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キャブセッティングの手順は?判断基準から実践的なセッティング方法を解説!

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近年のバイクはインジェクションが主流になってきましたが、まだまだキャブレターを搭載したバイクも現役です。インジェクションにはない独特なフィーリングから、「好きでキャブ車に乗っている」という方もいるでしょう。

そして、キャブレターを語るうえで外せないのが、キャブセッティング。非常に多くのパーツが相互に作用するため、セッティング迷宮に迷い込んでしまう方も少なくありません。

そこで今回は、キャブセッティングの手順を詳しく解説します。パーツごとの作用範囲から判断基準まで解説しますので、ぜひキャブセッティングをマスターしてください。

キャブレターの役割と種類

キャブレターは、ガソリンと空気を混ぜて霧状の「混合気」を作る装置です。その役割から、燃料供給装置とも呼ばれます。

混合気中のガソリンと空気の比率を「空燃比」といい、これには最適な比率があります。最適な燃焼のためには理想的な比率・量の混合気の供給が必要ですが、キャブレターはこれをアナログ制御で行なっているのが特徴です。

アナログのためキャブレター自体に動力はなく、エンジンが発生する負圧を利用して作動しています。

キャブレターの種類

基本的な動作原理は変わりませんが、キャブレターにはいくつかの種類があります。ここでは、キャブレターの種類としておもなものを3つ解説します。

バタフライキャブレター(固定ベンチュリー型)

キャブレターのなかでも最も古くから使われているのが、バタフライキャブレターです。固定ベンチュリー型とも呼ばれ、ベンチュリー(絞り部)の口径が固定されています。

混合気の量は、ベンチュリー手前に設けられたバタフライバルブで制御する仕組みです。構造がシンプルでメンテナンス性は高くなっていますが、ベンチュリーが固定されているため、高回転域と低回転域の両立は不向きというデメリットがあります。

ピストンバルブ型キャブレター(可変ベンチュリー型)

ベンチュリーを可変型とし、固定型の弱点を克服したのがピストンバルブ型のキャブレターです。ピストンバルブがスロットルに追従して上下することで、ベンチュリー径を変動させます。

ピストンバルブ型はダイレクトなフィーリングが魅力ですが、丁寧にスロットル操作をしないとエンジンに空気を送りすぎて失速することがあります。「レスポンスは良いが難しい」という特性から、上級者向けのキャブレターといえるでしょう。

負圧式キャブレター(負圧可変ベンチュリー型)

ピストンバルブ型キャブレターを扱いやすくしたのが、負圧式キャブレターです。ピストンバルブ型ではピストンバルブがスロットルワイヤーに直結されていますが、こちらは負圧によってピストンバルブを制御しています。

制御に用いる負圧はエンジンによって作り出されるため、エンジンが求める分だけピストンバルブが作動するのが特徴です。

負圧に追従するためダイレクト感は薄れますが、ピストンバルブ型のようにシビアなスロットルワークを要求されないのが利点です。扱いやすいキャブレターといえるでしょう。

キャブレターとインジェクションの違い

キャブレターはアナログ制御ですが、インジェクションは混合気の供給量や空燃比を電子制御しています。冒頭でも触れたように、近年のバイクはインジェクションが主流になっていますが、それはインジェクションのメリットが圧倒的に多いからです。

まず、インジェクションは混合気の供給量や空燃比を正確にコントロールできるため、パワーや燃費の面で有利です。排ガス規制に適合するためにも、これは欠かせない要素といえるでしょう。

そして一番の違いは、環境に応じてリアルタイムにコントロールできる点です。気温や気圧など、走行環境が変化すると適切な混合気の供給量・空燃比が変動しますが、インジェクションであれば自動で最適化してくれます。

極寒の場所でも標高が高いところでも問題なく走行できるのは、インジェクションだからこそです。キャブレターにも魅力はありますが、メリットの多さではインジェクションに分があるといえるでしょう。

キャブセッティングに影響するパーツとその範囲

キャブセッティングに影響するパーツとその範囲

キャブセッティングを解説する前に、まずは各パーツとその作用範囲について解説します。キャブセッティングを行なううえでの前提知識となりますので、以下で確認していきましょう。

メインジェット

メインジェットは、おもにスロットル開度1/2~全開にかけて、燃料供給量を決めるパーツです。「#120」といったように番号で表記され、数字が大きいほど燃料の供給量が増えます。

スロージェット(パイロットジェット)

スロージェットは、アイドリング~スロットル開度1/4付近の燃料供給量を決めるパーツです。メインジェットと同じく、「#60」のように番号で表記されます。キャブレターによっては、「パイロットジェット」と呼ばれることもあります。

ジェットニードル

ジェットニードルは、メインジェットに突き刺さっている爪楊枝のような形をしたパーツです。スロットルバルブに連動して上下し、メインジェットと相互作用しておもにスロットル中開度(1/4~3/4付近)の燃料供給量を決めます。

クリップ位置

クリップ位置は、ジェットニードルに設けられた溝の何段目にクリップを装着するかを表しています。中央を基準とし、クリップ位置を上げるとジェットニードルが下がり、クリップ位置を下げるとジェットニードルが上がります。

ジェットニードルはメインジェットを塞ぐように作用するため、ニードルを下げると混合気は薄く、ニードルを上げると濃くなります。作用範囲はジェットニードルと同等です。

エアスクリュー

スロージェットおよびパイロットジェットに対して作用するパーツで、作用範囲も同様です。スクリュー(ネジ)なので、部品交換ではなく締め具合で調整します。

基本的にはスクリューを締めると混合気が濃く、緩めると薄くなります。ただし、キャブレターによっては逆に作用することもあるため、説明書をよく確認しておきましょう。

アイドルストップスクリュー

アイドリング回転数を決めるスクリューです。締めるとアイドリング回転数が上がり、緩めると下がります。燃調には影響しないため、アイドリングが安定していれば大丈夫です。

フロートチャンバー内の油面

フロートチャンバーは、ガソリンを貯めておくプールのような役割を持っており、プールの水位に相当するのが油面です。

ガソリンが際限なく流れ込むとあふれ出してしまう(オーバーフロー)ため、フロートバルブという弁の役割を持つパーツによって、油面を一定に保つ仕組みになっています。

基本的には標準のままで油面を変更する必要はありませんが、フロートバルブの摩耗などによって油面が規定値からズレてしまうことがあります。油面が変わると燃調が変わってしまうため、セッティング前に基準値どおりなのか確認しておきましょう。

キャブセッティングの手順

前提として、キャブセッティングは燃調が合っていないときに行なうものです。そのため、現状で特に問題がなければ、むやみにセッティングをする必要はありません。

しかし、「スロットルに対してもたつく」「ゴボゴボいって吹け上がらない」といった症状があれば、キャブセッティングが必要です(点火系など別の原因がある場合もあります)。

キャブセッティングをするにあたり、まずは燃調が薄いのか濃いのか判断する必要があります。以下を参考に現状を把握しましょう。

燃調が濃すぎるときの症状

  • 加速性や吹け上がりが悪い
  • 排気が黒煙になりやすく、ガソリン臭が強い
  • エアクリーナーを取り外すと(吸気量を上げると)不調がおさまりやすい
  • プラグに汚れが付着しやすい
  • トルク感がなく、スロットル操作のレスポンスが鈍い

燃調が薄すぎるときの症状

  • トルク感がなく、アイドリング時や低回転域で不安定になる
  • チョークを引くと回転数が安定しやすい
  • エアクリーナーを外して(吸気量を上げると)不調が悪化しやすい
  • エンジンブレーキをかけると軽い破裂音(アフターファイヤー)が鳴る
  • プラグが白っぽく焼けている

症状から判断するセッティング箇所

スロットル開度によって、濃すぎる領域と薄すぎる領域が混ざっている場合もあるため、全体の傾向からセッティングを決めつけてはいけません。例えば、「全開付近では濃すぎるが、アイドリング付近は薄すぎる」といったこともあり得ます。

以下の表を参考に、スロットル開度ごとにセッティングの方向性を見極めていきましょう。

スロットル開度 症状 セッティングの方向性
全開 息つき、ノッキング、オーバーヒート メインジェットの番手を上げる(濃くする)
ボコつき、パワー不足、回転の頭打ち メインジェットの番手を下げる(薄くする)
中開(1/4~3/4付近) 息つき、失速、ノッキング ニードルクリップ位置を下げる(濃くする)
ボコつき、もたつき、回転上昇が鈍い ニードルクリップ位置を上げる(薄くする)
全閉~1/8付近 アイドリングが不安定 スロージェット(パイロットジェット)の番手を上げる(濃くする)

エアスクリューを締める(濃くする)
黒煙が出る、すぐにエンストする スロージェット(パイロットジェット)の番手を下げる(薄くする)

エアスクリューを緩める(薄くする)

表には記載していませんが、プラグの焼け色もセッティングを判断する助けになります。あくまでも目安なのでプラグだけで判断はできませんが、真っ白だと燃調が薄すぎる、真っ黒だと燃調が濃すぎる傾向です。

キャブセッティング時の注意点

キャブセッティングを行なうときは、必ず「濃いめ」の方向から合わせていくようにしてください。燃調が濃い分にはエンジンが壊れることはありませんが、薄すぎるとエンジンにダメージがおよぶ恐れがあります。

最初は基準がわからないため、思いきり濃いめからスタートするのが安全です。徐々に薄くしていけば、ベストを探りやすいでしょう。

また、エンジンが冷えていると正しい燃調が取れないため、キャブセッティングの際は暖気を忘れずに行なってください。

キャブセッティングは気象にも影響される

実は、キャブセッティングは気象にも影響されます。どれだけ緻密にセッティングをしても、一年を通してベストを保つのは現実的ではありません。

とはいえ、これは競技レベルでの話です。公道でそこまで神経質になる必要はないでしょう。ただし、真夏と真冬など極端な差がある場合はリセッティングが必要になることもあります。

気温、湿度、気圧といった気象条件に対する燃調の方向性については、以下の表をご覧ください。

気象 条件 セッティングの方向性
気温 高い 薄くする
低い 濃くする
湿度 高い 薄くする
低い 濃くする
気圧 高い 濃くする
低い 薄くする

キャブセッティングに悩んだらプロに相談

ここまで解説してきたように、キャブセッティングは非常に奥深く難しいものです。フィーリングなど数値に表れない要素もあるので、経験しないとわからない部分もあります。

自分がベストだと思っていても、「実は薄めの燃調になっていた」ということもあるでしょう。最悪、エンジンブローにつながることを考えると、判断がつかないままセッティングをするのは非常にリスキーです。

キャブセッティングに自信がなければ、プロに相談をすることをおすすめします。プロに基準を出してもらうことで、今後のセッティングにも活かせるでしょう。

お店での施工実績はこちらから見られます!
キャブレターに関する作業実績一覧

まとめ

バイクのキャブレターは、適切な混合気の量・空燃比をアナログ制御でコントロールする装置です。現在は電子制御のインジェクションが主流ですが、中古車などではキャブレターを搭載したバイクも多く見られます。

キャブセッティングは覚えることが多く難しい作業ですが、それゆえに奥深さがあります。手間はかかりますが、マスターしたときの喜びは大きいでしょう。あえてキャブ車に乗り、セッティングを楽しむという方もいます。

とはいえ、燃調が薄すぎるとエンジンブローの可能性があるなど、一定のリスクがあるのも事実です。慣れないうちは詳しい人に聞いたり、プロに依頼したりすることをおすすめします。

本記事は、2021年10月29日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。