1000投稿の投稿検索結果合計:1枚
「1000投稿」の投稿は1枚あります。
1000投稿、ZZRちかっぱ隊、zzr400、俺RIDE、東◯海平 などのタグがよくつけられています。投稿されたツーリングスポット情報・カスタム事例など1000投稿に関する投稿をチェックして参考にしよう!
1000投稿の投稿写真
1000投稿の投稿一覧
- 1
-
ZZR400
2021年03月23日
75グー!
その昔、ZZRというカワサキのバイクが有った。
シャチみたいにヌルッとした車体に、元気なエンジン。
300キロに届くような過激なツーリングから、街乗り、何泊もするようなロングツーリングまで、何でも出来る万能なマシンだった。
まぁ、今じゃソレも彼岸の彼方に追いやられ続けているんだが……
「~♪~♪」
鼻歌でBGMをつけながら走っていく。
「フンフ~ン♪ランララ~♪」
カワサキの4気筒とBEETが織り成す極上のサウンドに酔いしれながらのツーリング。
最高だ!
「おっ!」
そんな感じで、ご機嫌なっていると、これまた良さげな風景が広がった。
愛車を路肩に安全に停めて、バックからカメラを取り出し構える。
ピピ! パシャッ!撮影。
「ん~♪ 良いねぇ~」
最高の写真が撮れた。やったぜ!
そして再び愛車、ZZR400に跨がって走り出す……
俺の愛車、ZZR400は特別なバイクだ。
と言っても、何かワンオフとか限定モデルって訳では無い。
コイツは俺が親父から譲ってもらった、、、いや、受け継いだバイクだった。
親父はバイクが好きだった。中でもカワサキ車が好きで、とりわけZZRシリーズにゃ目が無かった。
「あ! 1100!あれは600!モホホ400じゃねぇの! こらまた250ですか!」
50近いオッサンが子供のように目を輝かせて、はしゃいでいたのを覚えている。
「おとーしゃん! じーじーあーる」
そんな親父を見ているうちに俺もZZRが好きになった。
よく親父のツーリングにも付いていった、フカフカのタンデムシートに乗り、親父のジャケットの脇のベルトにしがみついていたなぁ~
時代遅れのキャブの息づかい、ガソリンの匂い、構造がアナログ、ラフゆえのドコか温もりを感じさせた乗り心地。
「懐かしいなぁ~」
思わず声が出た。
「でも」──でも
「◯んじまったんだよなぁ~」
親父はもう虹の向こうへとロンツーに出ちまった。
……え? 何故かって? 理由?
「カニ食ってイっちまったんだよ」
スベスベマンジュウガニをよ!
忘れもしない6年前の夏、あの日は親父と俺とお袋の3人で海にキャンプに行っていた。
楽しかった。海で遊んで、バーベキューで焼きそばも食べて、そして夕方に3人で浜辺に座り、沈む夕日を見ていたんだ。
……そしたらよ。
「あっ! カイト見てみろ! カニが居るぞ」
親父が大袈裟に声を上げ、近くを歩いていた小さなカニを掴んだ。
そして……
「どれどれ食べてみよう!」
食った。
おそらくは俺とお袋を笑わせようとフザけたのだろう。
しかし残念ながら、そのカニはオフザケでは済まない毒を持っていて……
「う!」
顔がサツマイモのように変色する親父、しつこくフザけているんだろうと思った。
でも、それはリアルガチマジで。
「……お父さんイっちゃった」
「うん。バイバイしたね」
お袋と俺は葬式の会場で呆けていた。
親族や親父の友達、バイク仲間も同様だった。
坊さんのお経が粛々と響く……
「……すべすべまんじゅうがに」
俺がポツリと呟く。
「んくッ!」「んお!」
お袋と誰かが吹いた。
会場の大半がプルプルと肩を震わせる、、、
ピリピリとした緊張が走る、そして。
「ブハハハハハハ!」「んフフフフフフフ!」「おま! トバしてイったんじゃなく、カニて!」
爆笑が会場を包んだ。もうめちゃくちゃだった。
笑いをこらえ目尻を拭うお袋、笑ってモモを叩く親族、お経を詠みながら肩を震わせる坊さん。
あぁ、ホントもうメチャクチャだよ……
「先ほどは大変失礼をいたしました」
「伏してお詫び申し上げます」
「本当に申し訳ありませんでした」
式の後、大人達がお袋と俺に深々と頭を下げる。
「いえいえ、良いですよ! 今日はあんな阿呆の為に~」
お袋が断りながら、ペコペコと頭を下げる。
「あ、そうだ! バイクどうしましょう」
──え? 今? ここで?
お袋が訳の分からないことを言い出した。
大人達もあーだこーだと何故か乗り出す。
「私が乗りますよ」「いえ、自分はご主人に生前は本当にお世話になりました! だから自分が」
「私にご主人のZZRを譲って頂けませんか?言い値で構いません! 例え200万でも300万でも出させて頂きます!」
ワチャワチャと大人達が騒ぐ。
ん? ふと親父の眠る棺桶を見る。
「あ」
半透明の親父が棺桶に座り、コッチを見ていた。
「──」
親父も気付いたのか、俺に手を振る。
「おとうさん」
「───」
親父が口を動かす、しかし声は聞こえない。
……でも、俺には親父の言葉が伝わった。
俺は親父に頷く、おとうさんは満足そうに笑った。
「あの!」
大人達へと振り返る。
「おとうさんのじーじーあーるは僕がのります」
しっかりと言葉を伝える。
そして。
「おかあさん」
俺はおかあさんの手をしっかりと掴む。
「僕が運転するから、また一緒にツーリング行こうね!」
お袋に気持ちを伝える。
その瞬間、お袋は初めて泣いた。
お袋と俺、抱き合ってオンオンと泣く。
つられてみんな泣いた。
ヴォォォォーンッ!……rrr。
宿泊する宿にZZRを停めて、電話をかける。
「あ、もしもしお袋? 付いたわ、無事到着です」
「あらそう、お疲れ様。今回はドコに行ってるの?」
「広島」
「ふーん。じゃお土産は桐葉菓でヨロシクね」
「okok! じゃまた、そっち帰る時に連絡するわ」
「うん。気をつけてね」
「ういうい、じゃあ」
電話を切り、宿の受付へと歩いていく。
「あの、17時から予約していた者ですが」
一通りの手続きを済ませる。
「今日はどちらから来られたんですか?」
受付のお姉さんが俺に尋ねる。
「◯◯からです」
「あ、そうですか。バイクですか?」
俺はロビーの下に佇むZZRを見る。
「はいッ!」
胸を張って答えた。
「あ、そうですか。お気を付けて」
柔和な笑みを浮かべるお姉さん。
俺もニッコリと笑った。
ZZRをもう一度見る。
心なしかZZRも笑っているように見えた。
「あ、そうだ。ご夕食ですが……」
「海鮮カニ御膳と広島牛御膳、どちらになさいますか?」
「……」
「……」
「広島牛御膳でお願いします」
俺は両手でピースをし、そう答えた。
#ZZR400 #俺RIDE #東◯海平 #1000投稿 #ZZRちかっぱ隊
- 1