排ガス規制強化でFI化が加速
00年代後半には、それまでキャブレター仕様の多かったエンジンの燃料供給が、ほぼ全機種でインジェクション化された。要因となったのは、排ガス規制強化だ。
06年から施行された新規制の主な狙いは、排ガスに含まれるHC(炭化水素)の削減。同時に、CO(一酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)の設定数値も大幅に下げられ、小型二輪の場合でCOとHCは85%減、NOxは50%減となった。その数値は、欧州などの規制値を超えて、当時では世界でもっとも厳しいレベルに設定された。
ちなみに、継続生産車に対しては軽二輪(126〜250CC)と原付一種(50CC以下)が07年9月、原付二種(51〜125CC)と小型二輪(250CC超)が08年9月に、それぞれ施行されている。
性能を確保しながらこの規制に対応するために、有効だったのがフューエル・インジェクション。これとマフラー触媒や排気ガス再燃焼システムなどを組み合わせることで、各社は規制対応を図ったのだ。そこで00年代後半には、バイクのインジェクション化が一気に進んだ。
とはいえ、新規制の施行と同時に全機種が揃って……というわけではなかった。カワサキのゼファーシリーズをはじめ、規制に対応されることなく廃止となった機種も多い。またこの規制は、あくまで“生産”のリミットなので、新規制への移行前にとりあえず“作りだめ”をして、在庫を売りながらじっくりとインジェクション化に向けた開発を行った機種もあった。たとえばヤマハのSR400がそれで、新規制スタートから1年4ヵ月後の09年末にインジェクション仕様となった。
中には、ホンダのFTR(と、このエンジンを流用したXR230やCB223S)のように、キャブレターのまま規制に対応した機種もあったが、原付スクーターを含めたほぼすべての国内仕様車がインジェクション化されたきっかけは、厳しい環境規制の導入にあったのだ。