日本製スポーツバイクは、70年代以後に急速に進化した。そして80年代のレプリカブームを境に、スタイル、性能ともに、まさにロードゴーイングレーサーの体へと突き進んだ。高性能、しかも手ごろな価格で入手できる日本製スーパースポーツは、世界中のエンスージアストに支持されることとなった。
そうした日本製バイクの攻勢をまともに受けた欧州メーカーは、存続さえできないほどの窮地に追い込まれる。しかし、カフェレーサーをはじめとしたスポーツバイク造りは、細々とだが続けられていた。頑固なまでのクラフトマンシップが、弱体化した欧州メーカーを支えたといっても良い。
現在も日本製スーパースポーツの勢いが衰えることはない。レースシーンでも他を圧倒している。だがここへきて、欧州各メーカーが送り出してくるスーパースポーツが、俄然元気だ。
たとえばイタリアのドゥカティは、V4ユニットを搭載するモトGPマシンを投入するなど、意地の戦いを挑んでいる。さらに市販車においても、トラスフレームやLツインエンジンなど、伝統的な手法を採用しつつも大幅に進化させたスーパーバイクシリーズが、地元ヨーロッパだけでなく日本でも高い人気を呼んでいる。
そのスーパーバイクラインアップの最高峰モデル、999R。車体を構成するさまざまなパートに一級のパーツを惜しみなく投入し、さらにカーボン素材で軽量化を促進。コンポーネンツを見ただけでも至極のマシンにふさわしい。それだけじゃない。エンジンパフォーマンス、運動性能のどれをとっても、日本製バイクに一歩も引けを取らないだけの高性能ぶりなのである。
いっぽう、アプリリアの最上級モデルRSV1000Rにしても然り。フレームワークや水冷60度Vツインと独自の構成を見せてはいるが、やはり高性能な一流パーツを装備し、まとめ上げている。スタイリング、ポジションともにレーサー度を強調しているのも特徴的だ。
見まわせば、欧州メーカーが送り出しているスーパースポーツには、伝統と個性を失うことなく進化させているところが、どのモデルにも共通する。しかもそこには、手作り感覚あふれるアナログ的な匂いが漂うのである。人間的な……という表現が当てはまるかどうかはわからないが、どこか有機的な感じがしてならない。スペックデータという数値に表れない魅力的性能。それが海外メーカーのスーパースポーツにはあるのだ。 |