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カワサキは60年代半ば、当時最大市場の北米で人気が高かった英国車に対抗する機種としてW1を開発、国内でも発売した。ベースは今はなきメグロK2(英国のBSAを範に開発された空冷OHV500ccツイン)というモデルで、その排気量を624ccに引き上げ、新デザインの車体に搭載してW1を造り上げたのだった。
W1は当時の日本製バイクとして最大・最高のスポーツ車で人気車となる。そしてその後改良が重ねられ、車名をW1S、W1 SA、650RSと変えながら70年代半ばまで製造販売された。CB750 Fourが登場した後も支持され続け、一時代を築いた。今なおW1系を愛するファンも多い。
90年代末に登場したW650はそんなW1の復刻版といえるレトロスポーツである。絶対性能やスポーツ性の高さを追求した機種とは一線を画す、異彩のモデルとして話題となり、安定した需要を得て今日に至っている。
ベベルギヤでカムシャフトを駆動するOHCツインは、専用新設計で、絶対性能ではなくテイストを重視した特性だ。また昔のバイクのようにエンジンの造形に対するこだわりも大いに感じられ、美しく仕上げられている。
車体もW1や60年代のトライアンフを思わせるデザインでレトロムードが色濃く漂う。質感を高めるため金属部品を多用していて、足まわりの仕様、装備もクラシカルである。ただ、現代の技術で造られているから信頼性が高い。
ドロドロっとしたバーチカルツイン独特の心地よいエンジンフィーリングが味わえ、街乗りやツーリングなど普通に走りを楽しむ上で不足ない性能がある。
デビュー後10年に満たないものの、W1の血統を受け継いでいるともいえるし、その背景には60年代の英国車も垣間見える。昨今レトロ調バイクは数機種存在するが、W650はその色合いがもっとも濃く味わい深い1台である。 |
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72万300円 |
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平均価格 |
56万円 |
登録台数 |
194台 |
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年式 |
96年〜07年 |
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エンジン |
空冷4ストロークOHC 4バルブ単気筒 |
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排気量 |
675cc |
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圧縮比 |
8.6 |
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最高出力 |
35Kw(48PS)/6500rpm |
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最大トルク |
54Nm(5.5Kgm)/5000rpm |
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変速機 |
リターン5段 |
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全長×全幅×全高 |
2180×780×1075mm(ローハンドル仕様) |
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シート高 |
800mm |
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乾燥重量 |
195kg |
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燃料タンク |
14L |
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タイヤサイズ |
F:100/90-19 R:130/80-18 |
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スポーク仕様で前後19/18インチ径のホイールサイズは、昔の大型バイクと同じである。さすがにフロントブレーキは安全性を考慮してドラムではなくディスクだがシングルを採用する。 |
ティアドロップ型の燃料タンクも味わいがあり、両サイドには往年の英国車風の大型立体エンブレムと、ニーグリップラバーを装備。懐かしさを感じさせるデザインのひとつである。 |
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ダブルシートは60〜70年代のバイクによく見られたタックロールデザインだ。スポンジが厚くて幅も広く、前後の段差が小さいフラットな形状で座り心地がいい。足着き性も良好。 |
カムシャフトをベベルギヤで駆動する空冷OHCバーチカルツインは、味わいがあり外観も美しい。W650の大きな特徴・魅力である。始動はセル/キック併用で使い勝手がいい。 |
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ステー付きのフロントフェンダーも当然スチールでメッキ仕上げである。フロントフォークに装着されるラバーブーツが懐かしい雰囲気を盛り上げる。W1系にもこれが付けられていた。 |
リヤフェンダーはスチール製でメッキ仕上げ。
テールライトのデザインは60〜70年代のバイクのそれを彷彿させるレトロなデザインで、黒いステーも時代を感じさせるものだ。 |
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リヤサスペンションはツインショックを採用しており、スイングアームはスチール製で、オーソドックスな仕様である。だが、チェーンケースは重量やコストの関係からか、樹脂製だ。 |
昔のバイクのサイドカバーはこのように独立したデザインのものがほとんどで、60年代は材質がスチールだった。W650はそれを踏襲している。曲線的な造形は優しさがあって質感も高い。 |
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昔はヘッドライトケースが車体色と同色に塗装されたバイクも多かった。スピード/タコの2連メーターは電気式。W650の装備/デザインのなかで数少ない新しさを感じさせる部分だ。 |
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マフラーは左右2本出しで、メッキ仕上げのキャブトンタイプ(中央部が太くその前後が細く絞られている)。懐かしいモノのひとつであり、W1系ではW1Sからこのタイプが採用された。 |
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中古車購入
ワンポイントアドバイス
キャブレター編 |
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エンジンの好不調に関してキャブレターの影響は大きい。2気筒の場合、その同調が取れていないと不調につながる。長期間放置されていると、中のガソリンが腐ったりすることもある。エンジンをかけてアイドリングが安定しているかをチェック。 |
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不変のデザインを探る
W650のデザインは基本的にデビュー以来変わらず、車体色が刷新されてきた。それは『美しいバイクを造りたい』というコンセプトで生み出されたこのバイクのデザインの完成度が高いからだ。かつてのW1や英国車を彷彿させるレトロ調のきれいなスタイルは、下手に手を入れると、バランスが崩れてしまうのだ。 |
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