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Ninja ZX-12R
2021年03月22日
93グー!
思えば今年で40になろうとしていた。
あぁ、年月ってヤツは早いもんだ。
そんなことを考えながらスロットルを開けて走っていく……
「うおッ!」
スクリーンから顔を出しては引っ込める。
現在、俺は愛車のZX-12Rに乗って鹿児島を目指していた。
目的地は佐多岬。
理由は無い。強いて言えば、なんとなく行かなくてはと思ったからであろうか?
メーターの針は時速250キロ越え。
轟音と振動の中を、スクリーンとカウルに守られて貫いていく……
あと600キロ。
スマホのナビを一瞥し、ただ黙々と山陽自動車道を走っていく。
思えば12Rとの付き合いも15年、距離にして16万キロを突破した。
新車で買ったコイツも、もう立派な旧車(ロートル)だ。
何度もコケた、何回も修理した、もはやエンジンなんて3機目、新車(あの頃)から残っているのはフレームとメーターぐらいのモノである。
500。
SAにて180キロ毎の給油をしながら、ミラーに映った自分の顔を見る。
メットの中の浅黒く焦げた肌、目尻のシワ、、、
「……フ、老頭児か」──笑えんな。
そう呟いて──良し。
並々と注がれたハイオク、腹ごしらえをした愛車のダミータンクを撫でて、メットのシールドを閉じる。
「おん?」
ふと隣に入ってきたライダーと目が合った。
乗ってるバイクは現行のSS。
そして乗ってるライダーもメットから見える目と肌がピチピチに見えた。……現行車(者)か
「ガハハ!」
声高らかに笑い、そして互いにペコッとお辞儀をして。
ヴォヴォヴォヴォ、バァンッ!
ヴゥゥゥゥアァァァァンッ!
耳をつんざく爆音をかき鳴らして再び走って行く。
300。
中国道から九州自動車道へ。
「ぬぬぬ!」
ラグナセカばりのテクニカルカーブに悪戦苦闘、時速300キロにも耐えうる剛性が仇となり、カーブの度に凄まじいGに全身の筋肉が悲鳴を上げる!
踏ん張る足の親指がつる!
ハンドルにしがみつく腕の上腕がピキピキと震える。
右へ左へと移り行く状況に目が追いつ──
「舐めんな! そんなにジジイじゃねぇ!」
気合いと根性でねじ伏せていく!
昔の俺よ、ほら見ろ!
まだまだぁ!俺ぁまだ耄碌しとらんぞ!
170キロ越えで走って行く……
100キロ。
九州最南端の桜島SAを横目に通過し、下道へ。
再び愛車にハイオクをがぶ飲みさせて桜島フェリー乗り場へと急ぐ!
しばし休憩。
愛車の上に突っ伏す。待合室には行かない、寝そうだった。
そして時間になりフェリーの中へと進んでいく……
短い航路。
名物のやぶ金うどんを無心で食べる。
「おおぅ~! ふぁぁぁ」
見えてきた陸に心が踊る、鎌首をもたげる睡魔に目蓋が痙攣する。
では行かん!
カタパルトから飛び出すガンダムが如く桜島へと勇み入る!
90
海沿いの224~269号線を目薬とエナジードリンクをキメて走っていく。
「おう!」「おお!」「おんおん!」
すれ違うライダー達とヤエーを交わす。
気持ちの良いワインディング、思わずスロットルをラフに開け──
……かけて。
「──」
思い留まる。
見れば田園風景の合間、側道にパンダカラーのア奴らが待機していた。
「~♪~♪」
鼻歌混じりに走っていく~
もう少し……もう少しで……
そして。
「ハァァァ」
モニュメントの前に愛車、ZX-12Rを停める。
騒ぐ風と磯の香りを全身で感じる。
しばし目を閉じて、心が凪ぐまで静かに待つ。
「………」完了。
気持ちを切り替えて出発する。
──そして。
「到着」
ついにあの大きな木の下へと着いた。
緩い傾斜の駐輪場に愛車を停めて、岬のベンチにドカッと座り込む!
「があああ」
オッサンのようなタメ息とも言えぬトンチキな言葉。
続いて、自販機で買った白熊ジュースを胃に流し込む。
「あっま!」だがそれが良い。
思えば遠くに来たもんだ。
見れば日も暮れ始めているではないか。
目を細めて大海原に沈む夕日を眺める……
ボンボンボンボンボンッ!
ふと、聞こえてきたバイクの排気音に振り返る。
「あ」
思わず声を上げる。
「あ!」
向こうのライダーも声を上げる。
先のガソスタで会った現行車(者)がソコには居た。
「昔、父が12R乗ってましてね」
若いライダーが俺の12Rを眺めながら、しみじみと言葉をつむぐ。
「いやぁ、君のバイクにゃ敵わないよ」
俺はライダーのSSを見て、謙遜する。
かたや型落ちの時代に忌み嫌われた忌み子、かたやメーカー最先端の鬼の子、比べるまでも無いだろう……
「バイクって良いですよね」
ライダーが俺の言葉を無視し喋る。
「何十年経っても色褪せないんです」
「色褪せない?」
「だってオジさ……兄さん12R好きでしょう?」
「ああ、好きだよ」
俺は即答した。
「俺もいつかそうなりたいです」
若いライダーが西日を受けながら、自分の愛車のSSを眺める……
その姿に昔日のあの日の俺が重なる。
「……どうしました?」
ライダーが首を傾げる。
「いや、何でもない」
……何でも……無いさ。
「あ! そうだ!ちょっと待ってて下さい!」
若いライダーが小走りにどこかへと走っていく。
「ハァハァ、さ!どうぞ!」
そして走って帰って来て俺に何かを差し出す。
……なるほどね。
「再会を祝して!」
白熊ジュースがソコには合った。
「アリガトウ」
笑ってソレを受けとる。
「「乾杯」」
ジュースをぶつけ合い、杯を交わす。
甘ったるい味、のど越しに悪戦苦闘。
「っぷはぁ~うめぇ~ッ!」
若いライダーが一気に飲み干し空き缶を高らかに掲げる!
「若いな~」
俺も遅れて、3度に分けて飲み干し空き缶を高らかに掲げた。
バイクに乾杯! ライダーに乾杯!
嗚呼、オートバイに乾杯!
#ZX-12R #俺RIDE #東◯海平 #鹿児島リベンジしたい #999投稿目 #12Rかばち隊
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