休日の朝、行楽地へと続く道はサンデードライバーの大河ができあがる。満々とした量をたたえ、しかもその流れはおおらかだ。だからもっと早く出ればよかったのに、と、ひとりなら毒づいてみたくなるハズだ。
けれど、ふたりで走るとなると、事情がガラリと変わる。いくらなんでも、スッピンでいいから6時に出よう、なんていえないし。そう、ガツガツ走る、という趣旨の1日じゃないわけだから、こうしたゆったりとした流れに身を任せてみると、それはそれでまったく気にならなくなる。
いや、むしろ、このペースのほうがふたり人乗りで出かけるにはちょうどいい。と、さっきから大きなVツインをうならせるこのバイクもそういっている。伝統と伝説。このメーカーを装飾する言葉はいくらでも見つけられる。でも、ひとりで乗ると、1450ccのエンジンンをもってしても、どこかに物足りなさを覚えるが、ふたりで乗ると、これがじつにちょうどいい。
トルクというのは、こういうとき味方になる。なんてライダー的見地で考察するまでもなく、ふたりの人間を軽々と運んでくれる頼もしさ。
前をにらみながら、ちょっとヘルメットを後ろに寄せて、短く会話なんてしてみたりするときのバイクの安定感。とにかくしゃかりきになって走ろう、とか、急ごう、とか、頭のなかにこれっぽっちも浮かんでこなくなる。まるで、マジックだ。
ふたり乗りは楽しいね。そんな思い出になる1日は順調に滑り出したのである。 |