10年春に登場したCB1100は、古き良き時代の空冷4気筒車が備えていた日常域での楽しさを、現代の技術で再現したモデルだ。その派生機種として追加されたEXは、一見するとクラシックテイストを強調しただけのモデルに思える。しかし、実際にEXを体験した僕は、真面目に造り込まれたツーリング仕様、という印象を抱いたのだった。
そう感じる要因として挙げるべきは、燃料タンク容量が14→17Lに増え、シートの肉厚が+20mmとなったことで、バネ上重量が増加。相対的にリアショックの初期作動性がよくなり、スタンダードのモデルとは一線を画する快適性が獲得できたことだ。ただし、僕が感じたEXの魅力はそれだけではない。従来からパワーユニットは低中回転域が楽しかったのだけど、2本出しマフラーを導入したEXは3000rpm前後の充実感に磨きがかかっていて、まろやかな鼓動と振動がとにかく気持ちいい。そしてそのパワーユニットと歩調を合わせるかのように、EXは操安性にも独自の味付けが与えられている。具体的には13kgの重量増加が、必ずしも悪いほうに作用していないようで、ほど良い安定感と穏やかな舵角を知ると、ツーリングバイクとして見るなら、この操安性こそがCB1100の正解ではないかと思えてくるのだ。
その一方でスタンダードの親しみやすさや軽快さは否定するべきではない。けれど、旅の道具として考えた場合、EXの資質は相当に魅力的である。EXの登場でCB1100の楽しみの幅が広がったことは、このモデルを愛する多くのライダーにとって喜ばしいことなのである。
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