BMWのミドルレンジを担うF800シリーズのラインアップに、新たに加わったネイキッドモデルのF800R。
先行して発売されているSやSTから単純にカウルを取り去っただけでなく、リヤサスや駆動方式、エンジン、ミッションにまでリファインを施した意欲作だ。とくに、専用に開発されたミッションは、6速のレシオをシリーズ他車の5速と同じ値とすることによって、4速から6速をクロスレシオ化。よりスポーティなライディングを楽しめる仕様とされた。
だが、走り出してまず感動するのは、エンジンのトルクの太さだ。跨がってみると、それなりにボリューム感があるものの、一見400ccクラスかと見まごうコンパクトな車体を持つF800Rだけに、そのギャップは大きく、またうれしい。
ツインらしい鼓動感は希薄だが、その分恐ろしくスムーズに吹け上がる。高回転型ではないが、アイドリング近辺からピークまで、どこからでも加速できる太いトルクが持ち味。また、ピックアップは抜群に鋭い。それでいてギクシャクしないエンジン制御は見事。ただ、振動の多さが少々気になった。
シャシーのまとまりも良く、適度なスタビリティと軽快なハンドリングを両立。旋回性も高く、コーナーでは難しい操作なしにマシンはグイグイと向きを変える。自由度の高いパワー特性と相まって、ワインディングでは最速の一台となるだろう。
気になったのは、1速がかなりハイギヤードなこと。アイドリングのままでもクラッチをつなぐと車速は20km/hを超える。しかも持ち前の太いトルクが、スロットルをオフにしていても速度を上げようとする。
そのため、ごく低速での走行を強いられる都市部の渋滞では、左手への負担がやや大きくなる。その辺りが解消されれば、シティユースもスポーツランも、最適最強のマシンとなるだろう。もちろん、現状でもベストな選択の1台であることは間違いない。価格も手頃で、お薦めの一台だ。
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