気がつけば桜前線は関東を北上し、それまで水墨画のような佇まいを見せていた北関東の山々に少しずつ緑が戻ってきた。となれば、多くのライダーが待ち焦がれていたツーリングシーズンの到来である。
寒風を切り裂くように走り、すっかり冷え切った体を温泉で温める真冬のツーリングも個人的には嫌いではないが、やはり暖かな陽気のなかを走るツーリングのほうが身も心も気持ちいい。とくに春という季節は暑すぎず寒すぎず、1年を通じてもっとも快適に走れるシーズンといえるだろう。そんな絶好のシーズンに、栃木県有数のワインディングロードを駆けめぐるツーリングに出かけることにした。
頼りになるツーリングの相棒は、KTMの640デューク。スーパーバイクを彷彿とさせるレプリカも良いのだが、肩肘張らずにツーリングを楽しめるオフテイストのロードバイクのほうがワインディングを駆けめぐるという、忘れかけていたあの感覚を呼び覚ますにはちょうど良い。しかも、いざ本気になれば、ライダーの意志に十分に応えてくれるバイクなのだ。
今回のツーリングの舞台は、いろは坂、霧降高原、日塩もみじライン、ボルケーノハイウェイ、甲子道路という栃木を代表するワインディングロードである。路面に残雪はないという情報を事前に入手していたとはいえ、久しぶりに走る栃木のワインディングロードに対して不安がないといえばウソになる。そうした不安を軽減する意味でも、じっくり焦らず、ときには本気モードでこの5本のルートを640デュークで走破することをツーリングの主目的とした。 |