今、ミドルエイジ向けのファッションスタイルマガジンが話題になっている。かっこいい腕時計、ジャケット、そして靴。家の特集やカバン、もちろんクルマのページだってある。
しかし、かっこいいバイクたちが俎上(そじょう)に上がってこない。今のミドルエイジは少なくとも、バイクの免許が取れる年ごろになったとき、免許制度の変化や暴走族問題などがあって、バイクへの積年の思いを持ち続けている世代でもある。
そこで、乗りやすさを前面に出した甘口ではなく、あくまでもスポーツモデルの心臓を持ち、街なかユースでも快適なポジション、しかもエキセントリックなデザインで個性も奮発。しかもブランドイメージを投影したスタイルを持っていて、いわば「羊の皮を被ったオオカミ」。クルマでいえばハイチューンエンジンを積んだセダン、そんな輸入車をミドルエイジ本に代わってここにレコメンドしたい。
欧米メーカーのそれは、スポーツモデルからフェアリングをはぎとり、セパレートハンドルをパイプハンドルに換えた、というスタイル。ちまたではストリートファイターなどとも呼ばれ、アドレナリン濃度の高さをにじませているのが特徴だ。
こうしたムーブメントの先駆けになったのが、モンスターの成功だろう。テールを短く切り詰めたスタイル、十八番のトレリスフレームの上に背中を丸めた生き物が張り付いたようなタンク……こうしてできあがったスタイルは、それまでのドゥカティを含むどのバイクとも違ったパッケージになっていた。92年のIFMAショーに出展され大きな話題を呼び、早15年!
そのモンスタースタイルは今も健在。今回連れ出したS4Rは、水冷ハイチューンエンジンを積む、シリーズ中でもっとも辛口モデルである。小さなライトカウルからリヤシートを覆うカバーの上まで続く白いストライプや、高性能を印象づける金色にコーティングされたフロントフォークなど、マニアックなディテールには事欠かない。
それに対向するKTM・スーパーデュークは、モンスターの新しいコンペティターである。エンジン特性やハンドリングはもちろん、ブレーキのタッチに至るまで素晴らしく、1台のスポーツバイクで、ストリートからワインディングまで楽しみたい、というライダーにはうってつけのバイクである。S4R同等以上に感じるパフォーマンスは、オーストリアメーカーの今後を大いに期待させる仕上がりとなっているのだ。 |