 |
 |
 |
 |
 |
関東平野周辺は紅葉に彩られ、気持ちよい秋の空気に包まれたベストシーズンを迎えている。
遠出をしたくなる季節だ
そこで、400とリッタークラスのちょうど中間にあたる「お手頃ビッグバイク」で
500kmオーバーのツーリングを楽しんでみた |
写真=堤 晋一 文=松井 勉 |
 |
雨に追われてさらに西へ
予定より+200km!
本当は富士五湖に行く計画だった。ところが、今、諏訪の町並みと諏訪湖を見下ろす高台の公園にいる。
中央高速を西に向かって八王子を過ぎ、平野から低山の合間に高速道路が吸い込まれるあたりで雲行きがあやしさを増し、高尾山を左に眺め、小仏トンネルを抜け、相模湖を通り抜けるともう路面がしめり始めた。
それでも天気の好転を祈りつつ西へ。しかし、談合坂手前では、シールドは雨の飛沫で視界をゆがませた。携帯サイトで天気を再チェックすると、河口湖の今日の天気は「曇」から「曇ときどき雨」に悪化。どうする?
しかし、走り続けたことで体には不思議な慣性が働き、収まりはつかない。もっと西にある諏訪湖の天気を調べたら「晴」。これはさらに行くしかない、とガソリンを入れて走り続けた。これが大正解。笹子トンネルを越えると、談合坂パーキングで着込んだレインウエアがものの3分でサウナスーツのように感じられる。
甲府平野をすぎると右に八ヶ岳、左に南アルプスの山並みを眺めながら、高速は標高を上げてゆく。走りながら森林浴ができるほど。そんな景色に励まされ、長い高速移動もものともせずに諏訪インターに到着。さ、これからツーリングの始まりだ。 |
すっぴんバイクの魅力を
存分にかみしめて
今やビッグバイクのなかで800ccといえばミドルレンジだ。トライアンフボンネビルT100は、空冷DOHC並列360度クランクのバーチカルツイン搭載。ハーレーダビッドソンスポーツスター883Rは、45度の挟み角を持つVツインが看板代わりだ。どちらも三桁馬力や怒濤の最高速などは持ち合わせない。そんな2台で、1日(はからずも)500kmツーリングを敢行した印象をまとめておきたい。
移動が長くなった今回、パワーはほどほど、カウルなしながら、2台は想像以上のタフさを見せてくれた。それはエンジンのキャラクターやハンドリングなど、ライダーをせかさない性格に助けられたのだと思う。パワーや装備、あるいは強烈な個性という切り札はないものの、プレーンなバイクの魅力を存分に楽しめた。
とくに制限速度で高速道路を走るには、じつに適役。またいつか行きたいね、と思わせる充実感に包まれたのが大きな収穫だった。 |
早朝、宇都宮を出発 |
 |
 |
 |
富士五湖目指して始まったロングツール。「ドダダダ」というハーレーの断続感ある音、かたやトライアンフはブーンと連続するモーター的メカ音が魅力。ツーリングの始まりだ。 |
|
高速道路を中心におよそ270kmをクルージングする2台 |
 |
 |
 |
トライアンフもハーレーも、制限速度で流れに任せるのも、追い越し車線に出て速い流れに乗るのも思いのまま。でも、不思議と100km/hクルーズに収まり、音や振動を感じながら、時間とともに風景、空気の匂いが変わるのを楽しむ。 |
 |
 |
長い高速移動にはカウルが欲しいもの。でも、不思議と飛ばしたくなる気が起きないキャラクターのエンジンの2台は、風を感じて走るのが楽しい。 |
|
午前中のうちに諏訪エリアに到着! |
 |
 |
 |
予定していた富士五湖、富士山五合目あたりを通り越し、諏訪インターまで足を伸ばした。大月ジャンクションから100kmほど走ったが、甲府の先の中央道はなかなかのツーリングルートだ。 |
 |
 |
諏訪湖から東に移動すると八ヶ岳の麓をゆく道が多い。山並を眺めつつ移動する。こんなときこの2台の波長はツーリングにピタリとくる。 |
すでにススキの穂が太陽に照らされて金色に光っていた。牧場の傍らをゆくダートの道にバイクを駐め、しばし秋の高原の空気を吸い込む。 |
 |
 |
 |
 |
諏訪ICで降り、諏訪大社上社前宮に。静かな佇まいは諏訪湖を挟んだ反対にある諏訪大社下社秋宮とは対照的。御柱祭りでお馴染みだ。 |
「美味しい蕎麦」のノボリに暖簾をくぐると「いらっしゃ〜い」の声。すいません、大盛りで。「はい、そば湯ね」。短くも和む瞬間です。 |
 |
 |
|
帰りはゆっくり夜の空気を感じよう |
 |
 |
 |
諏訪、八ヶ岳エリアから北関東方面へ戻るなら、一般道の走行距離は長くなるが、佐久近辺から上信越道を選ぶのが近道。秋の夜の風を感じながら、しっとりと、そしてのんびりと走るのもオツなのだ。 |
|
エンジンの個性はブランドアイデンティティだ |
 |
 |
 |
トライアンフボンネビルT100はイギリスを、ハーレーダビッドソンのXL883Rはアメリカを、それぞれ代表する魅力的なバイクである。
90年代になって復興したトライアンフが水冷並列3気筒という新しい魅力を提示して軌道にのるや、360度クランクを持つバーチカルツインを新造した。彼らの原点を思わせるクラシカルさだが、DOHCヘッド、細身のダブルクレードルフレームで適度なしなりをもったバイクのまとめ上げはさすが。
かたや883Rは伝統を継承するOHV2バルブVツインを搭載。こちらは04年にエンジンをフルモデルチェンジ。従来のリジットマウントからラバーマウントに変更になった。それでも、乗り味にはスポーツスターらしさをふんだんに感じさせてくれるのである。 |
 |
 |
リラックスした883Rのポジション。スタンダードの883よりもワイドバーを備え、上体はラクラク。 |
かたやトライアンフはシートとステップがやや近いが、どこにも負担の掛からない教科書のような姿勢がとれる。 |
 |
 |
|
ツーリングインプレッション |
 |
 |
 |
パワー感よりトルク感その増速感は媚薬だ
ハーレーダビッドソンのなかでももっとも小さな排気量となる883。エンジンにパワー感を求めると肩すかしを食うかもしれないが、回転上昇に頼らずとも速度計の針を押し上げる加速に慣れると厚いトルクがやみつきになる。ハンドリングはフロント19インチが生み出すセルフステアが軽快にワインディングを切り取り、思った以上に走りを堪能できた。フロントのダブルディスクは、飛ばしても扱いやすく速度をコントロールできた。 |
 |
 |
 |
Harley Davidson
883R |
|
|
 |
 |
 |
 |
 |
TRIUMPH
BONNEVILLE T100 |
|
 |
軽快なエンジンとスムーズな旋回性
アクセルをグッとひねるとすぐさま加速を開始するトライアンフのエンジン。猛烈ではないものの、高いギアでの加速ほど増速感をダイレクトに体感できる。ハーレーの知らぬ間に速度が乗る感覚とは対照的。ライダーをその気にさせやすいスポーティーなエンジンだ。ハンドリングはどっしりしているが、コーナーではライダーの意のままに走り、ペースを上げてもルックスのクラシカルさとは対照的なアグレッシブさも持っている。 |
|
|
|