

2017年、イタリアでのコンセプトモデル発表にはじまり、今年春の東京/大阪モーターサイクルショーで期待が最高潮に高まったスズキのニューモデル・KATANAがついに発売された。ネオクラシック全盛のいま、今年最大の注目を集める同モデル、そしてそのイメージソースとなったGSX1100Sカタナを特集したい。
Photo/Hiromu Inoue、Koji Wakabayashi、Masanori Inagaki Text/Tomohiko Nakamura、Toshiyuki Sagayama
GSX1100S
世界に衝撃を与えた
カタナの原点
独創的なスタイルだけではなく、当時の日本車では異例となるセパハン/バックステップ/段付きシートの採用も、大きな話題となった初代カタナ。初期のプロトタイプは、マフラーが量産仕様の2本出しとは異なる4-1式で、スクリーンは存在しなかった。
既存の枠に当てはまらない
新境地を切り開くモデル
80年のケルンショーで発表され、翌年秋から市販が始まったGSX1100Sカタナは、スズキの歴史、いや、モーターサイクルの歴史を語るうえで欠かせないモデルである。今で言うネイキッドが王道だった80年代初頭において、抜き身の日本刀を彷彿とさせるカタナのスタイルは、超がつくほど衝撃的だったのだから。
もっとも、当時のスズキの旗艦を務めていた、GSX1100Eをベースとするカタナは、運動性能という面でも一級品の能力を備えていた。111psの最高出力は同時代の日本車でナンバー1だったし、海外のテストで記録した237km/hのトップスピードは、当時の市販車で最速だった。とはいえ、スズキから依頼を受けた、ドイツのターゲットデザインが生み出した流麗なスタイルを抜きにして、カタナの魅力は語れないのだ。
フラッグシップの1100に加えて、レース用ホモロゲーションモデルの1000、排気量縮小版の750が同時開発されたカタナは、発売直後から世界中で大人気を獲得し、90年代には日本専用車の250/400も登場。そして00 年に限定発売された1100のファイナルエディションで、約20年に及んだカタナの歴史は終焉を迎えたものの・・・。近年になってネオクラシックモデルのブームが始まると、カタナの復活、現代版カタナの登場を望む声が、世界中から同時にスズキに届くようになっていた。
その声に応えたのが、今年5月に発売された新世代のKATANAだ。ちなみにKATANAのスタイルは、イタリアのエンジンズ・エンジニアリングが、17年のEICMAに出展したコンセプトモデルが原点で、水冷4気筒エンジンとアルミツインスパーフレームの基本設計は、GSX -R1000のストリート仕様となるGSX -S1000/Fと共通。言ってみればKATANAの生い立ちは、かつてのカタナとよく似ているのである。
ただしKATANAは、ネオクラシックブームに安易に追従した車両ではない。と言うのも、近年のネオクラシックモデルの多くは、ルックスと常用域の楽しさを重視する一方で、運動性能に対する妥協やコストダウンの気配を感じることが多いのだが、スーパースポーツのGSX -R1000をルーツとするKATANAには、そういった雰囲気がほとんどないのだ。
もちろん、その資質は基本設計を共有するGSX -S1000/Fも同じである。とはいえ、初代のイメージを巧みに取り入れた外装に加えて、ライポジ関連パーツや前後ショックユニット、スロットルプーリー、液晶メーター、灯火類などを専用設計したKATANAは、GSX -S1000/Fとは似て非なる魅力を備えている。つまり新時代のKATANAは、既存のジャンルに当てはまらない、新境地を切り開いたモデルなのだ。
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