誰もが気になる「テッペン」対決

バイクという乗り物を選ぶ以上、誰もが気になるのがカタログスペック。
自分の使い方に合わせて、パワーやトルク、燃費や重さなど『仕様諸元』とも言われる
スペックシートで様々な項目をチェックするはず。
今回はそこから読み取れる数値で王座決定戦を行ってみた！

Text／Ryo Tsuchiyama

　バイクを選ぶときの基準は何だろう？自分の持っている免許の種類や、性能の高さを感じさせるエンジンのデータ、そして販売価格など、誰でも車両を買う前にはアレやコレやと調べるものだ。多くの人の場合、欲しいカテゴリーのバイクが決まったら、そこに該当する各メーカーの車両スペック（車体寸法やエンジンの特性、燃費などを示したデータ）を調べて、比較検討するはずだ。古くから、
「バイクは乗ってナンボ。乗らなきゃ分からない」
　そんな言い回しがある。確かにこれは間違いではない。というか、絶対的に正しい。乗らなければ分からないことが沢山ある。それがバイクというものだ。しかし、だからと言って気になる全てのバイクに試乗する、というのもなかなか骨が折れるハナシである。そんな時こそスペックの比較だ。
「最高出力の数値はA社のバイクの方が高いけど、燃費はB社の方が上だ」
「C社とD社のバイクでは、最大トルクの数値は同じだけど、それを発生させる回転数は、C社の方が500回転低い」
　こんな風にカタログスペックに記載されている数値をいろんな車両で比較すると、そこから見えてくることがある。例えば最大トルクの発生回転数で話をすると、10Nmのトルクを5000rpmで発生するAというバイクと、同じ10Nmのトルクを3000rpmで発生するBというバイクがあるとする。この場合どのような判断ができるか？エンジンを語る上でのトルクとは分かりやすく言うと力強さ。この例では、最大トルクをより低い回転数で発生できるBの方が、スロットルを大きく開けなくても楽に走れるということを意味しているのである。
　このようにスペックシートに記載された数字の意味を理解できるようになると、たとえ実車に乗らなくてもその車両の大まかな特徴を“ある程度”掴むことができるようにもなってくるのだ。
　今回はそういった視点から、カタログスペックから読み取れる数値で比較した『何でも王座決定戦』を展開する。最高出力から価格、大きさまで国内外の様々なバイクを徹底的に比較して調べてみた。紹介できたスペックはほんの一部でしかないが、こういった見方をするだけでもバイク選びはグンと楽しくなるものだし、意外な発見があるかもしれない。
「カタログスペックで全ては語れない」そんなことは分かっていても、数字の裏に隠されたものを読み取ることで、お目当てのバイクにたどり着けるかもしれない。

　スペック表にあるカタログ数値には、メーカーの思想や技術者たちの情熱が詰まっている。
　どんなバイクでも、テキトーに作られるなんてことは決してない。狙ったユーザーたちに対していかに車両の特性をアピールし、性能や価格などあらゆる面でライバル車両より優れたものを生み出すために様々な過程を経て、ようやく世に出るものなのだ。だから、新車として登場してきたバイクの各種数値にも相当に気合が入っているものなのだ。
「○○より5kgも軽い」　「○▽より100mm長い」　「価格がクラス最安」
　それらの差が微々たるものでも、そこにかけるメーカーの苦労、かかった費用はとてつもないものだ。今日の日本製バイクが世界最高の性能と信頼性を備えているのは、この小さな数字もおろそかにせず、せっせと技術革新を行ってきた記録でもある。カタログ数値には深い歴史が隠されているのだ。

　今回は、国産から外車まで日本国内で誰でも普通に購入できる量産バイクを中心にテッペン対決を行う。ここからの頁で紹介する車両は、全て本誌に掲載しているバイクショップをはじめ全国各地のショップで入手できるものが中心だ。
　『テッペン』が意味するのは、それはある数字が飛びぬけて優れているまたは、突出していることだ。その中には性能的にとても優れていると証明できる数値もあれば、仲間内の会話の中での自慢話にしかならないものもある。でも、一番デカイ、一番速い、一番軽い、などなど、自分の愛車に他の車両にはない『特別な何か』がひとつでもあれば、そこに拘りを持ち愛着が生まれてくることだってある。「せっかくバイクを買うのなら、誰かに自慢できるものが欲しい」そんな気持ちを持っているのなら、今回紹介する項目についてしっかり調べてみてはどうだろう。
　調べていく過程で自分の中でクラス最高の性能だと思っていた車両が、実は数値上ではそうもなかったり、逆に意外な車両が数値の上では圧倒的上位だったりと、調べれば調べるほど自分の直感と、数値という絶対的な客観が示す内容に差が出てくることもあるかもしれない。でもそれだけに数値を調べていく作業は面白い。もちろんバイクは年々進化していくから、そういった自分なりの調査を毎年毎年重ねていくと、いつしかそれは自身の大きなデータベースになるはず。メーカーが毎年のように新しい車両を開発していく意味も分かるようになってくるかもしれないし、どうやって車両価格が設定されるのかも分かるようになることだってある。
　最初にも書いたが、バイクは乗らなければ分からないもの。しつこいがこれは絶対的に変わらない。だが、数値の意味を理解していろんな車両に接すれば、バイクに対する理解はもっと深まる。幸いにも日本にはその時代、その時代で世界最高の性能を誇った車両がゴロゴロしている。時間をかけてそれらの車両を乗り継げば、バイクの進化を頭とカラダで理解できるようになるのだ。