

カフェレーサーが模範とするのはレーシングマシンだ。年代や車種が変わればお手本とするマシンはもちろん、改造の手法も大きく変わる。また、レーサーレプリカ的なスタイルがストリートで浸透していく中で、独自の解釈を得て形が変化することもあるが、大事なのは時代考証をしっかり行うことだ。当時の“ホンモノ”を知ってこそ、本質が見えてくるのである。

大雑把に言えば“カフェレーサー”とは、速さを求めて公道仕様車を改造し、たどり着いたスタイルの総称である。 だが、どこかボンヤリとしたイメージを抱く人が少なくないことも事実。カフェレーサーとは一体何なのか?
ここ10年ほどだろうか、欧州のメーカーが、次々にカフェレーサースタイルの車両を市場に送り出してきた。トライアンフを筆頭に、復活したノートンやロイヤル・エンフィールド、そしてイタリアのドゥカティやモト・グッツィ。それらのイメージソースは、大半が60年代から70年代の欧州で流行したカフェスタイルだ。
高性能なバイクが庶民にも手が届くようになっていた1950年代後半のイギリス。おもにブルーカラーと呼ばれる労働者階級の若者達が改造したバイクで、24時間営業のカフェにたむろし、スピードを競いあっていた。諸説あるが、これがカフェレーサーの起源とされている。やがて彼らの一部は、ロックンロールとリンクするファッションからロッカーズと呼ばれる集団へと変わり、一大ムーブメントを巻き起こした。
ほぼ時を同じくして日本。国産バイクが性能的にはイマイチだった頃に、やはりバイクを改造してストリートを駆け抜ける若者たちがいた。60年代前半にはオトキチ、後半ではカミナリ族と呼ばれた走り屋だ。
時代や地域の違いはあるにせよ、市販車にレーサー風の改造を施し、仲間内でスピードを競い合う。これこそがカフェレーサーの源流であり定義でもあると言えよう。
70年代に入ると、レースでも活躍していた欧州の有名ビルダーたちがオリジナルのフレームや外装を使ってスペシャルバイクを製作、カフェレーサーは世界共通言語となった。
今回はこうしたカフェレーサー黄金期の、代表的スタイルの紹介を通してその本質に迫ってみる。