バイクのバルブクリアランス調整(タペット調整)は自分でもできる?工賃・費用の目安や相場
バイクは、長年乗っているとバルブクリアランスが基準値から外れ、不具合が発生することがあります。バルブクリアランスを調整することでエンジンは好調になりやすいため、定期的なチェックが重要です。
とはいえ、「バルブクリアランス調整が自分でもできるかわからない」と、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。バルブクリアランスの調整は自分でも可能ですが、いくつかのポイントを押さえて行なうことが大切です。
この記事では、バイクのバルブクリアランスを自分で調整する方法を紹介します。さらに、バルブクリアランスを調整しないことで起こる症状、工賃や費用の目安なども併せて解説します。
バイクのバルブクリアランスとは?

バルブクリアランスとは、エンジンに使われる吸排気バルブと、バルブ自体を下げる役割のパーツとの間にある隙間を指します。バルブやシリンダーヘッドの熱膨張差による、バルブの突き上げを防ぐために、隙間があえて作られているのです。
バルブクリアランスの基準値はエンジンごとに決まっていて、適正な値であれば、エンジン全体の温度が上昇したときでもエンジンが正常に動作します。
バルブクリアランスは金属の摩耗により、徐々にばらついていき、バルブやバルブシートの面が摩耗すると間隔が詰まり、トラブルを引き起こす原因となります。
バイクのバルブクリアランスを調整しなければならない理由
バイクのバルブクリアランスが適正範囲から外れると、最悪の場合エンジンがかからないなど、さまざまなトラブルが起こります。事前にどのような症状が現れるのかを把握し、バルブクリアランスを調整すべき理由を知っておきましょう。
バルブが常に開いた状態になる
バルブクリアランスを調整せずに摩耗して狭くなった場合、バルブが常に開いた状態になります。これは、バルブが熱で膨張したときにカムシャフトに当たり、閉じなくなるためです。
バルブが常に開いていると混合気が逃げてしまい、結果的に圧縮が上がらず、燃焼効率・出力の低下につながります。
アイドリング不調となる
バルブクリアランスが狭くなると、アイドリングにも影響してきます。エンジンが温まって膨張し、カムがバルブを押し下げることで圧縮漏れが起こります。アイドリングが不安定になってしまうと、エンストの原因にもなるため注意が必要です。
吸排気効率が低下する
バルブクリアランスが基準値よりも広くなると、バルブが開いている時間とリフト量が少なくなり、吸排気効率が低下する恐れがあります。十分な吸気や排気が行なわれなくなると、高回転域での性能・出力が低下してしまいます。
異音が発生する
バルブクリアランスが広くなると、カム自体がバルブを叩いてしまい、異音が発生します。異音を放置していると、出力低下によりパワーダウンすることもあるので、定期的にチェックしましょう。
異音は、エンジンの回転数に比例して早くなっていきます。高回転まで回すと連続音となり判断が難しいのですが、アイドリング中は比較的聞き取りやすいでしょう。アイドリング中に、シリンダーヘッドの周りから「カチカチ」と音が聞こえてきたら、要注意です。
なお、レース用のマフラーを装着している場合は気付きにくい傾向があります。
バイクのバルブクリアランスは自分で行なえる?
バルブクリアランス調整はそれほど難しい作業ではないため、セルフでも可能です。ただ、エンジンを分解するなどの作業は、慣れない方だと難易度が高いと感じるかもしれません。
作業には、例えば以下のような工具が必要で、イチからそろえる場合はバイクショップへ依頼したほうが安く済むでしょう。
バイクに詳しい方やメンテナンスに慣れている方であれば、チャレンジしやすい作業です。自分で行なう場合は、後述するバルブクリアランスを調整する方法を、参考にしてみてください。
なお、バイクショップによるバルブクリアランス調整の作業実績は、以下より確認できます。
グーバイク バルブクリアランス調整に関する作業一覧
グーバイク タペット調整に関する作業一覧
バイクのバルブクリアランス調整を自分で行なう方法
バルブクリアランス調整は、奥が深くてマスターするまでは時間がかかりますが、調整自体は簡単にできます。早速、調整の方法を詳しく見ていきましょう。
工具を準備する
バルブクリアランス調整を行なうには、レンチ・ソケット・ドライバーなど基本的な工具に加えて、以下を準備しましょう。
マイクロメーターは、0.01mmの細かい単位で厚みを測れる工具で、シムを計測する際に使用します。シックネスゲージとは、バルブクリアランスのような狭い隙間部分を計測する工具です。計測範囲は0.04~1mmあれば十分で、リーフが真っ直ぐかつ長くないものがおすすめ。磁石はタペットを外す際に使用するため、小さめのものを用意しましょう。
なお、バルブを開閉する機構には、アジャストスクリュー式とシム式の2種類があります。アジャストスクリュー式の場合は、ネジ先端にてバルブ開閉を行ない、スクリューを回すことで調整します。そのため、シム(薄い金属製の円盤)がなくても調整が可能です。
一方シム式は、カムシャフトとバルブの間にシムを入れて、厚さによって調整します。バルブクリアランスを広げるなら薄いシム、狭くするなら厚いシムを用意する必要があります。
クラッチカバーキャップを外す
まずは、クラッチカバーキャップを外していきます。レンチを使って、カバーに固定されているボルトを外しましょう。
クラッチカバーキャップを外してパルシングローターが見えたら、クランクを回します。圧縮上死点を探しやすくするため、レンチでプラグも外しておくことがおすすめです。
ヘッドカバーを開ける
エンジンのヘッドカバーを外します。場合によってはオイルが溢れることがあるため、下に受け皿を敷いておくと安心です。最初の段階で両サイドのバイクのヘッドカバーを外しておくと、スムーズにできます。
バルブクリアランスを測定する
ヘッドカバーを外したら、バルブクリアランスを測定しましょう。まずはパルシングローターのボルトを回し、クランクを回して1・4番シリンダーを上死点に合わせます。
多気筒エンジンの場合、一部分のシリンダーが上死点でも、他のシリンダーはバルブを押して開いています。シリンダーごとに上死点になるよう、クランクシャフトを回しましょう。
スパークプラグ付きだと、燃焼室で空気が圧縮されてクランクが回ろうとします。事前にプラグは抜いておいたほうが、圧縮上死点を出しやすくなるでしょう。
実際にバルブクリアランスを測定するには、シックネスゲージを使用します。シックネスゲージは一枚一枚に厚みが記載されており、適宜組み合わせて隙間に差し込んで計測します。
計測は、カムがバルブを押していない圧縮上死点で行ないましょう。基準値に合うよう、アジャストスクリューを回転させて調整してください。
シムを外す
続いてカムシャフトホルダーのキャップを外し、カムチェーンが落ちないように固定しながらカムシャフトを外します。
取り付けの際は、カムの刻印を間違えないように気を付けましょう。カムシャフトを外したら、磁石を使ってタペットを持ち上げてシムを取り外します。
シムの厚みを計測する
マイクロメーターを使って、シムの厚みを計測します。シムは、長い時間手で持っていると体温で膨張し計測値が狂ってしまうため、ピンセットなどで持ちましょう。
シムを削って厚みを調整する
シムは、基本的に必要な厚さのものを購入しますが、削って調整することも可能です。シムを削る際に必要な工具は、おもに以下3つです。
ディスクグラインダーは、早く削れることから「あまり時間をかけたくない」という方におすすめ。シムは小さな部品のため、削っている最中になくさないように注意してください。また、角をなるべく均等にして水平になるように確認しながら、慎重に削りましょう。
組み直す
シムが無事に削れたら、各部品を組み直していきます。カムシャフトは、バルブタイミング(レシプロエンジンの吸入・排気を行なうためのバルブの開閉時期)に関わります。間違えないように、正しい位置に戻しましょう。
ポイントは、排気側の下線をヘッドカバーと水平にし、カムチェーンがたるまないようにしながらかけることです。カムシャフトキャップは軸受けに注油し、バルブスプリングの反発力が集中しないよう徐々にボルトを締めます。雑に行なうとカムシャフトが暴れ、ハンドルが強く振動するため慎重に締めてください。
最後にバルブクリアランスを再計測し、問題がなければ他の部品を取り付けて完了です。バイクショップでは、バルブクリアランスの調整を請け負っている店舗があります。以下より、各バイクショップの作業風景をチェックしてみてはいかがでしょうか。
バイクのバルブクリアランス調整時のポイント
自分でバイクのバルブクリアランスを調整するときには、以下4つのポイントを押さえましょう。
それぞれを意識しながら調整を行なうと、スムーズかつミスも少なくできます。
吸気側と排気側の調整も行なう
バルブクリアランス調整時は、吸気側と排気側の調整を行なうことも重要なポイントです。
吸排気バルブを動かしているカムシャフトには、カムが1本だけのOHCと2本あるDOHCの2つがあります。OHCは吸排気バルブの開閉を1本のカムで行ない、DOHCは2本のカムで行ないます。
吸気側・排気側のどちらも、正確にバルブを開閉することがエンジンのコンディションに影響するため、しっかりと確認しましょう。
バルブクリアランスの幅に気を付ける
バルブクリアランスの幅は、狭すぎても広すぎてもトラブルの元となるため、基準値になるように調整しましょう。基準値はエンジンごとに決められており、例えば以下のような違いがあります。
お持ちのバイクエンジンの基準値を確認し、シックネスゲージを使って測定してください。
エンジンが冷間時に作業する
バルブクリアランス調整は、エンジンが冷間時(触っても温かさを感じない状態)に作業する必要があります。クリアランスは、エンジンが冷えている状態の値を基準としているからです。
基準値へ調整することで、エンジンが作動して熱が加わったときに、ちょうど良い隙間になります。エンジンが温かい状態だと、金属が膨張して正確なバルブクリアランスの測定・調整ができません。計測前にエンジンを触ってみて、冷たい状態であることを確認してから作業に入りましょう。
部品の位置などを記憶しておくこと
エンジンには細かい部品が使われているため、スムーズに組み直せるよう部品の位置を覚えておきましょう。カムシャフト・タペット・シムなどを取り外す際には、どのように付いていたかを確認できるように、メモする・写真を撮っておくなどしておいてください。
ショップに依頼した場合の工賃・料金の目安
ここまでで、バイクのバルブクリアランス調整を自分で行なう方法やポイントを解説してきました。ただ、なかには「自分で調整するのは難しそう」と感じた方もいるのではないでしょうか。そのような場合は、バイクショップなど専門店へ調整を依頼してみましょう。
ショップに依頼したときの工賃の目安は、約5,100~6,400円です。自分で工具をそろえるよりも安く抑えられたり、最適なクリアランス設定をしてもらえたりとメリットも多くあります。
基本的に1時間ほどで対応してもらえますが、混んでいる場合はすぐに作業してもらえないこともあります。あらかじめ時間を決めておき、空いている時間をショップに確認しておくとよいでしょう。
まとめ
バイクのバルブクリアランスとは、カムとバルブの隙間のことです。熱によって部品が膨張することを考慮して、作られています。
バルブクリアランスは経年劣化や摩耗により基準値から外れることで、エンジンの出力低下・アイドリングの不調などが発生することがあります。そのため定期的にチェックして、必要に応じて調整することが重要です。
バルブクリアランス調整は、自分で行なうことも可能ですが、メンテナンス自体にあまり慣れていない方は難しいと感じるかもしれません。
「自分でバルブクリアランスを調整するのは不安」「忙しくて作業する時間がない」という方は、バイクショップに依頼してみてもよいでしょう。バイクショップなら、プロのスタッフが丁寧にバルブクリアランスを調整してくれます。
本記事は、2022年1月29日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。
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