幾重にも連なる緩やかな丘を、一筋の道が見え隠れしながらどこまでも続いている。いつもより少しだけ大きめにアクセルを開ける。ひとつふたつと丘を越えても目に映る光景に大きな違いはない。抜けるような青空と絨毯を敷き詰めたような緑の大地がただただ広がっている。
空前のバイクブームに沸いた80〜90年代はじめ、夏の北海道はどこも内地からやってきたライダーたちで溢れていた。ミツバチ族と呼ばれた彼らは、思い思いに非日常の世界を謳歌した。しかし今、そんな情景を目にすることはない。けれども、バイク乗りにとってこの北の大地が永遠に桃源郷であることに変わりはない。
首都圏や中部、関西圏から遠く離れた、文字どおりさいはての地であることも旅愁をかき立てる。なにより、比類なき爽快感を味わえるところに北海道の魅力がある。それは20年という時が流れた今でも同様だ。
面積8万3456平方キロメートル。北海道は日本の国土の約22%を占める。それほど広大なので、必然的に1日の移動距離は長くなる。爽快な走りが楽しめるとはいえ、長時間に渡る走行は体を疲労させる。無理な走行にならないように計画することは、北海道を満喫する上で重要なポイントととなる。

トップの写真となっているニセコパノラマラインを始め、オロフレ峠周辺の道道2号線や大沼国定公園の周遊道路など、北海道には美しい景色と、気持ちのいいワインディングが魅力の道も少なくない。
地球温暖化による影響からか、近年は30度を上まわる日も多い。しかし気候は温帯と亜寒帯の中間に属し、内陸部では昼夜の寒暖の差が大きい。日中は汗ばむ陽気でも夕方以後急激に冷え込むことも少なくない。北海道をツーリングする際には、たとえ夏真でも防寒対策は必要だ。
そうした内地との違いを理解したうえで訪れれば、その気候風土がもたらす雄大な風景を存分に堪能することができる。陽炎の彼方で地平線に溶け込むまっすぐな道、原生林を縫うように続く高速ワインディング、バイクで走るには最高のステージがそろっている。まさに「走る」ことに没頭できる場所が至るところにあるのだ。
北海道の魅力はそれだけにとどまらない。野趣あふれる天然の温泉があちらこちらにあり、しかも無料で利用できるところも少なくない。温泉巡りを目的に走っても十分に楽しめるのである。自然に抱かれて温泉に浸る。なんて贅沢な時間を過ごすことができるのだ。