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匠の技の結晶4大メーカー直4ヒストリー 一度は乗りたいニッポンの伝統
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近代バイク史の中で日本のメーカーが現在の地位を築いた大きな原動力として
高性能直列4気筒エンジンの存在がある。
いつの時代でも直4エンジンには各メーカーの先端技術が詰まっているのだ。
Text:Ryo TSUCHIYAMA

日本のメーカーが世界の頂点に立つまで

650ccのW1

カワサキの世界戦略車としてデビューした650ccのW1。60年代を代表する国産大排気量モデルだ。

 20世紀のはじめにバイクが登場して以来、世界各地のメーカーは様々なエンジン形式を作り上げ製品化してきた。単気筒に始まり、V型や水平対向の2気筒、直列の4気筒や6気筒など、2スト4ストを問わず、バイクのフレームに搭載できるありとあらゆるレイアウトが試されてきた。いつの時代にも優れた技術者はいるもので、実はいま市販されているエンジンの形式、特に今回注目するシリンダーのレイアウトに関しては、1930年代にはほぼ出揃っていた。ただ、当時は加工技術や材料開発が未熟だったということもあり、構造や性能の面では今のバイクに太刀打ちできるものではなかったし、同じ精度を持つ製品を大量に作ることが難しく、レースマシンはともかく市販車には向かなかった。そんな『バイク史の夜明け』という時代を経てからのバイクの歴史とは、世界各国のメーカーが激しい競争を繰り広げながら、エンジンや車体、足周りを進化させ、工業製品としての精度と完成度を高めていった歴史ともいえるものなのだ。
 こと50年代〜60年代にかけての日本では、戦後の産業復興を足がかりに国内では一時200社を超えるバイクメーカーが存在していたとも言われている。多くのメーカーは、当時世界の最先端だったイギリスやドイツ、イタリアのバイクをコピーして作ることからはじめ、徐々に独自性を打ち出そうとしていた。その中でも性能的に優れたバイクを生み出すことができたメーカーは、レースという舞台でさらにその技術を飛躍させる。特にホンダ、スズキ、ヤマハ、この三社は早くから世界GPという大舞台で世界の強豪と戦い、技術力を蓄積していった。
 イギリス車が世界最高峰の性能を持つとされていた60年代までの時代は、4ストロークの並列2気筒エンジンが高性能エンジンの代名詞といえるものだった。トライアンフのボンネビルやノートンコマンド、BSAのA10など、この時代のイギリス車に現在まで続く名車の符号が与えられているのもそんな理由がある。
 もちろん日本メーカーもイギリス車のお家芸とも言える空冷2気筒に立ち向かうべく、開発を行っていた。ホンダではCB72やCB450、ヤマハは2ストのYDSシリーズ、そしてカワサキの前身である目黒製作所のメグロKシリーズなどがそれにあたる。
 しかし、日本メーカーが目標としていた当時のイギリス車は大排気量の650cc。いくら高性能な2気筒車を開発しても、排気量で勝るイギリス車には絶対的な性能ではどうしても勝てない部分が出てきていた。ならばどうするか? ここで世界のバイク史は大きく動いたのだ。

ホンダとカワサキが高性能の市販直4を生み出す

DOHCツインホンダ CB450

DOHCツインを積むCB450。ホンダにとっての世界戦略車ではあったが、英国車の牙城を崩すには至らなかった。

 1968年、ホンダはCB750Fourという世界の二輪史に刻まれる名車を生み出す。空冷直列4気筒のエンジンを持つ車両だ。早くから世界GPの舞台で活躍し続け、60年代のGP参戦時代には、超高性能な直列4気筒エンジンを様々な排気量で製作し、連勝を重ねていた。しかしレースの世界で走らせる車両とは、いわばワンオフのかたまりだ。レース用に数台を作るのと、誰もが買える市販車として何千、何万という台数を製造するのはワケが違う。そんなこともあって、世界各国の二輪メーカーは大排気量の多気筒エンジンの製造に踏み切れなかった。その中でホンダが発表した市販車の4気筒は、その高性能ぶりで2気筒のイギリス車を完全に過去のものとし、またたく間に世界中で大ヒットを収めたのだ。
 そのほぼ同じ時期、カワサキも大排気量の空冷直列4気筒を開発していたが、あと一歩のところでCBに先を越される。そんな経緯で1972年に登場したのが輸出専用車の900Super Fourだ。通称Z1とも呼ばれるそれは、先に出たCBを研究し、排気量は900ccとした。カムシャフトの本数もCBの1本(OHC)に対して、シャフトを2本(DOHC)とし更なる高性能ぶりをアピール。デビューするやいなや、こちらも世界的な大ヒットを記録したのだ。
 相次ぐ2台の直列4気筒バイクの登場により、長らく世界の頂点に君臨した欧米のバイクは表舞台から引きずりおろされ、日本製バイクが高性能の代名詞という時代がやってきたのだ。スズキ、ヤマハも70年代後半には空冷直列4気筒バイクを相次いで発売、80年代に入ると各メーカーから400ccから1000ccオーバーまで様々な4気筒バイクが生み出されるまでになった。

その進化、いまだ止まらず

スーパースポーツの代名詞といえる直列4気筒エンジン

今でもスーパースポーツの代名詞といえる直列4気筒エンジン。各メーカーは激しい開発競争を繰り広げている。

 このように、おおよそ40年を超える歴史を持つ国産4気筒エンジンだが、その進化は止まらない。当初は気筒あたり2本だったバルブ本数は4本。空冷だった冷却方式も油冷や水冷に。そしてキャブレターからインジェクションの時代へ……40年前の4気筒車と現代のマシンを比較すると、ありとあらゆる部分で進化を遂げている。同じ排気量でも馬力は2倍以上になり、サイズも極限までコンパクトに。
「これ以上どこが進化するんだろう?」
 そんな我々ライダーの期待を裏切るかのごとく、毎年何かしらの技術革新が行われているのだ。高性能でコンパクト。日本のモノづくりを象徴する工業製品としての品質は、この二輪界では直列4気筒エンジンに詰め込まれている。そう言っても良いくらいなのだ。
 いまでは性能追求型のスーパースポーツ、誰にでも楽しめるネイキッドと、同じ直4というレイアウトでも実に様々な種類が存在する。世界的に見ても、直4大国と呼べるほど数多くの車両がある日本にいるのなら、一度は乗っておくべきかもしれない。もしまだ体験していないのなら……なおさらである。

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