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「本当にこのカタチで出したんだ!」スズキがGSX1100S刀を発売したとき、正直驚いた。70年代終盤になって日本製スポーツバイクはずいぶんとスタイリッシュなフォルムになってきてはいた。しかし、まさかカタナがショーモデルそのままのスタイリングで出てこようとは思っていなかったのである。
ワイルド。GPZ900Rニンジャを初めて見たときの印象である。基本的には空冷GPZの流れをくんでいるが、なんかこう力強さが加わったというか、内から沸き上がってくるパワーみたいなものを感じた。映画「トップガン」でトム・クルーズが軽々と乗っていたけれど、実際にはけっこうデカイって思った。
全身が筋肉の塊じゃないの?っていうほどパワーを全面に押し出したVMAX。ドラッグマシンを彷彿とさせるスタイル、そして加速力に、乗ってみたい意識よりむしろ怖さを感じた。だが、それだけにその存在感は圧倒的で、バイクらしさを強く感じた。
80年代に相次いで登場したGSX1100Sカタナ、GPZ900Rニンジャ、そしてVMAXは、どれもみな輸出モデルだ。国内では750ccが上限との自主規制みたいなものがあったため、残念ながら発売と同時に乗ることはできなかった。正確なところは覚えていないけれど、乗ったのはおそらく5、6年経ってからじゃなかったかな。
状態を低くしハンドルを握る。自然に下半身がホールドされ、まるでマシンと一体化したよう。カタナは紛れもなくスーパースポーツだった。爆発的な力を発生するタイプじゃなかったけれど、パワーフィーリングにはグリグリッとした手応えがあり、アクセルに忠実。回せばそれに見合った加速が体感できるのが楽しい。直進性の強いハンドリングも伸びやかなスタイルによくマッチしていると思った。だからといってコーナリングにクセの強さを感じることはなかった。
GPZ900Rニンジャは、見た目どおりの力強さが印象的。従来の空冷エンジンに比べ明らかにトルクフルで頼もしく感じた。取りまわしやワインディングでの切り返しで重さを感じることも少なくなかったけれど、パワーと安定感がうまくバランスしているように思えた。いかにもカワサキらしい硬派なイメージにも魅了された。
ちゃんと曲がってくれるんだろうか?と一抹の不安を抱えながら乗ったVMAXは、たしかに直進性の高い走安性だが、コーナーワークも意外に悪くない印象だった。軽快に身をひるがえすわけじゃないけれど、体全体を駆使して旋回させる豪快さがおもしろい。またV4エンジンは全域にトルクフルで、発進加速の鋭さはさすがだと感じた。
さて、現行モデルはVMAXだけである。国内仕様の設定はとくにないが、逆輸入のかたちで容易に入手できる。何年か前に国内モデルに乗った。Vブーストシステムはなく去勢されている印象は拭えなかったけれど、抜群の安定性と豪快な乗り味は十分に楽しめる。
エンジンにそれほど力強さを感じないし、ハンドリングもなんとなく重ったるい。現在のスポーツバイクと比較すると古さは否めないが、でもバイクを走らせているんだっていう楽しさが、カタナとニンジャにはある。スタイルは今見てもかっこいい。だれが乗っても速く走れちゃうバイクじゃないけれど、どこかアナログ的な感覚が、乗り手に主導権を与えてくれているようで走りを楽しめるバイクたちだ。(栗栖) |
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