
マリン後輩
写真撮るの下手ぴっぴ _(:3」∠)_
Rainy Wet Missile Tourer ZZR400限界難民
時代遅れのバイクブログやってます
「 #マリン後輩の最速日記 」 見てね( ◜‿◝ )♡
ZX-12R 01/15 87500オ換 次90500オ・フィ
Z125プロ 02/12 26000オ・フィ換 次28000オ
キャタナ 05/01 99999オ・フィ換 次99999オ



「おい! 離せよ!」
疾四踏会の拠点、レストランの駐車場で少年が声を上げる。
「痛って! 俺の腕はそっちには曲がんねぇよ!」
腕の関節をキメられ痛みに別の少年も悲鳴を上げる。
疾四踏会のメンバー達に囲まれ、少年達が地面に突っ伏し大人達を見上げる。
スタングレネードを店に投げ入れたのは3人の男子高校生だった。
曰く派手な車やバイクが屯しているのに腹が立ち、度胸試しで犯行に及んだとのこと。
「どうします? 南務さん」
メンバーの1人が熊のような男、南務に尋ねる。
「どうするってもな~」
南務がしゃがんで少年の1人と目線を合わせる。
「しっかしお前ら大したことなかったな、ものの10分足らずで捕まるとか情けねぇぞ」
南務が少年達の族車を一瞥し、呆れたように話しかける。
「知らねぇよバーカッ!」「 俺達ャ先輩の魂乗って走ってんだ。あんたらこそ、なにマジになってんの? バッカじゃねぇの!?」
唾が飛ぶほどに少年が叫び挑発する。
「おらガキてめぇ!」「チ○ドン屋みてぇなバイク乗ってるお前らこそ恥を知れ!」
メンバー達がいきり立つ!
「やめろ」
南務がメンバー達を制する。
「あぁ、もういい。お前らもう帰んな。明日も学校有るんだろう?」
南務が立ち上がりメンバーにハンドサインを示す。
少年達を囲っていたメンバー達が輪を崩した。
「さぁ、とりあえず今日は解散だ。姉さんも鋭助君 の勧誘に失敗したらしいし、俺達も帰ろう」
南務を筆頭に疾四踏会のメンバーが帰り支度を始める。
「おい! おっさん帰んのかよ!?」
少年の1人が声を荒げる。
「おう。帰るぞ、お前らも早く帰んな」
「バカにすんな! 子供扱いすんなよ!」
「じゃあ子供扱いされねぇように腕を磨け。今のお前、俺から見たらイキったチワワにしか見えんぞ」
「っくぅ!」「くそジジィが……」「………」
うつむく少年達、そして南務の言葉にメンバー達がゲラゲラと爆笑する声が夜に響いた。
電気の消えた真っ暗な駐車場。
「あの」
店から出てきた南務に残っていた少年が声をかける。
「あん? おいおい、まだ残ってたのかよ……」
南務が面倒臭そうに対応する。
「俺を疾四踏会に入れて下さい!」
少年が勢い良く頭を下げる!
「?」
「俺、疾四踏会で走りたいです! すぐに腕つけて皆さんみたいに速くなります! お願いしますッ!」
「お前、バイクは?」
「親父のお下がりですけど、不動車のZXR400あります」
「なるほど」
「お願いしますッ!」
少年が再び頭を深々と下げる!
「1つだけ質問良いか?」
南務の問いに少年が頭を上げる。
「お前、管楽団好きか?」
「○ぬほど嫌いです」
「OK。合格だ」
南務はそう言って1枚の名刺を少年に渡す。
「ようこそ疾四踏会へ」
南務の言葉、そして招くような仕草に緊張と興奮が少年の体を巡る。
名刺に描かれた四つ首の狼。
今この時、新たなる爪と牙が1つ加わったのだった。
#TTT2B #管楽十二鉄鋼楽団 #疾四踏会 #チームエンブレム #(´ε`;)ゞ
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2020年07月03日
41グー!
TTT2B
最初は殴られたのかと思った。
頭を押さえキツく目を閉じた状態で、体の痛みを確認する。
「……?」
どこも痛くない。
ゆっくりと頭を上げて目を開く。
七瀬さんや店内の全員が身を屈めて、店の外に向けて鋭い視線を向けていた。
「あの……」
「ーー」
七瀬さんが口に人差し指を当て、俺に身を屈めるように促す。
「ギャハハハ!」
外より下卑た笑いが木霊する。
七瀬さんが熊のような男に目配せ、男が店内のメンバーにハンドサインを飛ばす。
3人ほどライダーが頷き、店の外へと飛び出していく!
そしてドドンッと幾つかのイグニッションが鳴った。
「ヤッベ来たぞ!」「逃げろ逃げろ!」
まるで子供のような黄色い声、そして数台になるであろうマシン達の加速音が外に響いた。
次第に音が遠のいていく……
「ごめんね」
七瀬さんが呟き、俺に頭を下げる。
「え? あ、いや……どうですかね」
俺も頭を下げた。
下げた頭で、横目に店内を見る。
ざわつく店内、その床に何かが落ちていた。
「スタングレネードだな」
あの熊のような男がそれを拾い上げる。
「恐ぇなぁ~。スマンね、店長~て、くっさ! 」
男がタオルにそれを包み外へと出ていく。
そして何人かのメンバーが席を立ち、散らかった店内の片付けを始めた。
「あの、鋭助君」
七瀬さんの言葉に我に帰る。
「さっきの話なんだけど……」
「ーーあ」
現実に戻される。
そうだ! 俺は疾四踏会への勧誘を受けてたんだった。
まずい、思いっきり断ったし。
さっきのゴタゴタに紛れて逃げればよかった、、、
「いきなり言われても分かんなかったよね」
七瀬さんはそう言って立ち上がる。
「とりあえず今日は帰ろうか。駅まで送るよ」
七瀬さんが入口へと歩いていく。
「お疲れっす姉さん」「お疲れ」
「あのバカどもすぐ絞めますんで」「うん」
「またお願いします」「頑張りや」
メンバー達が七瀬さんに頭を下げる、それに七瀬さんが答える。
俺もオドオドしながら後に付いていく。
「ども、お疲れ様ですお疲れ様ですお疲れ様です」
ペコペコと忙しく頭を下げる。
「どもッス」「どもッス」「どもッス」
太い声が返ってきた。
店を出る。
「おう、もう帰るんか?」
あの熊のような男が声をかけてくる。
見れば駐車場の一角、軍手で件のグレネードをバラしている様子だった。
「送ってくる。あと頼める?」
「姫に言われたら断れんわ。了解、あと鋭助君」
「ッ!」
いきなり名前を呼ばれ心臓が大きく一打、冷たい汗が吹き出す。
「今日はスマンかったね。これに懲りず、また来ぃや」
「……あ、はい。どうも」
目も合わせず曖昧に返事。
「じゃ行ってくる」
七瀬さんがZ32に乗り込む。
俺も倣って助手席に乗り込む。
ゆっくりと駐車場から出て店を後にする。
街灯が照らす夜の国道を走っていく。
すっかり夜も更けてしまった。
昨日の今頃はもう寝てたなぁ。
あぁ、明日の仕事行きたくねぇなぁ~。なんて考えていたら。
「──?」
ふと車内に流れていたパンクロックが小さくなった。
「今日はごめんね」
七瀬さんが再び俺に謝った。
「いきなり変な場所に連れていかれて、しかも変なチームに勧誘されて」
七瀬さんが前を見たまま喋る。
「挙げ句にトラブルに巻き込まれて、迷惑だったよね」
信号待ちで停車、赤信号の光が周囲を照らす。
「今さら言い訳なんてしない。本当にごめんなさい」
「………」
「………」
「あの」「えっと」
「「あっ」」
出そうとした言葉が重なる。
「あ、七瀬さんからどうぞ」
「あ、いや、鋭助君から」
じゃあ……
プァッ! 後ろからクラクションが鳴らされる。
見ればいつの間にか青信号に変わっていた。
急いで出発する。
「ちょっとスーパー寄って貰って良いですか?」
「え? あ、うん。分かった」
七瀬さんが頷き、少し走ってから最寄りのスーパーへと入る。
「ちょっと待ってて貰っていいですか?」
俺はそう言ってスーパーへと急ぐ。
そして目当ての物を買い、急いで七瀬さんの車へと戻る。
「お待たせしました」
俺は買ってきた物を七瀬さんに差し出す。
「……アイス?」
「はい。店でデザート食べてなかったんで、、、あ、抹茶とクッキー&クリームどっちが良いです?」
「……じゃクッキー&クリームで」
七瀬さんがオズオズとアイスを受け取る。
しばしの間、パンクロックをBGMに2人アイスを食べる。
「これなんてバンドのヤツです?」「これは○○ってとこで~」「△△って曲で~」
喋りながら抹茶アイスを半分ほど平らげる。
遠くよりサイレンが鳴る、そして目の前の国道を消防車が通っていった。
「火事ですかね」「分かんない、でもおっかないね~」
ふと会話が途切れる。
「七瀬さん」
俺は七瀬さんに改めて向き直る。
「さっきの話なんですけど──」
七瀬さんの体が強張る。
「やっぱ俺、疾四踏会には入れません」
「疾四踏会に入るのが嫌って訳じゃ無いんです、どっちかと言えばチームとか憧れてたんですよ。で、管楽団も正直言えば嫌いです、追いかけ回されたし。でも、、、その」
「良いよ。続けて」
七瀬さんがアイススプーンを俺に向ける。
「嫌なんですよ、なんか縛られてバイク乗るの。上下とか面子とか、そういったのが嫌でこっち(バイク)の世界逃げてんのに、俺ガキなんです、純粋に楽しみたいんですよね」
七瀬さんは黙って俺の言葉を聞く。
「疾四踏会と管楽団の間に因縁が有るのは察します。それについて俺は何も言いません、てか言えません。でも嬉しかったです。俺の腕を見込んで声を掛けてくれてありがとうございました」
俺は深々と七瀬さんに頭を下げる。
「……そっか」
七瀬さんは短くそれだけ言った。
「あぁ、振られたか~」
七瀬さんがカチカチとスプーンを噛み、大袈裟におちゃらける。
「すいません」
「うんうん、私もごめんね」
七瀬さんから空の容器を受け取りゴミ箱に捨ててくる。
「遅くまで付き合わせちゃってホント悪いね」
「いえいえ! ハンバーグ美味しかったですよ。また行きましょう」
俺がそう言うと。
「……うん。行こう」
少しだけ七瀬さんは笑った。
車が駅に向けて発進する。
「ん? なんか混んでますね」
がしかし、すぐに渋滞にハマってしまった。
目の前が連なるブレーキランプの光に赤く照らされている。
「どうしたんだろ? 事故かな」
七瀬がハンドルに手を置き頬杖をつく。
ちっとも前に進まない。
「ここでお別れにしましょうか?」
「え? でも……」
「ほら、全然前に進みませんし。ここで断った俺と喋るより、七瀬さんも早く仲間の元に帰ってあげて下さい」
俺はそう言って、前後を確認し外へと降りる。
「じゃすいません。今日はホントありがとうございました」
優しくドアを閉じる。
「あの鋭助君!」
七瀬さんが俺を呼ぶ
「また走ろうね!」
「ーーっはい!」
七瀬さんに手を振って答えた。
一通り手を振ってから踵を返す。
やや強引に話を切った感じにしまった。
「いや、もうあれ以上無理だって」
1人ぶつぶつ言いながら駅へと歩いていく。
しかし前が明るい。まるで昼間のように駅前が照らされていた。
駅で工事でもしてんのか?
……いや工事してたか──などと考えていたら。
ウ゛~ウ゛~
耳に突き刺さるようなサイレンが鳴る。
そしてビル郡の間を通り、駅へと到着する。
「────」
駅が炎上していた。
あ、どうも(^^;
②に続きまーす(´ー`)
#TTT2B #冨樫系ベ○セルク病 #サボってすいません -
2020年06月19日
50グー!
TTT2B
仕事終わり、DR-Zで帰っているとスマホが鳴った。
画面を確認。七瀬さんだった。
とりあえず近くのコンビニの駐車場に入り電話に出る。
「もしもし鋭助ですけど」
「あ、出た出た。もしもし鋭助君、今暇?」
「あ、いやぁ。今仕事終わって帰ってたンすけど」
「そうなの? じゃあさ、今からご飯食べに行こうよ」
「……あぁ」
返答に困る。別に七瀬さんと飯を食うのが嫌なわけではない。ちょっと今日はいつも以上に疲れていた。
「もしかして今日キツい?」
俺の様子を察して七瀬さんが心配そうに尋ねる。
「……ちょっと」
俺は電話越しにペコペコと頭を下げる。
「ん~、そっかぁ……」
「すいません」
心が痛む。
「分かった、じゃあ」
「ですね。またーー」今度で……
「私が車出すから、それで食べに行こう」
「ーーあ、はい。それでお願いします」
勢いに押されて頷いてしまった。
「じゃあ、30分後くらいに駅前に迎えいくよ。またね」
七瀬さんが言うだけ言って電話を切る。
「…………」
俺は付いていけずに固まってしまった。
「とりあえず駅に行くか」
ヘルメットを被り直して、駅前の駐輪場に向かうことにする。
駅までは数キロ、着いてからモンエナかコーヒーでも飲もう。
信号待ちでぼんやりと暮れる空を眺める。
「七瀬さん車持ってたんだなぁ」
金持ちだ。俺なんてもう何年も乗ってないよ。
信号が青になったので前の車に倣って発進。
そういや、このDR-Zの元オーナーの先輩も、車を買うためにコイツを俺に売ったんだよな。
「あぁ、俺もいつか……」
スピードを上げていく。
ーーバイクを降りる時が。
「ってまずいまずい」
気付けば駅に到着しようとしていた。
バイクから降りて、手押しで駐輪場に向かう。
「そういえば七瀬さん、どんな車に乗ってくるんだろう」
軽? 日本車? 外車?
バイクがR1-Zだし……
ブォブォブォ!キャキャキャキャ!
派手なブリップとスキール音を立て、1台の車が駅のロータリーへ入ってくる!
「うわ、うるさいなぁ~」
一体誰だよ、またアレか? 菅楽団か?
「恐いなぁ」
駐輪場にDR-Zを停め、とりあえず駅のコンビニに向かう。
「あ! お~い鋭助くーん!」
件の車の窓が開き、何を思ったか俺の名を大声で呼ぶ!
……まさか。
恐る恐る車を方を見る。
「お~い! コラ、無視すんな!」
顔に入った鮮やかなタトゥー、その顔をニヤけさせ、こちらに手を振るドライバー。
七瀬さんだった。
「……あ、どうも。七瀬さんお疲れ様です」
俺は再びペコペコと頭を下げた。
「いやぁ派手な車乗られてますね!」
車の助手席に座り、俺は唸るタービンとE/G音に負けながら喋る。
「うん? うん、そう! カッコいいでしょ!」
七瀬さんがシフトを上げる。
ジェット機のような加速に体がシートに押し付けられる!
「フェアレディZですか?」
「うん、Z32!」
クォォォォ! パシュン!
車検とか諸々が吹っ飛ぶような派手な音に耳が痛くなった。
深いバケットシートで前がよく見えないので、横の流れる風景を見る。
ものすごい速さで風景が流れていた。
「今日はどこ行くんですか?」
「友達のやってるレストランに行くよ。あぁ大丈夫、明日に影響しないようにするから」
「あ、はい」
しばしの間、Z32の雄叫びと社内に流れるパンクロックに聞き入る。
しかしスゴいなぁ、確かZ32と言えばもう何十年前の車だったはず。
それをこんな元気に維持してるなんて……
「やっべぇ」
「ん? もしかして酔った?」
「いえ! 良い車だなぁと思っただけです」
「アハハ! ありがとう」
七瀬さんが速度を緩め、駐車場へと入る。
「着いたよ」
七瀬さんがE/Gを切り車から降りる。
俺も車から降りる。
ふと見れば、駐車場の殆どが車やバイクで埋まっていた。
人気店なのだろうか?
「ここはハンバーグが美味しいんだよ」
「へぇ~。そりゃ楽しみですね」
期待を膨らませて店へと入る。
「いらっしゃいませ~」
間接証明のムーディーな店内、そして食欲をそそる美味そうな香り。
愛想の良い店員に促されてテーブルに座る。
「お洒落ですね」
「でしょ!私もお気に入りなんだよね」
メニューを広げる。
肉汁の溢れる美味しそうなハンバーグやサイドメニューが載っていた。
なるほど、確かにこれは美味そうだ。
「決まった?」
「はい。俺はハンバーグとーー」
「じゃ私はクラブハウスサンドとーー」
店員を呼び2人の注文を伝える。
しばらくして。
湯気を昇らせるハンバーグとクラブハウスサンドが運ばれてきた。
パチパチと油が跳ねるハンバーグを前に口によだれで溢れる。
「さぁ食べちゃおう! いただきまーす」
「いただきます。て熱ッ!」
口を火傷させながらハンバーグを子供のように頬張る。
こりゃ美味い!溢れる肉汁と粗挽きの肉やべぇ! 写真からも味は予想してたが、それ以上だ!
でも、ハンバーグに劣らずソースも美味い。さっぱりとした酸味と仄かな苦味で口が驚くほどにサッパリとする。
「どう? 鋭助君美味しい?」
クラブハウスサンドを食む七瀬の問いに、俺は笑みを浮かべ頷く。
「めっちゃ美味いです。今まで食ってきた中で1番っすわ」
言い終わり再びハンバーグを口に運ぶ。
「そっかそっか♪ 良かったよ」
七瀬さんが柔和に笑う。
そして。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまです」
あっという間に平らげてしまった。
「いやぁ、マジ美味しかったです。すっかり疲れが吹っ飛びましたよ」
「そう? 良かった~」
七瀬さんはそう言うと、バックから煙草を取り出し……
「あっ」
七瀬さんがバツが悪そうに俺を見る。
「ああ、どうぞどうぞ。俺に構わず」
俺はテーブルの灰皿を七瀬さんの前に置く。
「じゃ失礼しまして」
七瀬さんは静かに煙草を吸い、そして俺に当たらないように煙を吐く。
ふと窓の外を見る、ビルの液晶時計は22時を回ろうとしていた。
いやぁ美味しかったなぁ~。今日はグッスリ眠れそうだ。
「ーーん?」
そこで、俺はある異変に気付く。
窓から見える駐車場のバイクと車、それらに見覚えがあった。
満腹でトロくなった頭で思い出す。
あれは確か……そうだ!
いつぞやのラーメン屋で見かけたバイク達だ!
俺の背中に冷たいものが伝う。
いや、でも俺何をしてないし……
そんな焦る必要は……
などと考えていたら。
ブォンブォンブォンブォン!
続々とバイクや車が駐車場に入ってきた。
そして暗くて見にくいが、ライダー達は同じチームのジャケットを羽織っているのが確認出来た。
チラッと店内を見る。
「……あ」
気付けば店の所々に同じ服装のライダーが座っていた。
「……七瀬さん」
俺は煙草を吹かす七瀬さんに、顔を近づけてヒソヒソと喋る。
「なんかちょっとヤバそうーー」
七瀬さんは窓の外を眺めている。
「なんですけど……」
七瀬さんは未だ窓の外を眺めている。
「あの……」
「鋭助君」
七瀬さんが煙草を消し俺の名を呼ぶ。
「単刀直入に言うね」
七瀬さんはそう言うと立ち上がって。
「鋭助君、疾四踏会(うち)に入ってさ」
壁に掛けてあったジャケットを手に取って。
「菅楽団(あいつら)と戦わない?」
俺に見えるように、ソレをテーブルの上に置いた。
置かれたソレを見る。
疾四踏会
その文字と共に、月に吼えるが如く天を仰ぐ四つ首の狼がそのジャケットには描かれていた。
「………ああ」
なるほど、そういうことですか。
俺はテーブルから静かに足をーー
「兄ちゃん」
後ろのしかも間近から声をかけられる。
「せっかく姉さんが誘ってくれとんじゃ。しっかり返事せぇ」
見れば熊のような男が、しっかりと俺の椅子を押さえていた。
「アハハハハ……」
「ゴメンね鋭助君」
七瀬さんが申し訳なさそうに喋る。
ーーなるほど。
「全ては茶番」
「全部全部、仕組んでたってことですか」
ここにきて、ようやく全てを理解する。
「ゴメンね」
再び七瀬さんが申し訳なさそうに俺に視線を送る、、、が。
その瞳は鷹の目のように俺を見据えていた。
俺は目の前の疾四踏会のジャケットを見る。
そして重たく固まった口を動かす。
「俺はーー」
七瀬さんの視線が俺に刺さる。
「疾四踏会には入りませんよ」
その瞬間、俺の視界は火花に包まれた。
#TTT2B #疾四踏会 #(´ρ`) -
2020年06月04日
53グー!
⚠️この文章には多分に暴力表現が含まれています⚠️
読まなくても本編には問題ありません。
それでも良い方は、十分に注意のもと読んでもらえると幸いです by東○海平
興奮が冷め、静まり返ったドライブイン。
「ホントありがとうございました」
康が深々と健二に頭を下げる
「ーーああ、そうだな」
健二がバツが悪そうに空を見る。
「ホント助かりました、俺が戦えれば良かったんですが……」
康が包帯に巻かれた右手を見る。
「だな」
「治ったら、すぐ復帰します! ああ、良かったベストが無事で」
康が身振り手振りで感謝を表す。
「しかし酷いですね! こんなハッキリ靴痕を残すなんてーー」
「おい」
冷たい声が康の言葉を断ち切った。
康は声の主を見る。
「武恒さん」
タバコを吹かし武恒が立っていた。
そして康へとゆっくり歩み寄る。
「お、おい! 武恒!」
健二が武恒へと急いで歩み寄る。
「勝負には勝った!それで」
「健二」
武恒の言葉に健二が止まる。
「お疲れ。見事だったよ、ゆっくり休め。」
後は俺がヤる。
ポンポンと武恒が健二の肩を優しく叩いた。
「康だったか?」
「は、はい! お世話になってます」
康が深々と頭を下げる。
が。
武恒の無造作な蹴りが康の腹に突き刺さる!
「ッぐぅ!」
康がその場にうずくまる!
「……なんで、がぁ!」
頭を上げた康の顔を武恒が踏みつける。
硬いアスファルトに顔を押し付けられ康が悲鳴を上げる!
「おい武恒、もう良いだろう!」
「お前ら、健二を押さえとけ」
武恒が足を外し、屈んで康と目線を合わせる。
「管楽団(うち)に負け犬は要らない。ましてや、手前の尻拭いを他人に肩代わりさせるようなヤツなんて……」
「でも、俺バイク壊れててー」
康は目に涙を浮かべ、武恒に視線を合わせる。
「じゃなんで、負けたその場でリベンジを口にしなかった」
「……へ?」
「お前、元気にバイク引きずって健二んとこまで行ったんだろう?」
ーーそれなら取り返す約束ぐらい言えたよな?
武恒の言葉に康が竦む。
「しかも? あの優しい健二さんが仏の慈悲で無料でバイク直そうしてくれたのに、それをダメと断ったとか」
「それはベスト奪われてて時間がーーぅ!」
武恒が康の髪を乱暴に掴み、強引に顔を上げさせる。
「手前で行けよ。それか仲間内のバイク借りれや」
「右手! 右手が!」
康の言葉。
武恒が視線を移し、康の右手の包帯を乱暴に引っ剥がす。
康の右手には青い打撲が数ヶ所有った。
「………」
「消えろ、言い訳野郎。2度と姿見せんじゃねぇぞ」
武恒が踵を返し、自分の愛車へと向かう。
その背中に淡く月の光が差す。
描かれた文字と絵柄、そして。
「帰るぞ」
12/12 ベストには、その数字が縫い込まれていた。
武恒が愛車ZX-10R E型に跨がりドライブインを出ていく。
武恒に倣い、次々と他の管楽団のライダーも帰り支度をしドライブインより出ていく。
「……」
健二は、地面にて泣き咽ぶ康を前に言いあぐねる。
「なぁ康」
康の傍らに静かに膝をつく。
「お前のバイク、ちゃんと直すからな。心配すんな、武恒には内緒だ。来るときはちゃんと連絡しろよ!」
そして優しく語りかけ数回背中を撫でる。
「待ってるからな」
震える康の耳元に語りかけ、健二も愛車へと戻る。
そして振り返ることなくドライブインを後にした。
静まり返ったドライブイン。
ただ静かに、鈴虫が如き音色が悲しく響く……
#TTT2B #管楽十二鉄鋼楽団 #閲覧注意 #ブ○クラ味 #ア○トレイ○味 #写真はイメージです -
2020年06月04日
51グー!
山の中腹、放置されたドライブイン。
真夜中の山にブォンブォンとエキゾーストが響く。
集まる車もバイクも様々、中央に2人と2台のバイクが陣取り、その周囲をコロセウムのようにライダーやドライバー達が取り囲む。
沸き立つ外野、それとは裏腹に中央の2人は静かに互いを見つめていた。
「あんたが健二さんかい?」
無精ひげの男が健二に尋ねる。
「ああ、そうだ。ウチのベストは持ってきたか?」
「ああーーほらッ!」
健二の言葉を聞いて、これ見よがしに男がベストを掲げる。
「ちゃ~んと持ってきたぜぇ」
9/12が縫われたベストには、しっかりと靴痕が付いていた。
「んだコラッ!」「ぶっ○してやる!」「!!!」
管楽団のメンバーが次々といきり立つ!
「止めろ。モノは確認した」
健二はそれらを制し、眉をひそめて深く息を吐く。
「じゃ今度はそっちの番だ。とりあえず、背中。あんたぁ何番だい?」
「ーー俺は」
男の言葉に健二が背中を見せる。
「2番だ」
2/12の文字が周囲の車のライトに照らされ輝く。
ドッと外野が今まで以上に沸き立つ。
「おいおい、マジか! いきなりナンバー2かよ」「管楽団も大したことねぇの」「こりゃ今日で解散ちゃう!?」
その言葉を受け管楽団は、健二の言葉に従い相手方を睨み付ける。
最早、穴が空こうかという程の怨嗟の眼光だった。
「始めよう」
健二が愛車に火を入れる。ヴォンッと雄叫びをあげてCBR1000RR SC77がギラギラと相手を脅す。
「はんッ! 下品な音だ、本物の管楽器というものを教えたるわ!」
男も愛車に火を入れる。ドュルドュルドュルドュルとbimota DB8がLツインの荒々しい音色を奏でる。
「ゴールはここ。頂上まで上り、展望台をパスして帰ってくる。それで良いな!」
「ああ、それで頼む」
健二はヘルメットのシールドを閉じる。
「行きまーす。5、4、3」
管楽団の1人が両者の前に立ち、高々と手を上げてカウントダウンを読み上げる。
両車がブリッピングの激しいいななきを響かせる!
「2……1……」
現場のボルテージと回転数が最高潮に達する!
「0ッ!」
今勢いよく手が振り下ろされた!
ワ゛ァァァーン! オ゛ォォォーン!
マシンの金切り声、派手に地面を掻きむしって戦いが今、幕を開けた。
まず先行したのはDB8だった。
スペックで見ればDB8は1000ダボに比べ馬力は低い。
ーーだが。
「ここじゃ、こっちが強いのよ!」
健二の前でDB8がヒラヒラと車体を翻す。
峠において必要なのは加速力、トルクだ。
激しく上下する速度を素早く理想の域に到達させる力。
L2の大きいボアによる爆発力、直4では成し得ない力だ。
連続するカーブ、その度にDB8と1000ダボの間が開いていく。
「ハハハ! こっちはドカのパワーとホンダのジオメトリーのハイブリッド! 負けるわけあるかい!」
「………」
健二は静かに先行するDB8と連続していくカーブを睨みついていく。
緩いカーブ、そして300mほどのストレートに差し掛かる。
「ウオォォォ!」
8000まで回しDB8の暴れる車体をねじ伏せていく。
「ゥゥゥ」
健二と1000ダボがジリジリと近付いていく。
両車共に並び頂上までのストレートを上りきる!
そしてキャッツアイの連続するカーブを160キロ越えで共にパス!
「ダアァァァ!」「グゥゥゥ!」
跳ねる愛車を共に意地と気合いでカーブへとねじ込んでいく。
戦いも折り返し。
「ク○! びったり付いてきやがる!」
DB8のミラーをチカチカと1000ダボのライトが眩惑する。
「ボケが! でもそれ以上は回せんやろ!」
キツい下り坂、否が応にも速度が乗る。本来ならば馬力とハンドリングに勝る健二のターン、しかし。
「時間は夜中、そして俺がラインをバッチリ塞いどる! すぐそこにはガードレール、行けるもんなら行ってみぃ!」
先頭をキープし、上りと同じようにカーブを華麗にパスしていく。
回転数はきっかり8000から9000をキープ、完璧だ。男は自らのライディングに自惚れる。
しかしだからと言って慢心はせず、後ろを不気味に付いてくる健二に気を配る。
ーー何かがおかしい。
どこで仕掛けてくる?
次か? またその次か?
と、思案しているうちにキツいスプーンカーブに差し掛かる。
「まぁやれることをヤるだけじゃ!」
タイトブレーキ、そして頭を出口にーー
ヴアァァァァーンッ!
突如、健二の1000ダボが金切り声を上げる!
そして赤い残光を残し、対向車線に飛び出した!
「アッ?」
完全なオーバースピード。見事弾丸もかくやと言う速さでガードレールへと迫り、車体が踊る。
「バカが! 神風特攻とか流行らんわ!」
男はそのままカーブをパスし、スロットルをーー
「はあぁぁぁ!」
男は思わず声を上げる!
目の前、健二と1000ダボが派手にテールを滑らせて目の前に割り込んできた!
まるでモタードのようなパワースライド!
焼けたゴムの匂いがヘルメットごしに男の鼻を刺す。
「ハハハ! やるやんけ!」
お前は頭○字Dでもしとんか!
ましてこんな場所でカマすんかい!
「流石じゃのう!やっぱ雑魚とは違うわ!」
DB8のスロットルを捻り上げる!
より一層にエキゾーストが荒ぶる。
やっぱバイクってのは違うな!
車も良いがバイクとは比べ物にならん。
カーブやストレートの度に脳ミソがアドレナリンに溺れる、視界が真っ赤に染まるほどの興奮!
男のテンションが天井知らずに跳ね上がる。
戦いも後半に差し掛かる。
機械のような正確な健二のブロック。
抜こうにも刺せそうなのは、一か八かの危険なライン。
外せば500万クラスのマシンが一瞬で鉄屑と化す!
「おお!恐ッ!」
改めて健二のク○度胸に感嘆する。
ーーだが。
「もう後がない」
おそらく後3ヶ所! 男は肚を決める。
「行くしかないよな!」
カーブに向けて、乾坤一擲のスロットルガバ開け!
対向車線へと躍り出る。
ジリジリと迫るガードレール、間近に迫る落ち葉、滑り始めるリアタイヤ、DB8の頭が前へーー
「ーーああ無理!」
男はDB8を起こす。目の前の健二との差が大きく開く。
そして。
「っしゃ!」
健二が派手に1000ダボの前輪を跳ね上げゴールへとなだれ込む!
勝負は決した。
待ちかねていた管楽団のメンバーが健二を取り囲む!
「流石は健二さん!」「やベェやベェ」「ここからでも健二さんのテールスライド見えましたよ!」
健二を取り囲んでの狂喜乱舞。
健二はその中央で、静かに空を眺めていた。
「おい!」
DB8の男が健二に声を荒げる。
水をかけたように周囲が一瞬で静まりかえる。
「俺の完敗だ。言い訳は言わん、ほれ、これ返すわ」
そして件の管楽団のベストを差し出した。
健二が静かに男へと歩み寄る。
「ああ」
そしてベストを丁寧に受け取った。
再び管楽団が騒ぎ立てる。
「あんな簡単に返して良かったんですか!?」
男の仲間がベストを見ながら尋ねる。
「じゃお前行ってこいよ」
「……へ?」
「170キロ越えで、あの夜道を走ってこいや」
「……」
「ーーバカが。さぁ帰るぞ! 負け犬は退散退散」
男が仲間を捲し立てる。
けたたましい音を立てて次々とバイクと車が出ていく。
「おーい」
出ていく間際、男は再び健二へと大きく声を飛ばす!
「健二とか言ったか!? また走ろうの! じゃあの!」
健二の返事も待たず、男は出ていく。
ーーヴィンヴィン!
短い低音の調べが2度、ドライブインより奏でられた。
#TTT2B #管楽十二鉄鋼楽団 #(〃´o`)=3 -
2020年06月04日
45グー!
TTT2B
某県某整備工場
「助けて下さい健二さん!」
情けない声と共に男が1人、工場に壊れたバイクを引きずりやって来た。
「どうした康、 コケたか?」
健二はジャッキアップしていた車から視線を移し尋ねる。
男、康のバイクは大型のSS。
両方が無惨にも傷だらけになっていた。
「まあ座れよ」
健二に促され康が近くにあったパイプ椅子に腰かける。
ボロボロのバイクをドーリーに載せ奥へと運ぶ。
外装は左右共にグシャグシャ、ハンドルはひん曲がり、そしてクラッチカバーは割れてオイル漏れ。
ガソリンが漏れてないことが奇跡なくらいだった。
オーバースピードでの派手な外装慣らし、大方バトルに負けたのだろう。
「これあと頼む」
近くの後輩に車を託し、康のもとへと向かう。
「でどうした?」
「………」
「負けたんだろ?」
「……はい」
やっぱりな。健二の予想は当たった。
「峠流してたんですが、後ろから煽られましてね」
「なるほど。相手はバイクか?」
健二の問いに康が首を横に振る。
「車です。で本気になって突き放そうとしたんですが……べらぼうに速くてダメで」
「車種は?」
「セブンです。RX-7のFD、マルボロカラー。たぶんロケバニのーー」
「で?」
健二は康の言葉を遮り問う。
ーー俺にそれを聞いてどうしろと?
視線で康に尋ねる。康は一度、目を伏せ、そして意を決して口を開く。
「俺の代わりに走ってもらえませんか?」
「帰れ」
健二は冷たく良い放つ。
「お前の不始末だろ? 手前でやれろ」
健二は言ってボロボロのバイクを見る。
「綺麗にとは言わんが、走れるようにはしてやる」
「………」
「お前も管楽団だろ? ガキの喧嘩じゃ無いんだ。しっかりしろよ」
健二がコーヒーを淹れ、康に差し出す。
「まぁ1週間もすれば直せるだろう。金はお前のその怪我に免じて言わんわ。自分の体治しな、病院行ってないんだろ?」
健二は優しく康に語りかけ、車へと戻ろうとする。
「ダメなんです」
しかし康はそれを否定した。
健二は顔をしかめて康へと視線を戻す。
「おいおい、お前の……」
そこで健二はあることに気付く。
「おい康」
健二の言葉に康が体を強張らせる。
「お前、管楽団(うち)のベストどこやった?」
康は着ているジャケットにソレは無かった。
「………」
「おい答えろ」
「奪われました」
康が消え入るような声で答える。
「なにやってんだよぉ」
健二は託していた仕事を完全に後輩に任せて康の話を聞くことにした。
「で? お前はオメオメと負けた上にウチのベストまで奪われたと」
「はい」
「それで、恥を偲んで取り返して欲しくて俺に泣きついたと」
「はい」
康が縮こまる。
「ハァ~」
健二は大きな溜め息をつく。
「健二さんの車を出してもらえませんか?」
「勘弁しろよ。俺の愛車、ジムニーやぞ」
ジムニーで、恐らくフルチューンであろうFDに勝てって?
健二の言葉に康は目を伏せる。
「……」
しかし、どうする?
ベストを奪われたとなるとチンタラしてられない。
かといって武恒には頼めないし……
いや頼むしかないのか?
いやう~む。
「健二さんのバイク出してやれば良いじゃないスか」
車を任せていた後輩が助言を飛ばす。
「ふざけんな。こんなことで俺の1000ダボ出せるかよ、それこそ……」
それこそ……。
「社長頼みますよ。そんな話せんと、はよ仕事してもらわんと会社潰れますよぉ?」
「っぷ!」
後輩の言葉に、奥で旋盤を弄っていた後輩2号が吹き出す。
「ーー分かった」
健二の言葉に康の顔が緩む。
「おい康」
「は、はい!」
康は緩んでいた顔を引き締める。
「お前、俺が1000ダボ出すが良いんだな?」
「? は、はい。お願いします
」
康はオズオズと頷く。
「ーー分かった。」
健二は苦虫を噛み潰したように、もう一度その言葉を出した。
「康、向こうと渡りを着けろ」
「は、はい!ありがとうございます」
康は深々と頭を下げる。そしてスマホを取り出して話し始める。
「あの、向こうもバイク出すって言ってます」
「ありがとうとでも言っとけ」
「で、お前、、、じゃなかった。健二さんの管楽団でのナンバーを教えろって……」
「今は言えん。当日待ってろって伝えろ」
「は、はい。分かりました……」
康が頷き、時たまに憤る。
ややあってスマホでの会話が終了する。
「明日の夜だそうです」
「おう」
「時間は23時、場所は俺が負けた峠でーーその」
康が口ごもる。
「しっかりベストを着てこいと……」
「分かった。じゃお前もう帰れ、俺は仕事に戻る」
健二が踵を返して仕事へと戻る。
「ありがとうございます!」
康はそれを見送り、何度も頭を下げた。
「なんか口出ししてすいません」
後輩は横でミッションを降ろす健二に謝罪を述べる。
「あぁ、ん。まぁしょうがねぇよ」
健二は視線を動かず答える。
「俺、管楽団入ってませんけど。なんか、あの兄ちゃんが可哀想に見えちゃって」
「お前は優しいなぁ」ッと!
健二が降ろしたミッションをキャスターにゆっくりと載せる。
「いやいや、健二さんほどじゃないですよ」
「お前、管楽団に入らないか?」
「え? う~ん。止めときます」
後輩はしばし悩み答えた。
「そうか。じゃとりあえず休憩にするか!お~い、休憩~!」
健二は作業着を脱いで、台の上の財布より数枚の紙幣を取り出す。
「すまんけどアイスでも買うて来てくれ」
そして後輩に紙幣を手渡した。
「了解です。お~い、買い物行くぞ~」
「やった! ハーゲン○ッツ買ぉぅ」
「俺はレ○ィボーデン!」
後輩達が顔をホクホクさせコンビニへと出ていく。
「……」
健二はそれを見届け、康のボロボロになったバイクへと視線を移す。
頭に浮かぶのはソレを元気に駆る康の姿。
昔日の仲間内でのツーリング、都合12人での血液が沸騰するような楽しいーー楽しかった思い出。
バイクに近付き、そっと凹んだタンクを撫でる。
「心配すんな。また走れるようにはしてやるよ」
やるしかないな。
健二はそう思い、壁に掛けていた自分のベストを見る。
管楽十二鉄鋼楽団、螺旋状に描かれた十二の管楽器、そして2/12の数字が然りと縫い込まれていた。
「え~っと管楽十二鉄鋼楽団は~」
俺はバイク板などを見て、それについて調べる。
通称、管楽団。12人からなる某県を拠点に走り回る過激派のバイクチーム。主に高回転、高い速度域でのライディングを目的としており、それを妨げる場合には一般人であろうと容赦せず排除しようとするーー
「恐ッ!」
俺は思わず声を漏らす。思ったよりもヤバい集団だった。
俺やDR-Zが無事に帰れたのはマジ幸運だったんだなぁ~。
「ん? どうした鋭助。サボるのは良いが、ちゃんと仕事しろよ」
傍らの先輩、幹孝さんがそんな俺を見かねて、声をかける。
「いや、ちょっと。この前絡まれた奴らについて調べてまして」
「いや、そういうのは休憩中にしろよ……」
幹孝さんがひきつった笑いを浮かべ、俺のスマホを見てくる。
「え~、なになに? はぇ~、まだこんなん居るんだねぇ」
「はい。俺もビックリしました」
「俺の代でも、居たけど……元気な奴らって変わんないね~」
「幹孝さんも昔、バイク乗ってらしたんですっけ?」
「うん。もう何十年も前、昔やってたバンドの仲間達とね。懐かしいな~」
幹孝さんが遠くを眺めるように目を細める。
「って、違う違う。なに? 鋭助そのチーム入んの?」
「んな訳ありませんよ。ただ、ちょっと気になっただけです」
俺はスマホをポケットへと戻し、目の前のデスクワークへと戻る。
「すいません。サボったぶん頑張りま~す」
俺はカタカタとキーボードを打つ。
「まぁ気を付けてね。なんか有ったら言うんだよ」
幹孝さんも仕事へと戻る。
俺はふと、思いだしスマホを取り出し文字を入力する。
ーーいや、また今度にしよう。
今は仕事だ仕事仕事!
俺はスマホを机の隅に伏せて仕事へと戻る。
~~~~
伏せたスマホに文字が映る。
疾四踏会。管楽団と同じように某県を拠点に走り回るバイクチーム。主に長距離を走破することを目的としており、記録を見るに日に500キロを走ることも珍しくない。人数などは不明、一説によると管楽団に所属していたライダー達が脱退し新たに作られたチームとのこと。それとの関連性は不明であるが、メンバーの多くが管楽団を強く憎んでいる。
⚠️長かったんで一旦切りま~す(´ε`;)ゞ
#TTT2B #色々書きすぎました #管楽十二鉄鋼楽団 #疾四踏会 -
2020年06月01日
62グー!
TTT2B
「鋭助君、管楽団て知ってる?」
七瀬さんがラーメンをすすり、箸を俺に向けながら喋る。
「え、管楽団? なんすかそれ、合唱団でも来るんですか?」
俺は箸で掴んでいた麺をラーメンのスープに戻し、話を聞く。
「管楽十二鉄鋼楽団。君を今日追いかけ回してた連中のチームだよ」
「……ああ」ーーなるほど。
話の流れを理解し、再び麺を口に運ぶ。
俺はあの後、七瀬さんとラーメンへと来ていた。
七瀬さんとR1-Zのケツを眺め……追っかけて、たどり着いた美味いというラーメン屋。
七瀬さんおすすめのお店。
なるほど、確かに美味しい。
味的に言えば一○堂に近いなぁ。
「鋭助君、まだこの町に来て浅いんだっけ?」
「んむ! ええ。3ヶ月くらいです」
ラーメンにむせながら答える。
「あいつらは……ん~、何て言うのかな~、ストリートギャングって言うか……」
「ヘルズ・エンジェルスみたいな感じですか?」
「そう!それ!」
七瀬さんが俺にビシッと箸を向ける!
跳ねた飛沫を紙一重で避ける。
「あいつらが、ここら辺仕切ってんの。もぅー、バリバリブンブン五月蝿いったらありゃしない」
「なるほど」
ラーメンとチャーハンを交互に頬張る。
なるほど、俺は彼らに対して生意気したわけだ。
俺からすれば只のスタートダッシュだったが、彼らからすれば、ソレが我慢ならなかった訳ね。
……しかし、ここのチャーハン美味ぇな。パラパラだ!
「しばらくは、ここら辺走らない方が良いかもね~」
「ええ……」それは困る。
こちとらサラリーマン、明日も明後日も仕事が有るのだ。
そんなチンピラにビビってられるか!
「この前の環状線での事故知ってる?」
「あぁ、あのNSXとバイクが絡む事故だったかの」
「あれ、管楽団がNSXのドライバーに絡んで起こしたヤツなの」
「ええ…やっばぁ」
ラーメンのテラテラとしたスープ。燃える愛車、油を伝って炎上する情景が浮かぶ。
あいつらは相当お冠だった。そして、それらに俺は逃げたことで更なるガソリンを投下してしまった。
「あ、でも」
七瀬さんが思い付いたように声を出し。
「鋭助君、大丈夫かもしれないよ」
グッと両手で握りこぶしを作った。
「?」
「この町にはね。もう1つ、チームが有るの」
「……ええェ」
俺は思わず顔をしかめる。
一体どうなってんだこの町は!
警察はどうした!
どこの世紀末だ、あれか? ここが俗に言う修羅の国ってヤツなのか?
「ーー鋭助君、今めっちゃ面白いこと考えてるでしょ?」
七瀬さんが意地悪そうに口をつり上げる。
言ってみ? ほら、言ってみ?
そんな言葉が目より訴えられる。
「……ここはどこの世紀末だよってーー」
俺の言葉、その直後に七瀬さんは文字通り噴飯した。
「……で? そのもう1つのチームってのは何て言うんですか?」
俺は顔を紙ナプキンで拭い、七瀬さんに尋ねる。
「疾四踏会」……ごめん。
七瀬さんがバツが悪そうに答える。
ししとう? 俺の頭に緑色のアレが思い浮かぶ。
「疾四踏会! 」
七瀬さんが紙ナプキンにボールペンで文字を書く。
「でね? 管楽団、そして疾四踏会。この2つが居て、ずっと喧嘩してるの」
「…はぁ」
「で、この2つのチームはお互いが邪魔なだけで、他の一般ライダーはどうでも良いんだよ」
「……はぁ」
「も~う。分かんないかなぁ……」
七瀬さんがテーブル真ん中に置いていた餃子をパクパクと食べる。
「君がーー」
ヴォーーーン!
窓より吹け上がるような音が聞こえた。
ヴォンヴォンヴォンヴォンッ!
そして連なるエキゾースト、幾つものヘッドライトの光がラーメン屋に差し込む。
思わず店の外を見る。
「!」
背筋が凍る。
いかついバイクの集団、そして黒塗りのヤバそうな車ーー
「七瀬さん帰ろう!」
「え、ああーーうん」
七瀬さんも状況を察し、手早く帰り支度を整える。
「すんませーん。4人ね~」
そうこうしてる間に4人が店に入ってくる。
ーーあ。やべッ! 目が合った。
「……ども」
引きつった愛想笑いを浮かべ、会計へと向かう。
テンパりながら会計。気怠げな店員が伝票を打つ。
早く……早く……早く!
「兄ちゃん」
4人の中の1人が俺を呼ぶ。
背中にスープのようなドロッとした汗が伝う。
「、、、はい」
油の切れたブリキのように振り返る。
「騒いですまんの。でも、焦ったら危ないで。気ぃつけてな」
熊のようなライダーが手でヤエーを示す。
「ーーですね。そちらも良いバイクライフをぉ……」
何度も会釈して俺は店を後にした。
「今日はすいませんでした」
俺はファ○マの駐車場で七瀬さんに頭を下げる。
「え!え!? なんで鋭助君が頭下げるのッ?」
七瀬さんがオロオロし、俺の頭を上げさせようとする。
情けない話だ。
管楽団から逃げ、初対面の女性に甲斐甲斐しく世話をやいてもらい、あまつさえビビってさらに逃げる。
これほどの臆病者が有ろうか?
考えれば俺の人生は逃げてばかりだ。
旅とは名ばかりの逃避行。
ほら、見てみろよ。
負け犬を前にして、七瀬さんも呆れて黙っちまってる。
目頭が熱くなり、反射的に頭を上げる!
ーーが。
「がッ!」「びッ!」
俺の後頭部が七瀬さんのアゴに、七瀬のアゴが俺の後頭部にクリーンヒットする。
「「んむぅ~~ッ!」」
お互い悶絶。
あぁ~!なんて、なんて、なんて!
「、、、アハハ」「、、、フフフ」
「「ハーハッハッハッ!」」
お互い爆発するように笑う。笑いすぎて涙が出た。
しばしの間、笑いに笑う!
「ハハハ……はぁ」
笑いすぎて腹筋が痛い。
「ほれ、お兄さん」
七瀬さんが俺に何かを投げつけてくる。
お手玉のようにキャッチ、冷たいカフェオレだった。
「おつかれさん」
「ホントですよ。あ、ごちそうさまです」
お互い愛車にもたれて、冷たいカフェオレを体に流し込む。
あ、そうだ。ふと思い立つ。
「七瀬さん」
俺はスマホを取り出しながら、七瀬さんを呼ぶ。
「ラ○ン交換しません?」
「え?ナンパ?」
七瀬さんがわざとらしく体をくねらせる。
「違いま……」違わないな。
恥ずかしさから額をポリポリとかく。
「また走りましょう、せっかく知り合えたしぃ」
モニョモニョ……
「え? 鋭助君ボッチなん?」
あぁ、もうこの人はいちいち五月蝿いなぁもう!
「そうです!そうなんです!だから、この哀れなボッチに友情を下さい、七瀬おねえさん!」
俺は自分のQRコードを印籠のように堂々と向ける。
「んン~。そこまで言うならしょうがないなぁ~」
七瀬さんも印籠のようにスマホを向ける。
ややあって、痛いアニメアイコンが送られてくる。
「どうだボッチ君」
「はい、ありがとうございます。お姉さま」
俺はゾンビ映画のアイコンを飛ばす。
ふとスマホの時計が目に入る。
気付けば23時を回ろうとしていた。
まずい! これ以上は流石にヤバイ。
「そろそろ帰りましょう」
七瀬さんに提案する。
「あぁ、流石にヤバイね」
七瀬さんも時間に気付き顔を引きつらせた。
「送りますよ」
俺はカフェオレをゴミ箱に捨て、ヘルメットを被る。
「こら! 初対面で自宅とか厚かましいぞ」
七瀬さんがやんわりと断る。
……いや、やんわりでは無いな。
「でも、、、」
「女子高生じゃあるまし、心配ないって」
七瀬さんが行け!行け! とジェスチャー。
「分かりました。じゃマジで気ぃ付けて!」
DR-Zに跨がり火を入れる。
道路に向けて切り返し、七瀬さんに振り返る。
「バイバイ~」「~!」
見送る七瀬に手を振り、そして。
ブォーン!
再びスタートダッシュをかまし、道路へと躍り出る!
ミラーを見る。
「コラァ~!」
声を上げ跳び跳ねる七瀬さんが見えた。
ーー鋭助が立ち去って。
ヴォンヴォンヴォンヴォンッ!
先ほどのライダーと車が七瀬の周囲に停まる。
「お疲れさまです、姐さん」
そして全員が七瀬へと近づき、頭を下げた。
「ん」
七瀬は短く答え、タバコに火を付ける。
「すぅ……ハァ~」
R1-Zのシートに座り、空に紫煙を吐く。
「車で吸いますか?」
「いや、いい。ベントレーにヤニが付けたくない」
七瀬が言葉を言い終える前に、サッとライダーが携帯灰皿を手に持って近付く。
「ありがと」
全員、なにも言わずタバコを静かに吹かす。
「あいつどうするんです?」
「ん~。まだ何とも……ぃッ!」
七瀬はアゴを抑え、顔を歪ませる。
「「「姐さん!」」」
ライダー達が声を荒げる。
「大丈夫、大丈夫。てか、その呼び方止めてくんない? 私ぁ極道の妻か!」
七瀬の言葉にドッと笑いが起こる。
「ックシュン!」
七瀬がくしゃみをし、鼻をすする。
ドライバーが急いで車の助手席よりジャケットを取り出し、七瀬の肩にかける。
「ん、ありがと」
七瀬の肩にかかったジャケット。
疾四踏会
その文字と共に、月に吼えるが如く天を仰ぐ四つ首の狼が描かれていた。
「じゃ帰るぞ!野郎共!」
七瀬がR1-Zを声高らかに始動させる!
「押忍!」
野太い声、重低音の地響くようなエキゾーストが次々に上がる。
夜が更けていく。
町の所々で赤い残光が光る。
遠くサイレンが鳴る。
今日もライダーは変わらず。
バイクは高らかに雄叫びを上げる。
#TTT2B #管楽十二鉄鋼楽団 #疾四踏会 #おサボり -
2020年05月29日
63グー!
TTT2B
「ガァーッ!く○ッたれがッ!」
俺はヘルメットの中、思いのままに毒づく。
走っても走ってもキリがない!
沸騰しそうな頭、左右に高速で流れていく風景、そしてーー
ブォンブォンブォンブォン!
後方より、幾つものコールが俺を威嚇する。
ミラーを一瞥。
ヘッドライトをパッシングさせ、5台のバイクが俺に世界共通の友好サインを出していた。
なんでこんなことにッ?
決まってる。
「おいッ コラ!てめぇ調子くれて逃げてんじゃねぇぞッ!」
「人の真ん前でカマしおって、逃がすかボケェッ!」
間近に迫ったライダー達が怒号を飛ばす!
……ああ。誰か助けて下さい。
約30分前。
20代も半ばを過ぎた頃。フリーターとして、このまま流されて生きていくのかと人生を悲観してしまい、旅に出ることにした。
相棒はDR-Z400SM。
大学時代に悪い先輩から二束三文で買ったモタード。
働き始めてからは公私共にこき使った過激で楽しい最高のバイク。
九州を周った、中国地方を横断した。
だが、そうこうしている間に貯金も尽きて、また働こうかと思って、この町に住み着いた。
つつがなく働き、再びの旅の日に想いを馳せる。
そんなある日。
俺は仕事終わりの帰宅ラッシュにハマり、スルスルと間を縫ってすり抜けて前へと出る。
「しゃ行くぜぇ!」
そして青信号と同時にスタートダッシュをかました。
一気に前へと躍り出て、仕事のストレスを吹き飛ばす。
「気持ちぃぃ~」
ーーが。
ヴォーーン! ブァンブァンブァンブァン!
通過する交差点の左より、凄まじい爆音が響く!
思わず音の方へと振り返る。
信号を無視し、左よりヘッドライトをギラつかせたバイク達がこちらに走ってきていた。
状況を瞬時に理解。
「やべぇ、やらかした」
最寄りの路地へと逃げ込む。
モタードの軽さにモノを言わせて、狭い路地を曲がっていく。
しかし。
「うぉッ、マジかよ」
ネイキッドも加速力とハードブレーキを駆使し、俺に追いすがる。
プロジェクターヘッドライトの眩い光がミラーに反射する。
アクセルを開けて、前へ前へと進む。
「やべぇ、ただの族じゃねぇ!ありゃガチだ!」
こりゃ路地なんかより、むしろバイパスとか速度が乗ってる方が急ブレーキで撒けるか?
再び大通りへと出る。
幸いにも交通量はまばら。
一気に車線変更し、バイパスへのジャンクションへ合流。
これで撒ければ良いのだが……
一分の希望にすがり、後ろを確認。
「ですよねー」
続々とバイクが連なっていた。
そして今に至る。
「参った、もはや涙が出てきたぞ」
シングル高回転の振動に手が痺れる。
俺が一体何をしたッ!?
ちょっとスタートダッシュしただけじゃねぇか!
走っている車の間を意地と根性で縫っていく。
後ろを一瞥。
ダメだ、がっちり付いてきてやがる……
見たところ全部ミドルクラス。
スペック的には俺のDR-Zと変わらんか。
「ああー!もう!」
ちくしょうちくしょうちくしょう!
沸騰した頭、視界にジャンクションとの分岐が映った。
俺はスロットルを捻りに捻る。
バイク達が至近距離に近付く、、、
そして。
「ッくぅ!」
ジャンクションを前にして急ブレーキ!
「うお!」「っマジか!」「ッ!」
ライダー達が一気に前へと吹っ飛んでいく!
良かった。運良く?俺を見事に避けてくれた。
そのままジャンクションを通り下道へと逃げ込む。
下道への下り坂、雄叫びのようにエキゾーストがバイパスの彼方より聞こえた。
「ーーああぁ! しんどーッ!」
信号待ちに合流、ドッと疲れが押し寄せタンクに寝そべる。
マジ疲れた、いやマジでもう無理。
もうヘトヘト、喉が干からびそうだ。
「とりあえずコンビニ……」
キャンッ!
「あ」
視界が傾く。そしてそのまま地面に。
ガチャンッ!「痛って!」
立ちごけした。
ノロノロとDR-Zを起こし、街路樹の脇に愛車共々座り込む。
「ーーハァ」
走っていく車を眺めて、自分の足元を見る。
小刻みに足が震えていた。
頭が働かない、疲れ果てて木に背中をあずける。
「おつかれさん」
言葉と共に頬に電撃が走る!
「ひょわあぁぁ!」
思わず奇声を上げる。
なに?なに?なに?今度はなにッ?
急いで周りを確認する。
「おぉ~、なんだ元気じゃん」
手にア○エリアスを持って、女性ライダーが立っていた。
「ナイスファイトだったね~」
「ども」
「まさか連中を撒くとわね」
「ええ、まぁ。……見てたんです」
ーーか? 女性ライダーの顔を見て言葉に詰まる。
右頬から首にかけて、色鮮やかなタトゥーが入っていた。
「あ、やっぱ恐い?」
女性ライダーが、そんな顔で無邪気にはにかみ、ア○エリアスを差し出す。
「ビビりました。でも綺麗ですね、もしかして美術家さんですか?」
ありがたくア○エリアスを受け取り、一気に飲み干す。
「芸術家ッ! お兄さん面白すぎ~!」
芸術家の女性ライダーさんが爆笑する。
「私、七瀬。お兄さんは?」
女性ライダー、七瀬さんがクックッと笑いながら俺に名前を尋ねる。
「……鋭助です。ありがとう七瀬さん、とりあえず晩飯食べ行きません?」
もう俺、腹ペコで、、、
ふと、七瀬さんの後ろを見る。
「あ♪ 見つかっちゃた」
七瀬さんが照れ臭そうに、横にずれる。
真っ黒なR1-Zが停まっていた。
「あ、そうだ! この近くに美味しいラーメン屋さん有るんですよ。そこまで競争しませんか!」
七瀬さんが手を叩き、にこやかに提案。
「ーー嫌です」
もうマジ勘弁で。
#TTT2B #ふぃくしょん #(〃´o`)=3
-
2020年05月23日
49グー!
TTT2B
某県某日深夜の環状道路
その日、坂木昌也は久しぶりのドライブに胸を踊らせていた。
駆るのはNSX na1。
巡航速度は180キロオーバー、背中より響くV-TECサウンドと、前へ前へと車体を押し流すトラクションに息も忘れ、ステアリングにしがみつく。
周囲のタラタラ走る車の間を縫っていく。
シフトを4から3へ。
「くぅーー」
前につんのめるようなエンブレ、そして跳ね上がるタコメーターと絶叫するエンジンに臆することなくアクセルを踏み込む!
まるで飛んでいるかのような最高のドライビング。
NSXは良い……。ホンダの物作りに対するスピリット、そして揺るがないソウルを感じる。
FFも良い、FRも良い。
しかしMRはもっと良い。
つまりNSXは最高。
周囲の車が居なくなる。
目の前に数キロにも及ぶロングストレートが広がった。
「さぁ、度胸試しだ」
一気にアクセルを踏む。
160ー18-ー200ー-20ー240
昌也のテンションも一気に上がって……
しかし。
「あ?」
ふとルームミラーがまばゆく光った、そして。
「ッ!!」
周囲を目にも止まらぬ速さで何かが複数通過していった。
瞬く間に前方が赤い残光に染まる。
そして前方の遥か彼方へと消えていった。
「………」
呆気にとられ、思わずアクセルが緩む。
「ーー今日は、もう上がろう」
昌也はそう思い、最寄りのSAへと入ることにした。
SAに入ると、数人のドライバーやライダーに声をかけられた。
皆が にこやかにNSXについて喋りかけてくる。
「ええ、はい、そうですね」
適当に相づちを打ち、話を合わせる。
「………はぁ」
あらかた喋ったところで、昌也は缶コーヒー片手にベンチに座り込む。
すっかり気持ちが冷えてしまった。
胸に思うのは、先ほどの赤い残光。
「結構踏んでたんだけどなぁ~」
まだまだ未熟だということを思い知らされた。
苦いコーヒーをチビチビと飲む。
「ん?」
昌也の目に、喫煙スペースのベンチで背中を丸めて煙草を吹かすライダーが止まる。
ライダーに有りがちな武骨な格好、見たところ歳は昌也と変わらないと見える。
30前後といったところか……
柔和な笑みを浮かべ、駐輪スペースのライダーを見つめる彼。
彼の視線に倣って、駐輪スペースを見る。
仲間であろうか? 何人かのライダーがワチャワチャと語り合っていた。
キュルルッーー
バァン!ドォンッ!
けたたましい爆音がバイク達から発せられる!
昌也は思わず顔をしかめた。
ドュルンドュルンドゥルンドゥルンーー
そしてSAの窓が震えるほどの重い重い低音が轟く。
見事なまでの直管サウンド。
俺も人の事は言えないが、、、
「あれは酷い」
もはや、ただの騒音。いや、音の暴力ではないか、、、
昌也は踵を返し、足早に愛車へと戻る。
そして素早くE/G ON、急いでSAを後にする。
「気分が悪い」
少しでも早く、この場所から離れたかった。
窓越しに、騒ぐライダー達を一瞥。
俺もアレと同じに見えるんだろうなぁ……
「っは!」
思わず昌也の口より渇いた笑いが漏れた。
SAよりNSXが静かに去っていく。
「あれ? 何かNSX出ていっちゃいましたよ?」
「びびっちゃったンすかね~」
屯していたライダー達が、座る男に話しかける。
「さてなぁ」
「でも、先行してた組がぶち抜いたトロい車ってアレですよね」
「だろうなぁ」
「俺達もぶち抜いて良いッスかね~」
ライダーの1人が指示を仰ぐように男を見る。
見ればライダーの瞳の奥にドス黒い何かが燃えていた。
「好きにしな」
男はそう言って、気だるげに手を前後に、まるで追い払うように振る。
「よっしゃ!」
男の言葉を聞いて、我先にと屯していたライダー達が暴音を立ててSAから躍り出ていく。
「おいおい。良かったのか?」
残っていた恰幅の良い男が、先の座っていた男に尋ねる。
「あん? あぁ、良かったんじゃねぇの?」
「ーーあのドライバー、事故んぞ?」
「じゃ、お前止めれば良かったじゃねぇか。それか今から追い付いて止めてこいよ。正義感の健二さんよぉ~」
言って、座っていた男が立ち上がり体を伸ばす。
「武恒……」
恰幅の良い男、健二が苦々しく呟く。
「ま、あいつらも退屈してたし? 俺としては元気な遊び相手が見つかって良かったと思ってるよ」
男、武恒が立ち眩みに顔をしかめがら喋る。
「……」
健二が物言いたげに睨む
「分かった。分かったよ健二。はいはい了解了解。」
今行きますよーー
遠く彼方よりスキール音が響く……
次いで幾度ものエキゾーストが鬨を報せるように上がった。
「あ~あ」
そう言って、武恒は愛車のシートに乗せていたデニムベストをジャケットの上に羽織る。
管楽十二鉄鋼楽団
ベストには、その名前と共に螺旋状に管楽器が描かれていた。
「リーダーってのは大変だなぁ」
ヘルメットを被りながら、武恒はしみじみ思った。
目の前の車線をサイレンと共にパトカーと救急車、消防車が走り去っていく。
「おお。豪華だねぇ」
顎ひもを絞めながら空を見る。
明るく照らされた空
遮るように濛々と黒煙が昇り始めていた。
#TTT2B #管楽十二鉄鋼楽団 #気が向いたら続き書きます -
2020年05月20日
73グー!
TTT2B
思えばZZRに乗るのは数週間ぶりだった。
グズる愛車、弱々しく回るセルを馴れた手管を駆使し叩き起こす。
ボンッ!!
と復活の雄叫びを上げ、愛車が荒々しくアイドリングのリズムを刻み始める。
ヘルメット越しに仄かなガソリン臭が俺の鼻を突く。
嗅ぎ馴れた匂いに思わず顔がにやけた。
少しばかりの暖気の後、ゆらりと出発する。
フルエキのチタン管から太く低音を響かせながらZZRの調子を見る。
気持ち吹けが悪い気がする。
まだ寝ぼけているだろうか……
一抹の不安を覚えながらも、国道までの道を走っていく。
長い信号待ち。
うんざりしながら国道に合流。
二車線の追い越し車線へ向けて、一気にアクセルを回す!!
溜まっていた澱を弾き飛ばすようにタコメーターの針が踊る。
しかし。
どこかZZRの挙動に違和感を覚えた。
まるで、車体が空中分解するかのような不安。
大人しく前方車両についていく。
う~む。どうにも今日は調子が悪いらしい。
とりあえず軽く流したら帰ろう。
ふと空を見上げる。
見れば分厚い雲が空を覆い、今にも雨が降らんとしていた。
馴染みの海辺で黄昏れる。
しかし眺める海は薄暗く、僅かに雲の間より差す光が照らすばかり。
それを頭を空っぽにして眺める。
灰色の空と海、そして何とも噛み合わぬZZRと俺。
ーーおっと。
気付けば、すっかり日も落ちてしまっていた。
帰るか。
夕闇の中を、回転数高めに引っ張りながら家路を急ぐ。
……む?
何故か分からないが、気持ちよく走れた。
俺の思ったようにZZRが動く。
ZZRと今更ながらシンクロする。
ふむ。もう少しだけ走ってみるか。
真っ暗なワインディングを軽やかに走っていく。
回転数8000オーバー、官能的なエキゾースト。
ようやっとZZRも調子が出てきたらしい。
そして150キロほど走って、ようやく俺もZZRの乗り方を思い出す。
思えば最近は、ずっともう片方の大型に乗っていた。
大排気量の暴力的な加速と生半可ではないスペックに、すっかり毒されていたらしい。
我ながら自分の単細胞さに驚かされる。
なにはともあれ、だ。
ひとまずはZZRとの蜜月に酔いしれる。
ZZRが手足のように、俺の思うがままに右へ左へ重たい車体をひるがえす。
そしてZZRを通して俺は路面や諸々の全てを知る。
ようやっと、ここまで取り戻すことが出来た。
スロットルを開ける!
タコメーターの踊る針と共に、車体にしっかりとしがみつく。
回転数は10000を越えて
久方振りに(この世界)へと
俺は足を踏み入れる……
ブリトー美味えぇぇ~(^q^)
#ZZR400 #TTT2B #管楽十二鉄鋼楽団 #カスタムキャスト