バイクのホイールベアリング交換の工賃・費用の目安や相場は?メンテナンス方法も紹介
バイクのホイールベアリングは、小さいながらも非常に大切な部品です。バイクで安全に通勤通学やツーリングをするには、他のパーツと同様に定期的なメンテナンスや交換が必要となります。
では、ホイールベアリングのメンテナンスや交換は、どのようなタイミングで行なうべきなのでしょうか。また、専門店に依頼せずにセルフで交換できる部品なのでしょうか。
今回は、バイクのホイールベアリングの特徴、定期メンテナンスや交換が必要とされる理由を解説します。併せて、セルフ交換の難易度・費用、ショップに依頼するときの工賃、料金の目安も見ていきましょう。
バイクのホイールベアリングとは?
バイクのホイールベアリングとは、ホイールに組み込まれているベアリングというパーツです。ベアリング自体は、機械のなかにある回転軸を支え、ローターや歯車などの「物」の回転をサポートする役割を持っています。
バイク以外にも、以下のようにさまざまな機械や乗り物に採用されている部品です。
ホイールベアリングの役割は、ホイール回りの部品やそれぞれの動きに目を向けるとよくわかります。
まず、タイヤのホイールは、アクスルシャフトを中心に回転しています。そして、回転軸であるアクスルシャフトを保持しているのが、バイクのホイールベアリングというわけです。これらのパーツ群を「軸受(じくうけ)」と呼ぶこともあります。
なお、ホイールベアリングは、以下の目的でバイクに組み込まれています。
ホイールベアリングもバイクの消耗部品です。具体的な交換時期は、以下の条件や要素によって変わる傾向があります。
ホイールベアリングの種類
ホイールベアリングには、大きく分けてシールタイプとノンシールタイプの2種類があります。シールとは、ベアリング内部に水やゴミの浸入を防ぐことが目的の、ゴムや鉄の蓋のことです。
一般的なバイクのホイールベアリングには、蓋の付いたシールタイプが採用されています。一方で、蓋のない開放型(ノンシールタイプ)は、シールタイプと比べて数はそう多くありません。
バイクのホイールベアリングは定期メンテナンスや交換が必要
バイクのホイールベアリングは、シールタイプ・ノンシールタイプいずれも、定期的なメンテナンスが必要です。ここで、その理由やタイミング、具体的にメンテナンスすべき箇所などを確認しましょう。
ベアリングの焼き付きが発生する可能性がある
ホイールベアリングを定期的に点検・交換すべき理由は、摩擦の生じる状態で無理にベアリングを使い続けた場合、ホイールベアリング自体が焼き付くからです。この場合、正常なホイール回転が難しくなります。
ホイールが回らなければ、走行時に正常なパフォーマンスが発揮できず、結果として、安全運転や快適なツーリングに支障が出るでしょう。
ベアリング交換が必要なサインは?
先述のとおり、ホイールベアリングにおける定期メンテナンスの頻度は、バイクの乗り方によっても変わります。しかし、以下の扱い方や症状が生じた場合には、ホイールベアリングの交換が必要になると考えておいたほうがよいでしょう。
・ホイールを回したときに異音や違和感がある
基本的にベアリングは、実際にバイク本体から外さない限り、損傷の有無などを確認できない部品です。
しかし、手動でディスク・ホイールを回したときに異音があれば、ホイールベアリングに問題がある可能性が高いと考えられます。回転がスムーズではないときにも、ベアリングの問題を疑ったほうが良いかもしれません。
・長年ベアリングのメンテナンスや交換をしていない
新しいホイールベアリングは、ピカピカの金属です。その部品を長く使い続けていると、取り付け時に塗布したグリスに、水などの異物混入や蒸発が起こることで、摩擦によるベアリングの劣化が進みやすくなります。
混入した水分によってボールにサビが生じた場合、その部分が弱くなって欠けなどのトラブルが起こる可能性もあるでしょう。したがって、ホイールベアリングは、サビや損傷が起こる前に定期的な交換をする必要があります。
・ダストシールにオイルが漏れ出ている
先述のとおりシールは、ホイールベアリングの内部に水や汚れが入らないようにするための蓋です。ダストシール周辺にオイルなどが漏れ出ているということは、シール自体の損傷によって蓋の役割が果たせていない可能性があります。
蓋が壊れたホイールベアリングの内側に水などが入る可能性を考えると、オイル漏れに気付いたときに、早めに交換をしたほうがよいでしょう。
ベアリングのお手入れではグリスアップが必須
ホイールベアリングの定期メンテナンスでは、ベアリングにグリスを塗ります(グリスアップ)。以下のような原因でグリス量が少なくなると、潤滑不良でホイールがスムーズに回らなくなります。
シールベアリングの場合、蓋でグリスを閉じ込めることは可能ですが、それでもグリスアップを中心とした定期的なメンテナンスは必要です。交換する際には、安価なものではなく、水分や強い圧力にも耐性のある可能な高性能のグリスを買いましょう。
ホイールとベアリングの清掃も併せて行なう
ホイールについても、金属部分の損傷からサビが生じることがあります。ベアリングとホイールは、同時期にセットでメンテナンスを行なうのがおすすめです。
セルフで交換する場合の難易度や費用は?
ホイールベアリングの交換は、手順をきちんと守ればセルフでも可能です。ここで、ホイールベアリングの交換方法や、作業のポイントを確認していきましょう。
交換時に必要なもの
ホイールベアリングの交換時には、以下のものを用意してください。
セルフで交換する場合の費用
まず、ホイールベアリング自体は、450円~2,000円ほどで購入可能です。そして、メンテナンスに欠かせないグリスについても、1,000円以内の商品がたくさんあります。
ホイールベアリングの交換費用は、どのような工具を使うかによって変わります。例えば、バイクショップで使われているベアリングプーラーは、ベアリングを効率良く外すための便利な専用工具です。ただし価格は、高いものだと50,000円程度になる場合もあります。
ベアリングプーラーの代わりに、コンクリートアンカーやグリップアンカーなどを使うことも可能です。しかし、こうした道具で代用した場合、作業中にベアリングの損傷やうまく入らないなどの問題が生じることもあります。
そのため、ホイールベアリングの交換をする場合は単純に安さだけでなく、作業効率や安全性を考えて工具選びをする必要があります。
ホイールベアリングの交換手順
ホイールベアリングの交換作業では、ベアリング自体を損傷させないためのコツや配慮が必要です。そのため、基本的には中上級者向けの作業になります。
ここでは、セルフで交換作業をする人のために、ホイールベアリング交換の流れを紹介します。
ホイールベアリング交換時の注意点
ホイールベアリングは、とてもデリケートな部品です。例えば、ベアリングを取り付ける際の力が均一ではなかった場合、軸にブレが生じることでバイクの走行に悪影響をおよぼす可能性があります。
また、ベアリングの取り外しも、注意が必要な作業です。例えば、外れにくいパーツに無理に力を加えると、ベアリング本体や周辺の部品を傷付けてしまう可能性もあります。
ベアリング脱着に使用する専用工具を用意できない、力の加え方などに自信がないなどの場合は、無理をせずに早めにバイクショップに相談をするのがおすすめです。
ショップに依頼した場合の工賃・料金の目安
ホイールベアリング交換は、先述のとおり、自分で作業するよりもバイクショップに依頼をするのがおすすめです。
ここでは、ショップに依頼をするメリットと、交換対応可能なショップの種類、工賃や料金の目安などを紹介します。
ショップに依頼するメリット
ショップに依頼するメリットは、以下のとおりです。
交換作業を確実に終えられる
ホイールベアリングは専用工具を使わなければ、取り外し・取り付け(押し込み)作業が難航しやすい部品です。専門店ではベアリングプーラーやプッシャーを使うため、セルフで行なうよりも早く、確実にホイールベアリング交換を終えられます。
他のパーツもチェックしてもらえる
専門店にホイールベアリング交換を依頼すれば、タイヤの溝やホイールの歪みといった足回りの問題もチェックしてもらえます。
ロングツーリングなどに行く予定がある場合は、事前のオイル交換やメンテナンスを依頼するタイミングで、ホイールベアリングを見てもらうとよいでしょう。
最適なホイールベアリングを選んでもらえる
バイクショップの店員さんは、部品を選ぶプロでもあります。そのため、メンテナンス初心者が自分の愛車に合ったベアリングに交換する場合、専門店で相談するのがおすすめです。
次回から自分で交換してみたい場合は、ベアリングや工具の選び方の相談をしてみてください。
どのショップで交換対応してもらえる?
バイクのホイールベアリングは、ディーラー、バイクショップ、整備工場などで交換できます。
ディーラーの利点は、購入時からのバイクの状態を把握してもらえているため、他のパーツやトラブルの相談などもしやすいことです。一方で、バイクショップは、ディーラーよりも安い工賃で交換依頼をできることが利点といえます。
対応店舗数はかなり少ないものの、四輪車の整備工場のなかにも、バイクのメンテナンスやパーツ交換ができるところもあるようです。
ショップに依頼した場合の工賃・料金の目安
バイクショップでホイールベアリング交換をした場合、以下の費用がかかるのが一般的です。
ショップで交換した実例を紹介
バイクショップにおける、ホイールベアリングの交換事例を紹介します。
・スズキZZのホイールベアリング交換
前輪のふらつきでホイールベアリング損耗に気付いた事例です。外してみたところ、サビによって分解寸前の状態でした。
・BMW R1100RTのホイールベアリング交換
正規ディーラーでの交換事例です。50,000kmほどの走行によってベアリングが消耗し、ホイールからゴロゴロと音が出る状態でした。
・スズキ アドレスV125のホイールベアリング交換
オイル交換時の指摘によって交換になった事例です。定期的にショップを利用していると、このようにショップに交換を依頼すれば、ホイールベアリングなどの問題を早期発見できます。
お店での交換実績はこちらから確認できます!
ホイールベアリング作業実績一覧
バイクのホイールベアリングを選ぶポイント
セルフで交換する人のために、ホイールベアリング選びのポイントも見ておきましょう。
基本は純正パーツを選ぶ
純正パーツは、自分のバイクと最も相性が良い部品です。多くのテストによってトラブルが少ないことも保証されているため、メンテナンスの初心者には特におすすめといえます。また、純正パーツを使っていれば、トラブルが生じたときにもディーラーなどに相談しやすいでしょう。
国内バイクベアリングメーカーのベアリングから選ぶ
純正パーツが購入できないときには、国産メーカーのホイールベアリングを選びましょう。国産メーカーをおすすめする理由は、外国製と比べて品質が高いからです。また、取扱説明書なども日本語で書かれており、不明点の確認や問い合わせなどもしやすいメリットもあります。
高品質のホイールベアリングを求めるなら、日本の3大メーカーであるNSK、NTN、ジェイテクトが特におすすめです。
サイズに注意する
ホイールベアリングは、純正品と同じものを選びましょう。ベアリングの規格は内輪・外輪・厚さで決まり、各メーカー規格は共通です。サイズについては、本体エッジの刻印で見分けられます。ただし、ベアリングには隙間サイズがあるので、購入時は注意してください。
ベアリング封入グリスに注意する
まず、バイクに使われるグリスには、以下のようにさまざまな種類があります。
このなかでベアリングに適しているのは、リチウムグリスという種類です。リチウムグリスには、合成油ベースと鉱物油ベースがあります。シリコングリスなどは、ベアリングなどの金属同士の潤滑に向いていません。
愛車に合うグリスの種類がわからないときには、すでに注入されているものと同じタイプを使うのがおすすめです。
まとめ
バイクのホイールベアリングは、以下の役割や効果があります。
ホイールベアリングに塗布されたグリスは、異物混入による変質や蒸発することがあります。グリスが少なくなった場合、ベアリングの金属に劣化やサビ、焼き付きなどのトラブルが起こりやすくなるでしょう。このトラブルを防ぐためにも、ホイールベアリングは定期的なメンテナンスや交換が必要です。
ホイールベアリングの脱着は、専用工具を使うのが理想です。工具の購入が難しい、デリケートな作業を行なう自信がないなどの場合は、早めにバイクショップに相談をしてみてください。
本記事は、2021年11月30日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。