。