制動力をアップさせるバイクのABS(アンチロック・ブレーキ・システム)とは
ABSとはアンチロック・ブレーキ・システム(Anti-lock Brake System)の略称です。急なブレーキが必要になった際、タイヤがロックして滑ることを防ぐ制御装置です。既に4輪自動車では標準的な安全装備ですが、バイク用ABSの普及はまだまだこれからです。そんなバイク用ABSの特徴や取り付け方を紹介します。
バイク用ABSの仕組みと効果
ABSは、我が国では排気量50cc以下の原付バイク等一部を除く、ほぼ全ての公道走行可能なバイクに装備が義務付けられることになりました。新車では2018年から、継続モデルでも2021年から義務化されます。
ABSは急に強いブレーキを余儀なくされた場合に、車両の進行方向の安定性を保ちながら、ハンドル操作で障害物を回避する可能性を高めるための安全装置です。急ブレーキの際、ブレーキでタイヤの回転を止めて(ロックすると言います)も、タイヤのグリップ(接地)力を超えるとタイヤが滑り出し、ハンドルを奪われてしまいます。ABSはブレーキを一定以上の速度と強さで踏み込むと、ブレーキのロックと解除をコンピュータ制御で高速かつ自動的に繰り返します。
ブレーキの操作方法は通常のブレーキと全く同じで、前後のブレーキレバーを一挙に強く握れば、それぞれの車輪に付いているセンサーが動きを検知してABSが作動します。ライダーはバイクが完全に停止するまでブレーキをかけ続けるだけです。

4輪自動車用ABSとの違い
4輪自動車用としては既に標準装備といっても良いABSですが、元々は飛行機が着陸する際の制動力を高めるために開発された制御装置です。現在、4輪自動車では新車のほとんどに装備されるほど普及が進んでいます。
バイク用ABSは、4輪自動車用ABSと役割が異なっています。4輪の場合はタイヤがロックせずに停止出来れば、多少の振動があっても十分衝突のリスクが低減出来ますが、バイク用ABSの場合は転倒も防がなくてはならないため、さらにスムーズにブレーキングが出来るよう、精細な制御が求められるのです。
バイクメーカーによっては、コンバインド・ブレーキ・システム(CBS)またはコンバインドABSという名称の装置を設定しています。これは緻密にコンピュータ制御された前後タイヤの配分でブレーキを利かせることで、タイヤをロックさせずに止める、というものです。
ABSは後付け出来る?
最近ではバイク用ABSシステムも、大幅な軽量化が進んだことで、様々なタイプに搭載が進んでいます。ABSの有無による価格差は現在10万円未満で、重量では3〜5kg程度の違いがあるようです。
安全を左右する、最重要とも言える装備なので、用品として後付け出来る市販商品は少ないですが、一部に対応可能な車種はあります。ABSが設定されている車種であれば、ABSユニットにコンピュータやディスク等の装備類を全て取り付ければ搭載は可能です。ABSが元々設定されていない車種向けにも、ABSの名を付けたキットが市販されていますが、あくまで簡易的な、ABSとは原理的に異なるものなので注意しましょう。いずれにしても信頼出来るディーラーやショップで相談してみることをおすすめします。
まとめ
ABSの特性を理解して使えば、とっさの場合にも落ち着いて対処することが可能になります。どこでも練習出来るような装備ではないので、講習会等で体験してみることをおすすめします。もちろん過信はせず、あくまで安全運転を基本にしましょう。
本記事は、2016年9月16日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。