騒音、そして排出ガスの新しい二つの規制の施行は、ときにメーカーの看板モデルに、引退を突きつけることになる。バンディットに搭載された油冷エンジンもその一つだった。油冷搭載ファイナルモデルが出て時間も経たない交代劇は、ファンに失意を味あわせたかもしれない。
新型バンディットの発表会の席でエンジニアが語った言葉が記憶に残る。「もちろん、油冷でもクリアすることは可能でしたが、先を考え、今、転換期としたほうが良い、という決断でした」と……。
油冷への思い入れが強いのは、メーカーの人も同じだったのだ。新規制をクリアする、とは、歴史が動くことなのだ。
ここで、新規制対応モデルに共通する特徴をお伝えしたい。まず、キャブからFIになって、走りが格段に良くなった。今まで絞る方向で規制に対応したキャブから、一転、触媒とのコンビで、排出ガス成分を削減しつつ、積極的に制御できるため、エンジンが目覚めたかのようだ。また、エンジン、駆動系からの騒音を抑えたことで、純度の高い排気サウンドが耳に届く。正直、価格上昇は痛いが、それを上まわる好感度を持ったモデルが多い。取材現場から学んだ新規制モデルの実像なのである。
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