時折、無性にスクーターが欲しくなる。その心は、やはり利便性。ちょっとそこまで・・・というときに、靴も汚さずウェアも選ばない。積載性はいわずもがな。しかし、最後のひと押しで待ったがかかる。そこにはバイク乗りならではの偏見があった。今度のC650スポーツは、そんなことを気付かせてくれるモデルだ。
スクーターにかならずと言っていいほどつきまとう発進時のもたつき。初代では、その傾向が強かった。ところが新型は、スロットルをひねる右手に対して、リニアに力強く加速する。エンジンベースも出力も変わらないのに、なぜに初代から出来なかったのか。その秘密は、いわゆるトラクションコントロールの一種であるASCの存在だ。
試乗したスペインのウェット路面は、非常に滑りやすかった。アクセルを開ければ、簡単にホイールスピンを起こすほど。そんな環境でも、新型はASCがエンジン出力をコントロール、最適なトルクをリアタイヤに伝える。結果、力強い加速力を手に入れた。転ばぬ先の杖である安全装備の標準化は、歓迎すべきポイントでもある。
アクセル操作に対するエンジンの反応が向上したことは、マシンのイメージをも変えた。大柄にも関わらず一体感はすこぶる高く、コーナリングでは、ブンブン振り回せる。気付けば、ミッション付きバイクに乗っているかのような感覚で走っていた。
ちょっとそこまでという用途には、やや大きすぎるきらいもないわけではない。だが「街乗りだけじゃなく、もっと遠くにも行きたいぞ〜!」と、スクーターではなかなか行き着かない境地に達してしまったのである。
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