ナニをあたりきなことを、ではあるのだけれど、原チャリには、ひとり乗り、時速30km/hの制限速度、大きな交差点での「2段階右折」などなど、それ以上の排気量のバイクとは違ったルールがある。オフィスビルが立ち並ぶ街で、こちらは2段階右折しているというのに、ロードレーサーを小粋に飛ばすメッセンジャーが、すんなり右折レーンから曲がるのを見ると、ちょっと損した気分になる。
ほかにもオーバー&アンダーパスだと原付通行禁止が多く、測道へと迂回させられる。原チャリで大通りを走ると、脇を追い越すクルマとの速度差にちょっと怯むことにもなる。その速度差を減らそうとすれば、制限速度を越え、白バイの餌食に……。街の大通りには意外とトラップが多いことがわかる。
しかし、原チャリスクーターが得意とするフィールドもある。渋滞が始まれば、クルマや大型バイクは一気に精彩を欠く。そんなときこそ輝きが増すのが原チャリスクーターたちだ。あまたあるモデル群。今回はその一部しか招集できなかったが、その個性の豊かさはビッグスクーターと呼ばれる250以上の人気モデルたちを軽く置き去りにするバラエティだ。
同じスクーターのなかでも、レッツ4バスケットのように周到に用意されたラゲッジスペースを持つモデルもあれば、スクーターのコンポーネントを使ってまったく新しいキャラのバイクとなっているストリートマジック。そして、スペックを見ると「たった2馬力でどうするの?」と思うが、これがどうして「名は体を表す」とはこのこと。納得できるチョイノリ。趣味の乗り物と部屋への置物としても気になるのがヤマハの電動スクーター、EC-02。フルアルミフレームを採用されれば、メカニカルな部分まで愛することだってできる。
さらに、ビジネス系スクーター(3輪も含めて)をストリート風にカスタムして乗りこなすトレンドもあるし、輸入車のなかには伝統的なモペッド。自転車にエンジンを載せ、ペダルで自転車としても走れるアレだ。「モーターとペダル」がモペッドの語源なのだが、これだって原チャリ。街乗りに特化した乗り物というより、個性を打ち出せる移動ツールというほうがこのクラスを言い得ていると思う。つまり、この原チャリスクーターのチョイスは、ファッションセンスそのもの。ぜひ、楽しんで原チャリスクーター選びに没頭してほしい。必ずきらめく1台が見つかるはずだ。 |
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125クラスと同等の安定感と乗り味の濃さ
原チャリなのが恨めしいほどの走りに感激 |
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イタリア、ピアッジオ社の伝統的ブランド、ベスパ。スクーターの原型的スタイルは、スチールモノコックという航空機技術の応用から発展したものである。大柄なボディはそれこそ見所満点。原チャリだからこんなもんでしょ、という引き算的発想がまるで感じられない美の集合体。ライト、ウインカー、そしてシート表皮、デジタル時計を含む充実のメーターまわり。なにより、2人乗りが許される本国の交通環境に合わせたパワフルな走りは、ドライウエイトが96kgであることが信じられないほどだ。また巡航時やコーナリングでの安定感も125クラスとしても通用するほどしっかりしている。事実、LX125とボディまわりを共用するだけに、お洒落、走りの文武両道が揃うベスパなのである。 |
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モノコックを採用したボディはスチール製。しっかりした質感と塗装の発色もすばらしい、シートは大きく、グラブバーまでも備わるのが特徴。 |
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ボトムリンクの片持ち式フロントサスペンション。前輪は5本スポークのアルミホイールとディスクブレーキを装備。ミシュラン製の11インチだ。 |
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Dioシリーズのハイラインモデルには、
アイドリングストップ付きハイメカ装備だ |
Dioシリーズは、中国生産の低価格モデルと、国内生産のスマート・Dioの2つが存在。Dioとスマート・Dio最大の違いは、搭載するエンジンやフレームだ。同じ4サイクルながらDioは空冷、スマート・Dioは水冷で、ACジェネレーターに電気を流し、クランキングさせる方法を採用、セルモーターが始動時に発する音がなく静かな始動が行える。また、アルミダイキャストフレームを使うことで、水冷単気筒エンジンを搭載する他機種とモジュラー化させたフロアを持つことも特徴だ。このスマート・Dioデラックスは、前輪にディスクブレーキ、リヤキャリヤ、フロントトレイ、信号待ちで一定時間停止するとエンジンが停まるアイドリングストップ機構も装備する。パーツ、走りの質感の高さに価格差も納得だ。 |
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アイドリングストップ機構は右側のスイッチでオン/オフ。発進時はアクセルを開けるだけで始動のタイムラグはわずか。便利でエコな装備といえる。 |
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フェンダーとノーズが一体化したコンサバなスポーツスクーターらしいデザイン。ディスクブレーキと前後連動ブレーキは安定感の高い制動力を持つ。 |
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レトロテイストとスタイルの融合がうれしい
デザインのヤマハらしい原チャリの秀作、VOX |
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60年代のスクーター的なリヤセクション。フロントまわりは、フォークから連続するようなパイプでパネルを挟み込み、縦長感を演出する。丸形ライトを低い位置に配置した印象的なデザイン。しかも、前後にアルミホイールとごついトレッドのワイドタイヤを合わせることで、ワッフルソールのワークブーツ的足まわりの安定感とカジュアルさを出している。アウトドア用クーラーボックスのようなラゲッジスペースだってVOXの個性のひとつだ。FI装備の3バルブエンジンはトルクフル。伸びのよさもまずまずだ。そして太いタイヤと長いホイールベースで安定感も高い。ほかのモデルから乗り替えると、少々大柄な印象はあるが、それでも走りの一体感と原チャリスクーターらしい軽さは見事に混在していた。 |
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フルフェイス1個という基準から離れ、浅いが広いラゲッジスペースを持つ。バッグを背負っていてもシートサイズが大きいのでラクラクだ。 |
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平面のパネルに球形のヘッドライトを埋め込んだようなVOXの特徴的な顔。。ハンドルと同位相で前面全体が動く新しいスタイルを提案している。 |
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ここまで積めて、お値段割安
FI付き4ストエンジン、どうでしょう!
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レッツ4バスケットは今春の新作。じつによくできたモデルだ。まず、走り。その発進から速度が乗るまでに「女性を意識した造り込みがされているなぁ」と感心。まず、アクセルをがばっと開けても、ボンと飛び出す感覚がなく、静かに20km/hぐらいまで加速して、その後、伸びやかに速度を増してゆく。減速時も、時速10km/h程度まで明確なエンジンブレーキがかかるから、ブレーキをキュっと握るのに抵抗感のある人でも安心して速度調整を行える。だから、15km/h前後でアクセルで加減速しようとすると、ややダルに感じるが、全体的にはとても扱いやすく二重丸。そして、積載性へのこだわり。シート下にはカテキン入り消臭シートまで入れちゃう細やかさ。軽くて安い。これは合格です。 |
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女性の声を見事反映した乗降性のよさ、軽さ、そして積載性。まさにかゆいところに手が届く1台だ。加えてセンスのよい色遣い。あっぱれ!! |
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25Lの容量を持つバスケットはロールカバー付き。荷物の落下と目隠しに有効。視認性の高い位置にウインカーを設けているのも特徴となっている。 |
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