開閉式ルーフ付きスクーターで知られるイタリアのアディバ社が、13年末に日本市場へ導入したのがこのADトレ。フロント2ホイール機構を備えた3輪スクーターだ。
そのフロント周りには、3輪先行メーカーのピアッジオ社とは設計手法が異なる独自の機構が使われている。ただし、ピアッジオと同じく前輪の操舵とバンクを可能にすることで、一般的なスクーターに近い走行感覚を生み出している。
といっても、当然ながら二輪とまったく同じというわけではない。浅いバンク角では、フロント周りに重さを感じる一方で、実際のバンク動作は拍子抜けするほど軽快。ルーフなどがあることから重心位置は高く、車体がバンクし続けようとする力は強めで、極低速域ではハンドルがやや大きく切れる。だが、全体的にそれほど違和感はない。
しかしある程度のバンク角を越えると、ハンドリングに独特な動きが加わる。これは二輪にはない感覚で、最初はやや戸惑う。もっとも、慣れるとこれが、楽しくもなってくる。
ちなみに、一般的な二輪スクーターと異なる点としては、接地面拡大による前ブレーキの効力アップも挙げられる。かなり強めにレバーを握っても、前輪はロックしにくい。
車体が重めなので加速感はマイルドだが、中速域では伸びもあり、市街地コミューターとしては十分なレベル。開閉式ルーフや大きなスクリーンによる耐候性の高さや、大きなリアトランクによる優れた積載性は、これまでのADシリーズ同様だ。
利便性重視でありながら、操る楽しさも味わえる。なんとも贅沢なシティコミューターの登場である。
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