CB400SF 教習車 エンジンが掛からない。ヘッドガスケット抜け修理。圧縮、点火、混合気全ての要素を満たしているのにエンジンが掛からない症状について。(WATANABE MOTORS T-BIRDの作業実績 2022/02/21)|バイクの整備・メンテナンス・修理店を探すなら【グーバイク(GooBike)】

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2022/02/21 20:50:59 更新CB400SF 教習車 エンジンが掛からない。ヘッドガスケット抜け修理。圧縮、点火、混合気全ての要素を満たしているのにエンジンが掛からない症状について。ホンダ CB400Super Four VTEC

作業実施日 2022/02/21

「エンジンが掛からない」という故障が怒った場合、僕たちメカニックがおまじないのように唱えるワードがあります。 「良い火花」・「良い圧縮」・「良い混合気」の3つです。これは整備士の学校や講習の早い段階で教わる事であり、これさえ達成しておけばエンジンは掛かるというものです。もちろん掛かってからの異音や調子はここには含まれません。もう少し細かく説明すると、燃焼室に良い混合気が入り、圧縮が適正に行われ、しっかりと強い火花がシリンダー内で発生すると、爆発するよねと言うことです。 今回、この3つの要素がどれも欠けていない状況でもエンジンが掛からないといった現象が起きたので掲載致します。車両の特性的にはとてもレアケースです(そしてとても長いです!)。

当店では教習所のバイクの整備も承っており、今回もエンジン不動で入庫しました。車両はCB400SF FI。FIなので基本的にはスムーズにエンジンが掛かります。裏を返すと、もし掛からない場合は少し悩むことになるということでもあります。早速故障診断を行います。セルを回すと少し軽く回りますので圧縮の低下がみられます。走行距離は76000km程。年式を考えると特に走行距離が多いことはありませんが、教習所内だけを走行する事を考えると酷使されている事が想像できます。以前の整備記録から一度シリンダー内のカーボン堆積によるエンストがありましたので、今回その堆積が限界に達したと判断してヘッドを外して洗浄。合わせてピストンリングも交換という腰上をオーバーホールすることにしました。もう一つ理由があり、ヘッドガスケットの劣化によるシリンダー内に冷却水の流入もありましたので同時修理となりました。同時に汚れが溜まっているスロットルボディも洗浄を行います。

さて正しく組み上げて圧縮を計測すると13.8程と良好な値を示し、いざエンジンを掛けようとしますがエンジンが掛かりません。圧縮は間違いなくあるので残る「火花」と「混合気」をチェックします。まずは火花。よくプラグを外してボディアースをした状態でクランキングし、火花が飛んでいるか確認する方法がありますが、実はこちらの方法では簡易的にしかチェックできません。大気圧では綺麗な青白い火花が飛んでいる場合でも、シリンダー内の高圧縮状態では飛ばないといった現象がよくあります。その為当店ではギャップを広げる事の出来るツールを使用して良品判定を行います。結果は極めて良好。4気筒とも綺麗な火花が飛んでいます。次に「混合気」ですが今回インジェクターから正しく燃料が噴射されているかを確認しました。結果はこちらも良好。この場合、噴射されているが、燃料では無く水が混入している場合が稀にありますので、匂いと色で判断します。

現時点で最初の3つ「良い火花」・「良い圧縮」・「良い混合気」が全て揃っているのにエンジンが掛からないという異常な状態であり、探求好きのメカニックにとっては大好物の症状になります。しかし3つの他にも大事な事があります。それは「点火の時期」です。通常点火時期は圧縮上死点 少し手前に制御されています。ポイント車で始動性が悪くポイントを調整したら掛かるようになったという症状がありますが、この原因が「点火時期の狂い」となります。点火時期の場合、先にチェックした火花が良好かどうかは関係無くエンジンが掛かることはありません。こちらのCB400SFの場合は「パルスジェネレーター」というパーツによって点火時期は制御されています。比較的壊れやすいパーツではありますが、こちらの故障で点火「時期」が狂う事は今まで無く、点火そのものが不能になるケースがほとんどです。カプラーを取り外して抵抗値や短絡を確認します。結果は正常。プラグに火は飛んでいるので正常なのは当たり前です。そうなると考えられるのは全てを司るECUとなります。

話は整備の最初に戻りますが、FI車でエンジン不動になると機械故障以外の場合、 FIランプが点灯または点滅をします。しかし今回はFIランプの点灯や点滅は無く、ECUは「車体は正常な状態」と判断していました。しかしECUが故障すると正常な判断が出来ないのでFIランプが点灯しない事が稀にあります。なのでここまでの状態によりECUの故障も考えられます。

次にもう一度「混合気」に戻ってチェックをします。ガソリンはそのままの状態ではガソリンの液体そのものには火は付きません。火をつけるためには霧状にする事が必要となります。それを行うのが「燃料ポンプ」と「インジェクター」。キャブ車ではキャブレーター により機械的に霧状にします。燃料ポンプ故障によって燃圧が掛けられなくなると上手く霧状にならずエンジンが掛からないといった症状になります。これを簡易的に判断する方法はパーツクリーナーを燃焼室に送り込む事。より燃焼しやすいものを直接吹き付けて燃焼させてあげる方法ですが、火がついた瞬間のバックファイヤーで車体が炎上する危険があるので注意が必要です。エアクリーナーボックスからスロットルボディに向けて少し吹き付け、クランキング。エンジンは掛かりません。ここで3つの内、「良い圧縮」と「良い混合気」は問題ない事がわかりました。

残るは点火時期。教習所が休みの日にもう一台を借りてきてECUを交換します。そしてクランキング。しかしエンジンは掛かりません。あまり好きな整備方法ではありませんが、その他の電子パーツも取り替えてみます。インジェクター・ISCV・燃料タンク(ポンプを含む)・パルスジェネレーター・イグニッションコイル・転倒センサー。フェイルセーフが行える圧力センサー・アクセル開度センサー・水温センサーはカプラーを外して検証。しかし掛かりません。

3つの要素を全て満たしているのにも関わらずエンジンは掛かりません。とても楽しい状態です。今までの常識ではあり得ない事が起こっている・・。でも原因は絶対にある。しかもその原因を取り除いた瞬間にエンジンが掛かる。これを読んでいるメカニックや整備に興味がある人はわかってくれると思いますが、とても楽しい状態ですよね。まとめると4ストローク・FI車・3要素を全て満たしている・4気筒エンジンなのに全ての気筒が電装品を全て取り替えても改善しない。最後の文をあえて記載したのは典型的な電装品故障に見れれる症状だからです。機械故障の場合4気筒全てが不調になる事は珍しく、大抵1気筒ないし2気筒が不調になります。2気筒の場合はイグニッションコイルも疑われますが、今回はこちらも交換済み。そもそも点火に問題ないのは先の点検で確認済み。電気系は全て問題ない事が証明されました。

エンジンをバラしたのでその時に失敗したのではないかと思う方もいらっしゃいますが、僕も自分を疑い、もう一度ヘッドカバーを開けました。カムシャフトの取り付けを確認する為です。カムチェーンが一コマズレていたり、もしもINとEXのカムシャフトを間違えてつけていたら4気筒掛からないのも合点がいきます。実際にそのような状態ではバルブを突いているでしょうが、もはやここしか無いだろうと思い確認しました。結果は正常。ますますわからなくなりました。カムシャフトがズレているという症状は実際にある事で(もちろん私がズラした訳じゃなく)、以前ネットオークションで購入したというマジェスティ125が始動不良で入庫した際、確認すると一コマズレているという事がありました。話は戻り未だにエンジンが掛かりません。

さて2サイクルのスクーターの整備ではマフラーの出口に虫が巣を作ってエンジンが掛からない事が多々あります。その他にもマフラーにオイルが詰まってフケが悪くなったりします。整備の最初にまさかそんなことは無いだろうとサイレンサーの外側から確認し、異常はが無いか確認。そしてセルを回しながら手を当ててマフラーからの排気をチェックしますが、エンジンの掛からないクランキングで4気筒の場合だと強い排気は出ないので判断は微妙なところ。まして爆発すれば虫の巣は飛んでいくし、4サイクルFI車でマフラーが詰まるほどオイルが溜まることも考えられません。もしかしたらエンジンをバラした時のゴミ混入防止のウエスがエキパイに詰まっているのでは?そう考えてエキパイを外し、確認しますがまさかそんなことは無く異常なし。念の為サイレンサーも取り外し確認します。・・・。

サイレンサーを外したままクランキング。その瞬間にエンジンが掛かりました。なんとサイレンサーの触媒にびっしりとカーボンが詰まり、排気できない状態になっていたのです。原因はサイレンサーの詰まりによる排気不良でした。4ストローク・FI車ではとても珍しい症状で驚きました。サイレンサーを交換して修理は完了しました。

さて故障の修理は完了しましたが、なぜそうなったのかを考えないといけません。2つの要因が考えられます。一つ目はヘッドガスケットが抜けた状態で走行を繰り返し不純物が溜まって行った事。不具合が起こっているのにFI車の始動性の良さの上、なんと無く乗れている状態が続き、その間にカーボンが堆積した可能性があります。

もう一つは1年前からの燃料添加剤の添加。これは燃料添加剤が悪なのでは無く、教習車という特殊な車両だからこそ起こったのでは無いかと想像できます。一年前にカーボン詰まりが起きた時から予防の為にフューエルワンを勧めていました。もしかしたら溜まりに溜まったカーボンに作用して一気に洗浄されサイレンサーに詰まってしまったのでは無いかという可能性。しかし添加から一年経っている事、一本だけの添加という事もありこの可能性は低いと感じます。もしそうであった場合はフューエルワンの力は本物であるという証明にもなりますね。ちなみにヘッドを開けた状態。ピストンの状態は過度にカーボンが溜まっている事はありませんでした。原因は恐らく一つ目のガスケットが抜けた状態でジワジワとカーボンがサイレンサーの中に溜まり、最後は詰まってしまったのでしょう。 もし3つの要素を満たしているのにエンジンが掛からなくてお困りの場合、点火の時期の確認の後は「良い排気」も確認して見ることをお勧めします。

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