ライバル勢を圧倒する218PSのパワーは特筆すべきだけれど、ホンダのことだから、誰もが普通に乗れる扱いやすさは確保しているに違いない。試乗前の僕はそう思っていた。でも実際のCBR1000RR-Rは、一般的なライダーと一般的な道路をほとんど無視したモデルだった。
まず一般的なライダーはガチのレーシングポジション、低くて幅広いハンドルと高くて後退したステップに面食らうだろう。そしてそれを克服して走り出すと、低回転域が意外に扱いやすいので勘違いしそうになるものの、スロットルを迂闊に全開したら、イッキに血の気が引くに違いない。最高出力発生回転数は14500rpmなのに、RR-Rのエンジンはわずか6000rpmからでも暴力的な
加速を見せるのだから。もちろん、パワーモードセレクターを最も穏やかな5にすれば、それなりにスロットルを開けられるようになるが、一般的な速度で走っていたのでは、RR-Rのシャシーの実力はほとんどわからず、普通に曲がるんだな・・・くらいの印象しか持てないと思う。
ではどうすればRR-Rの魅力が理解できるのかというと、とにかく猛烈に飛ばすしかない。逆にこの種のバイクに慣れ親しんだライダーが猛烈に飛ばすことで、RR-Rはすべてが噛み合い、レーサーを彷彿とさせる驚異の加速力と制動力と旋回性が堪能できるのだが、日本でそんなことができる場所はサーキットしかないのだ。その是非はさておき、ホンダがここまで割り切ったモデル、サーキットに特化したモデルを作るというのは、僕にとっては予想外にして痛快で、何だかうれしくなってしまった。
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