気が向いたら続き書きますの投稿検索結果合計:1枚
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気が向いたら続き書きますの投稿一覧
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2020年05月23日
49グー!
TTT2B
某県某日深夜の環状道路
その日、坂木昌也は久しぶりのドライブに胸を踊らせていた。
駆るのはNSX na1。
巡航速度は180キロオーバー、背中より響くV-TECサウンドと、前へ前へと車体を押し流すトラクションに息も忘れ、ステアリングにしがみつく。
周囲のタラタラ走る車の間を縫っていく。
シフトを4から3へ。
「くぅーー」
前につんのめるようなエンブレ、そして跳ね上がるタコメーターと絶叫するエンジンに臆することなくアクセルを踏み込む!
まるで飛んでいるかのような最高のドライビング。
NSXは良い……。ホンダの物作りに対するスピリット、そして揺るがないソウルを感じる。
FFも良い、FRも良い。
しかしMRはもっと良い。
つまりNSXは最高。
周囲の車が居なくなる。
目の前に数キロにも及ぶロングストレートが広がった。
「さぁ、度胸試しだ」
一気にアクセルを踏む。
160ー18-ー200ー-20ー240
昌也のテンションも一気に上がって……
しかし。
「あ?」
ふとルームミラーがまばゆく光った、そして。
「ッ!!」
周囲を目にも止まらぬ速さで何かが複数通過していった。
瞬く間に前方が赤い残光に染まる。
そして前方の遥か彼方へと消えていった。
「………」
呆気にとられ、思わずアクセルが緩む。
「ーー今日は、もう上がろう」
昌也はそう思い、最寄りのSAへと入ることにした。
SAに入ると、数人のドライバーやライダーに声をかけられた。
皆が にこやかにNSXについて喋りかけてくる。
「ええ、はい、そうですね」
適当に相づちを打ち、話を合わせる。
「………はぁ」
あらかた喋ったところで、昌也は缶コーヒー片手にベンチに座り込む。
すっかり気持ちが冷えてしまった。
胸に思うのは、先ほどの赤い残光。
「結構踏んでたんだけどなぁ~」
まだまだ未熟だということを思い知らされた。
苦いコーヒーをチビチビと飲む。
「ん?」
昌也の目に、喫煙スペースのベンチで背中を丸めて煙草を吹かすライダーが止まる。
ライダーに有りがちな武骨な格好、見たところ歳は昌也と変わらないと見える。
30前後といったところか……
柔和な笑みを浮かべ、駐輪スペースのライダーを見つめる彼。
彼の視線に倣って、駐輪スペースを見る。
仲間であろうか? 何人かのライダーがワチャワチャと語り合っていた。
キュルルッーー
バァン!ドォンッ!
けたたましい爆音がバイク達から発せられる!
昌也は思わず顔をしかめた。
ドュルンドュルンドゥルンドゥルンーー
そしてSAの窓が震えるほどの重い重い低音が轟く。
見事なまでの直管サウンド。
俺も人の事は言えないが、、、
「あれは酷い」
もはや、ただの騒音。いや、音の暴力ではないか、、、
昌也は踵を返し、足早に愛車へと戻る。
そして素早くE/G ON、急いでSAを後にする。
「気分が悪い」
少しでも早く、この場所から離れたかった。
窓越しに、騒ぐライダー達を一瞥。
俺もアレと同じに見えるんだろうなぁ……
「っは!」
思わず昌也の口より渇いた笑いが漏れた。
SAよりNSXが静かに去っていく。
「あれ? 何かNSX出ていっちゃいましたよ?」
「びびっちゃったンすかね~」
屯していたライダー達が、座る男に話しかける。
「さてなぁ」
「でも、先行してた組がぶち抜いたトロい車ってアレですよね」
「だろうなぁ」
「俺達もぶち抜いて良いッスかね~」
ライダーの1人が指示を仰ぐように男を見る。
見ればライダーの瞳の奥にドス黒い何かが燃えていた。
「好きにしな」
男はそう言って、気だるげに手を前後に、まるで追い払うように振る。
「よっしゃ!」
男の言葉を聞いて、我先にと屯していたライダー達が暴音を立ててSAから躍り出ていく。
「おいおい。良かったのか?」
残っていた恰幅の良い男が、先の座っていた男に尋ねる。
「あん? あぁ、良かったんじゃねぇの?」
「ーーあのドライバー、事故んぞ?」
「じゃ、お前止めれば良かったじゃねぇか。それか今から追い付いて止めてこいよ。正義感の健二さんよぉ~」
言って、座っていた男が立ち上がり体を伸ばす。
「武恒……」
恰幅の良い男、健二が苦々しく呟く。
「ま、あいつらも退屈してたし? 俺としては元気な遊び相手が見つかって良かったと思ってるよ」
男、武恒が立ち眩みに顔をしかめがら喋る。
「……」
健二が物言いたげに睨む
「分かった。分かったよ健二。はいはい了解了解。」
今行きますよーー
遠く彼方よりスキール音が響く……
次いで幾度ものエキゾーストが鬨を報せるように上がった。
「あ~あ」
そう言って、武恒は愛車のシートに乗せていたデニムベストをジャケットの上に羽織る。
管楽十二鉄鋼楽団
ベストには、その名前と共に螺旋状に管楽器が描かれていた。
「リーダーってのは大変だなぁ」
ヘルメットを被りながら、武恒はしみじみ思った。
目の前の車線をサイレンと共にパトカーと救急車、消防車が走り去っていく。
「おお。豪華だねぇ」
顎ひもを絞めながら空を見る。
明るく照らされた空
遮るように濛々と黒煙が昇り始めていた。
#TTT2B #管楽十二鉄鋼楽団 #気が向いたら続き書きます
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