電子制御技術が
車両を進化させた
かつては、ライダーの運転技術で意のままに操ることが醍醐味とされてきたようなところもあったバイクの世界にも、00年代になると安全で快適な運転をアシストする制御技術が、多数投入されるようになってきた。
その筆頭がABS(アンチロック・ブレーキ・システム)だ。90年代にはBMWなどごく一部が採用するのみだったが、00年にホンダがスクーターのフォルツァSに軽二輪クラスでは世界初搭載。その後、他メーカーを含めさまざまな機種に搭載されるようになった。そしてホンダは09年型のCBR1000RRおよび600RRで、サーキット走行にも対応した電子制御式コンバインドABSを投入した。
また、前述したインジェクション化に合わせて、エンジン関連にも多くの電子制御技術が投入されるようになった。例えばヤマハは、06年型のYZF-R6に、世界で初めて電子制御スロットルを採用。YZF-R1の07年型では、吸気管長を電動で自動伸縮させることで優れた出力特性を生みだす機構も採用している。またスズキは、07年型のGSX-R1000で、エンジン制御マップをボタン操作で切り替えられる機構を搭載。路面状況に応じて出力を選べるこの機構は、現在では他メーカーも多く導入する。
車体にも、電子制御化の波は押し寄せた。04年型のホンダCBR1000RRでは、モトGP譲りの技術となる電子制御ステアリングダンパーを世界初採用。BMWは04年のK1200Sで、ボタンひとつでサスペンションの特性を調整できる機構を二輪用としては初めて実用化している。
BMWつながりで考えると、07年に新登場したASC(オートマチック・スタビリティ・コントロール)も忘れてはいけない。これは、後輪が空転するのを抑止する機構。つまりトラクションコントロールで、いまでは多くのメーカーが採用する電子制御技術のひとつである。
- SUZUKI
SKYWAVE650LX
(2004) - 02年登場のスカイウェイブ650は、電子制御CVTを採用。擬似的に設定された有段変速を、マニュアルでも楽しめる新技術だった。