21世紀の到来とほぼ時を同じくして、それまで高性能エンジンの代名詞だった2ストローク車は次々と表舞台から消えて行った。一瞬でパワーバンドに達する俊敏なレスポンスと暴力的な加速感、そして辺り一面に漂う2ストロークオイルの焼ける匂い・・・。その思い出は遠い記憶の彼方、そんなライダーも多いはずだ。
アプリリアSR50ピュアジェットは、いま量産メーカーが生産する中では唯一の、スポーツ性を持った量産2ストスクーターだろう。その存在だけでトピックとも言えるが、搭載される水冷エンジンはなんとFIを採用しているのだ! FI時代の到来を待たずして消え去った2スト。往事を知るライダーほど諸元を聞くだけでワクワクするはず。
エンジンに火を入れると、冷間時でも排煙が少なく、静かなことに驚く。FIのおかげか、外気温が低くてもアイドルは安定している。走り出すと低速トルクこそ頼りないがそれも一瞬だ。エンジンは6000回転辺りでパワーバンドに突入、2ストらしい甲高いサウンドをともなって一気に1万回転まで回る。ハッキリ言っていまどきの4スト原付スクーターでは決して味わえない痛快な加速感だ。
足周りは前後とも固めのセットだ。800mmを超えるシート高もあり、コーナーでは腰高な印象が拭えないが、慣れてくると足周りの設計がスポーツ向きだと分かる。そう、コイツはスポーツバイク。原付一種の法規制が恨めしくなるほどの高いスポーツ性を秘めているのだ。
いま2ストに乗れる歓びと、絶滅からの空白期間を埋めるに相応しい進化の数々。排気量に関係ない楽しさを教えてくれる貴重な存在だ。
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