ライダーが共感できるリアルさがある

コミックスがボクらにとって身近な存在であることは今さら説明する必要もない。当然バイクを題材にしたコミックスもたくさんある。レースを描いたもの、ライダーの視点から日常の風景を描いたもの、切り口は作家によってさまざまだ。ただバイクコミックには、ライダーだけにわかる空気感のようなものが、どの作品でもよく描かれているのが感じられる。
たとえば一色登希彦氏の「モーティブ-原動機-」では、初めてカブで公道に出た高校生が、たった40km/hのスピードやクルマに追い抜かれることに恐怖を感じるシーンがリアルに描かれている。おそらくこれを読んだライダーたちは、「そうそう」と思うか「そんなことないよ」と思うかの違いはあっても、初めてバイクに乗ったときのことを思い出すに違いない。そんなリアルさが感じられるのだ。
これはひとえに作家たちが「バイクが好き」だからに違いない。バイクブームのころならまだしも、セールス面を考えたら「バイク」を題材に選ぶことはリスクを伴うだろうし、そもそもバイクを描くのは面倒くさい。これは冗談ではなく、たった1コマに出てくるバイクを描くだけで、数時間かかることも珍しくない。好きでなければ、情熱がなければ、とても描き続けることはできないだろう。
寒くてバイクに乗りたくなーい、なんて人たちは、バイク好きが描いたバイクコミックを読みながら、暖かくなるのを待っていてほしい。 |