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特定小型原付について

免許不要、ヘルメットは努力義務特定小型原付とは?

2022年4月に道路交通法改正案が国会で可決され、これまでになかった新しい車両区分「特定小型原動機付自転車 (以下、特定小型原付)」が新設されました。特定小型原付は原動機付自転車 (以下、原付)と自転車などの軽車両の間に区分され、主に電動キックボードなどが含まれます。2023年3月現在、公道を走る電動キックボードは原付として区分されていますが、2023年7月に法改正が施行されると、特定小型原付の条件を満たす電動キックボードは、16歳以上であれば運転免許証は不要、ヘルメット着用は努力義務での運転が可能となります。
一方条件を満たさない電動キックボードは、これまで通り免許・ヘルメットが必須な「一般原付」として区分されるので注意が必要です。

それでは、特定小型原付と原付のルールの違いについて見ていきましょう。

特定小型原付 原付
免許証の有無 不要

免許は不要。※16歳以上の年齢制限あり。

必要

原付の運転ができる免許が必要。

ヘルメットの着用 努力義務

ヘルメットの着用は努力義務。

義務

ヘルメットの着用は義務。

通行場所 車道が基本

自転車道 / 車両進入禁止(自転車を除く。) /
指定方向外進行禁止(自転車を除く。) /
普通自転車専用通行帯/低速時のみ歩道・路側帯も可能。

車道のみ
最高速度 時速20km

歩道は時速6km

時速30km
自賠責保険 必要 必要
ナンバープレート 必要 必要

特定小型原付に関する細かいポイントを解説!

免許は不要 16歳以上の年齢制限あり

これまで公道を走る電動キックボードは原付と区分され原付の運転ができる免許が必要でした。
特定小型原付では、免許は不要となります。ただし16歳以上の年齢制限がありますので、注意しましょう。
特定小型原付は16歳以上であれば免許なしで運転できるので、免許保持者にある反則点数はありません。しかし2023年3月時点では、違反をすると原付と同じ反則金制度を適用する予定となっております。また、自転車と同じように運転において交通の危険を生じさせる違反項目を設定し、違反者を対象にした講習の受講を命ずる制度「自転車運転者講習制度」が適用されます。違反項目は自転車では信号無視、酒気帯び運転など15項目設定されていますが、特定小型原付ではこの15項目の他に「携帯電話の使用」「共同危険行為」が追加されます。特定小型原付の講習は3時間、6,000円を予定しています。

ヘルメット着用は努力義務

原付の電動キックボードではヘルメットの着用は義務付けられていました。
一方特定小型原付ではヘルメットの着用は努力義務にとなり、着用しなくても交通違反にはなりません。ノーヘルでの走行は違反にはなりませんが、グーバイクではヘルメットの着用を推奨しています。万が一の転倒や事故に備えヘルメットはできる限り着用することが望ましいでしょう。今後は自転車などのスポーティでオシャレなヘルメットの着用も可能となります。自転車用のヘルメットはデザインも豊富でファッションにも合わせやすいので、あなたのライディングスタイルに合わせて選んでいくとよいでしょう。

通行制限の一部解除

道路標識等により、通行が規制されていた場所が、一部緩和されます。

・自転車道
・車両進入禁止(自転車を除く。)
・指定方向外進行禁止(自転車を除く。)
・普通自転車専用通行帯

最高速度による通行区分案
特定小型原付(歩道モード) ~6km/h 識別灯火が緑色点滅で、歩道や路側帯を通行できる。
特定小型原付 ~20km/h 識別灯火が緑色に点灯で、車道や自転車道、路側帯を通行できる

最高速度は20km/hに制限

最高速度が20km/hに制限されます。(排気量50cc以下の第一種原動機付自転車は30km/h)定格出力は0.6kw以下となります。
また、特定小型原付で歩道通行車モードに変更され、歩道を通行する場合は最高速度が6km/hとなります。

自賠責保険は必須

特定小型原付でも原付と同じく自賠責保険(共済)への加入は必須となります。たとえ事故を起こさなくても、自賠責保険(共済)に加入していなかった場合には以下の罰則がありますので「必ず」自賠責保険(共済)に加入するようにしましょう。

^稟薪誠6点=免許停止処分
1年以下の懲役または50万円以下の罰金
※自賠責保険(共済)の証明書を持っていなかった場合でも30万円以下の罰金が科せられます。

自賠責保険(共済)に加入していなく人身事故を起こすと、自賠責保険(共済)から支払われる賠償金がすべて自己負担になります。任意保険に加入していても、支払われる金額は、自賠責保険(共済)の補償限度額を超えた金額のみですので注意が必要です。
例えば被害者が死亡した場合、自賠責保険(共済)に加入していれば3,000万円を限度額とした保険金が支払われます。そして任意保険からは限度額を超えた金額が支払われます。自賠責保険(共済)に未加入だった場合はこの3,000万円を自分で賠償しなければいけません。
自賠責保険(共済)は対人賠償が補償範囲となりますので、バイクでの走行中に車にぶつかったり、建物にぶつかったりして、他人のものを壊してしまったなどの対物賠償については別途任意保険に加入する必要があります。

ナンバープレートの装着は必須

特定小型原付も原付と同じくナンバープレートの装着は必須となります。
ナンバーの取得は、各自治体の区役所や市役所で取得が可能です。公道走行前に、必ずナンバー登録を行いましょう。また、特定小型原付のナンバープレートは原付のものより小型化される予定です。

特定小型原付も原付一種もどちらもメリット・デメリットが存在しますが、特定小型原付だと自転車道・歩道での走行が低速ではあるが可能になること、原付一種の場合だと、車道での走行・時速30kmまでの走行が可能になることが挙げられるため、ライフスタイルや使用条件に合わせた形で選びましょう。

特定小型原付の定義

特定小型原付とは、原付のうち、電動機の定格出力が0.6kw以下、長さ1.9m、幅0.6m以下かつ最高速度20km/h以下のもので、特定小型原付に必要な保安部品が装着されているものを指します。自転車、特定小型原付、原付の定義について比較してみましょう。

自転車 特定小型原付 原付
最高速度 - 時速 20km/h以下 時速30km/h以下
定格出力 - 0.6kw以下 0.6kw以下
長さ 1.9m以下 1.9m以下 -
0.6m以下 0.6m以下 -
高さ - - -

特定小型原付は上記を満たしたものであれば、電動キックボードだけではなく電動モペットなどでも特定小型原付として登録が可能です。

次に保安部品についてですが、2022年12月23日に国土交通省から特定小型原付の保安基準が公布されました。
これまでの原付の保安基準項目が基本とされておりますが、「最高速度表示灯」という部品が新たに追加されています。

特定小型原付の保安基準項目

特定小型原付の保安基準項目

特定小型原付の保安基準項目

特定小型原付の保安基準項目

特定小型原付の保安基準

特定小型原付の保安基準の項目は、原付の保安基準項目を基本としつつ、特定小型原付に特有の構造・必要性のある基準となりました。

原付から引き続き必要な保安部品

接地部・接地圧
接地部及び接地圧は、道路を破損するおそれのないものであること。
ブレーキ
2個の独立した操作装置を有し、確実かつ安全に減速及び停止を行うことができ、制動停止距離が5m以下であること。2系統以上のうち1系統は、平坦な舗装路面等で確実に特定小型原動機付自転車を停止状態に保持できること。
車体
車体は堅牢で運行に十分耐えるものであること。乗車装置が確実に取付けられ、振動、衝撃等 によりゆるみが生じないようになっていること。
ヘッドライト
夜間前方15mの距離の障害物を確認できること。
尾灯
夜間後方 300mから点灯を確認できること。
制動灯
昼間後方 100mから点灯を確認できること。
後部反射器
夜間後方 100mから走行用前照灯で照射した場合にその反射光を確認できること。
クラクション
適当な音響を発する警音器であること(自転車に装着されるベル等でも可)。
ウィンカー
車両中心線上の前方及び後方 30mの距離から指示部を見通すことができる位置に少な くとも左右1個ずつ取り付けられていること。
安定性
安定した走行を確保できるものとして「特定小型原動機付自転車の走行安定性の技術 基準」に適合すること。
スピードリミッター
速度制御性能に関し「特定小型原動機付自転車の速度抑制装置の技術基準」に適合すること。
設定最高速度が2種類以上ある場合、走行中に設定変更ができないこと。
電気装置
原動機用蓄電池は以下のいずれかの基準に適合していること。
国連規則、欧州規格、国連危険物輸送勧告、PSE マーク(電気用品安全法に基づく表示)
乗車装置
乗車人員が動揺、衝撃等により転落又は転倒することなく安全な乗車を確保できる構造であること。

新たに追加された保安部品

最高速度表示灯
昼間前方及び後方 25m から点灯を確認できること。
車道モード:緑色点灯、歩道モード:緑色点滅

不要になった保安部品

後写鏡(バックミラー)
速度計
消音器

※国土交通省 道路運送車両の保安基準の一部を改正する省令案及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正する告示案について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000242355

バックミラー(後写鏡)が保安部品から不要に!?

特定小型原付で不要になったパーツバックミラー(後写鏡)が保安部品から不要に!?

シェアリングサービスでの実証実験の際や、現在原付一種として扱われている機種にはバックミラーが装着されています。ただ、今回の特定小型原付の改正では保安基準から外されています。
書面としては、「通行場所を考慮」との記載がされています。こちらについては区分の違いによるところが関係しており、実証実験のキックボードに関しては「小型特殊自動車扱い」のため、通行場所の関係上、ミラーが必須条件だったということが原因として考えられます。また特定小型原付は主に自転車道での走行、二段階右折で通行となることから、バックミラーを通しての後方確認がそこまでは必要ではなくなる、という考慮も想定されます。

特定小型原付の性能についての確認制度

国土交通省では、「特定小型原付」が定義されることになるのを踏まえ、特定小型原付に関する保安基準を整備するとともに、保安基準適合性等を確認する制度(性能等確認制度)を創設しました。
この制度は国土交通省が委託した民間の機関が、要求される保安基準を満たしているかを検査し合格した車両には認定シールを公布する、という制度となります。
特定小型原付として認定された車両にはこのシールが貼付されています。これにより、電動キックボードにおいて「特定小型原付」の区分とされる車両なのか、「原付」に区分される車両かを効率的に見分けることが出来るようになります。
認証シールのサイズ感としては、40×15mmの小型のシールで、デザインに合わせて黒と白の2パターンが存在します。車体のデザインに応じて選択可能となります。

特定小型原付の性能についての確認制度

引用:国土交通省資料

特定小型原付の性能等確認制度における主な手続きの流れ

特定小型原付の性能等確認制度における主な手続きの流れ 特定小型原付の性能等確認制度における主な手続きの流れ

国土交通省資料をもとに作成

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シール公布までの流れとしては、二段階の流れがあり、「性能等確認実施期間の認定」と「性能等確認の実施」の二段階の工程を経て、適合と見なされ、シール公布となります。主には国土交通省が能力を審査し、公表した民間の機関・団体等が審査を実施する形で手続きが進む形となります。また製作メーカーや製作者は、諸元表や外観図、概要書等を用意した上で申請する必要があり、認定機関から設定された条件で適合されるかの審査を受ける必要があります。
保安基準適合等が確認された特定小型原付は、国土交通省のホームページで確認できるようになるため、購入する際のサポートにも役立ちます。また公布シールで確認ができることで、警察の取締りも行いやすくなるため、保安基準が適合されていないキックボード利用の抑止にも繋がります。

新たな保安基準の適用時期は?

国交省のホームページによると、適用されるのは改正道交法施行日となっており、「最高速度表示灯」については、2024年12月23日となっております。
2023年3月時点では、保安基準に適合した車両はありません。保安基準等を満たす車両をメーカーも製造していくことになりますので、保安基準を満たした特定小型原付が登場するのは2024年くらいになるかもしれません。
特定小型原付での購入を検討されている方は、随時国土交通省のホームページかグーバイクのページで確認し検討しましょう。

新車への適用時期 使用過程車の適用時期
特定小型原付の保安基準
(通行区分標別灯を除く)
2023年(令和5年)7月1日
最高速度表示灯 2023年(令和5年)7月1日 2024(令和6)年12月23日

今ある電動キックボードはどうなるの?

特定小型原付の施行後も原動機付自転車のルールの範囲で利用が引き続き可能です。
ただし、「車道は20km/hで走行し、歩道は6km/hで走行する」としても特定小型原付には認められず、歩道走行をおこなった時点で法令違反となります。
あくまでも新しい車両区分に適した車両に乗っていないと、特定小型原付の扱いにはなりませんので注意しましょう。
また電動キックボードを選ぶ場合は、特定小型原付・原付一種ともに海外モデルの場合だと日本の特定小型原付における保安基準を満たしていない場合が多いため、購入時は注意が必要です。保安基準を満たしていない場合で走行した場合は、整備不良車両の運転となり、罰則として「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科せられます。
メーカーによっては、必要なカスタムを施すことで特定小型原付へ変更できるモデルもあるため、購入検討の方や所持している方は今一度確認してみましょう。

特定小型原付の今後について

シェアリングサービスの影響などもあり、特定小型原付=電動キックボードというイメージも強い傾向にありますが、原付のうち電動で定格出力が0.6kw以下、長さ190cm、幅60cm、以下かつ最高速度20km/h 以下のもの、また保安基準を満たしていれば電動バイクのような座れるタイプ、三輪車タイプも登録可能となります。2022年には原付一種ではありますが、ホンダの新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」から生まれた安定性や乗りやすさ重視で設計された「ストリーモ」の登場(※オンラインで300台限定発売となりましたが、現在は完売。)もありました。また、ヤマハも立ち乗りタイプの3輪(前2+後1輪)電動モビリティ「トリタウン(TRITOWN)」で2023年に市場投入を目指しています。大手メーカーの参入もあり、今後の特定小型原付のモビリティ成長・バリエーション拡大にも期待大です。

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グーバイク:マイクロモビリティ研究所編集局
最近話題のマイクロモビリティに関する情報や紹介について、随時更新していきます!
これからの更新をお楽しみに!