オートマチックミッションを採用したバイクもかつて存在した。しかし、趣味性の強いスポーツバイクには、結局なじまなかった。だが時代は大きく変化し、クルマと同様にAT車も当たり前になりつつある。ただし、そのカテゴリーはスポーツバイクではなく、スクーターだ。
原付車はいうに及ばず、いまや軽二輪から小型二輪クラスにまでスクーターは台頭し、その躍進ぶりは他を圧倒するほどだ。豊富に機種がそろう250ccモデルの場合、若者のファッションアイテムとしてもすっかり定着した感があり、とくに都市部ではスポーツバイクを凌駕する勢いだ。さらに、快適なロングクルージングを実現してくれる大型モデルも、国内外を問わず続々と登場してきている。
これら一連のスクーターに共通するのは、オートマチック変速のイージー操作であることはもちろん、高い安定性や軽快でスポーティな運動性といった、バイクに求められる性能も加味している点である。単なるコミューターから、スポーツバイクの領域にまでその性能を進化させてきているのだ。しかも急速にだ。
出始めのころのスクーターのホイールサイズは12インチだった。だが、スポーツ色を強く押し出した最近のモデルは14インチ、15インチと、一般的なバイクに肉薄する。シャシー(フレーム)の剛性アップや、サスペンションの高性能化もあって、侮れないワインディング性を発揮するまでになっている。さらに前後連動システムのブレーキも強力。ABS装備も常識になりつつある。
最大排気量のスカイウェイブ650LXを例に取ってみると、150km/h巡航が可能なほどエンジンには力の余裕がある。また、通常のドライブモードに加えパワーモードも設定。スイッチ操作ひとつできり替えられ、急な上りが続く山道でも力不足は感じない。さらに、電子制御式CVT(SECVT)までも採用。5段階に変速できるマニュアルモードも使うことができるのだ。もちろんこの変速操作も、左手のスイッチひとつである。エンブレ効果も期待できることから、かなりスポーツライクな走りもできるのだ。
もはやこれは、スポーティなクルマ感覚。スクーターの枠を超えたATスポーツといってもいい。2輪車のAT免許導入の是非はともかくも、新たな2輪車として、今後ますます進化していくはずだ。そして、走るステージもさらに広がっていく。 |