日本の道路事情の中で、本当に楽しめるリッターバイク、それがCB1100である。使用する速度域がまったく違うヨーロッパと同じマシンを作って、日本に合わせて仕様を変えるのではなく、純粋に日本の道路事情だけを考えて作られている。
注目したいのは、やはりエンジン。空冷マルチという、いわばひと昔前のレイアウトでありながら、そこにはホンダの最新技術が注がれ、ライダーを満足させ、楽しませる工夫が随所にこめられている。
例えばスロットルを開けたときのフィーリング。十分消音されているのだが、スロットルをひねると、昔の空冷4気筒によく似た迫力で吹け上がる。これは、1-2、3-4番気筒で吸気側のカムプロフィールを変えるという凝った設定によって実現されたもの。気筒間の微妙なズレによって達成できた性能とフィーリングは、中速域の太いトルクに加え、マルチ独特の鼓動感を生み出し、スロットルを開けることが単純に楽しいエンジンになった。
また、造形に関しても、空冷の美しさを追求するために、シリンダーフィン一枚一枚を薄く仕上げるなど、細部まで徹底的にこだわっている。空冷マルチが好きなエンジニアが手がけたのだということが、様々な部分から伝わってくるのである。
ハンドリングも実用域での運動性や乗りやすさを徹底的に考えた結果、太すぎない18インチタイヤ、しなやかな車体、体の起きたポジションが程よくバランスしている。そのために超低速域で、とっても乗りやすい。渋滞路などでゆっくり走ってもフラフラしないし、Uターンも思いのまま。加えて、前後の18インチホイールは、軽く流す程度でも、ビッグバイクを操る喜びをライダーに与えてくれる。
これまでも実用域での走りを重視したマシンはあったが、ここまで徹底したのはCB1100が初めて。スペックには、取り立てて目を引くものがないけれど、乗ってみればビギナーからエキスパートまで、満足させてしまうマシンに仕上がっていた。
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