プラグの熱価とは?プラグの適正温度の見分け方や交換方法を紹介
プラグの熱価は、バイクにおけるエンジンのパフォーマンスを左右する、大事な項目です。快適なバイクライフを続けるには、愛車に合った熱価のプラグを取り付けたうえで、定期的なメンテナンスをすることが大切といえます。
プラグの焼け具合を見れば、エンジンの調子を把握することも可能です。そのため、セルフでメンテナンスをする人は、プラグの色から状態を見分けるポイントを知っていたほうが、早めの対処をしやすくなるでしょう。
今回は、まずバイクのプラグにおける熱価の意味や、種類などの基礎知識を確認します。そのうえで、プラグチェックのポイントや適正温度の見分け方、焼けすぎで引き起こされる症状、プラグの交換手順なども見ていきましょう。
バイクのプラグとは?
バイクに取り付けられているプラグは、電流によって火花を発生させる部品です。火花をスパークさせる特徴から、スパークプラグとも呼ばれることもあります。プラグから出た火花が、エンジン内部で圧縮された混合気に触れることで、爆発が起こります。バイクのエンジンは、このときに生じたエネルギーによって動く仕組みです。
愛車に合ったプラグを選ぶ必要性
プラグには、常時2万ボルト以上の電流が流れています。混合機の爆発による圧力も常に発生しているため、プラグはバイクのなかでも特に負荷がかかる部品です。こうしたダメージにより、プラグがその役割を果たせなくなった場合、バイクのエンジンも正常に動作できなくなるかもしれません。
そのため、バイクの性能を最大限に発揮するには、プラグの種類や性能につながる以下の項目を頭に入れたうえで、必要以上の負荷がかからないプラグを選ぶ必要があります。
バイクのプラグにおける熱価とは?

プラグの熱価とは、プラグが受ける熱を発散する度合いを指します。つまり、プラグ自体の冷却性を数値化したものです。
プラグの熱価は、プラグ自体の設計と燃焼室内のガス温度によって左右されます。パフォーマンスを最大限に発揮するには、車種ごとの特徴や走り方に合った熱価のプラグを選ぶ必要があります。
プラグ選びで熱価が重要とされる理由
熱価が重要視される理由は、プラグ自体の特徴や役割を詳しく見るとよくわかります。
バイクの走行中は爆発による炎が常に当たるため、プラグは高温の状態を保っています。プラグは金属製なので本体が溶けてなくなることはありませんが、プラグの温度が950度を超えてしまうと、イグニッションという現象が起こります。イグニッションとは、プラグから火花を飛ばさなくても、混合気から自動で点火ができてしまう異常燃焼です。
こうした話をすると、「イグニッションを防ぐために、プラグをとにかく冷やし続ければ良いのでは?」と考えるかもしれません。しかし、プラグの冷却性を高めすぎると、今度は火花がきちんと飛ばなくなり、爆発によるエネルギーが生み出せなくなります。
一般的にプラグは、中心電極の温度が約500~950度の範囲内にあるときに、最大限の性能が発揮できるように作られています。つまり、約500~950度の範囲内に維持できる冷却性を持ったプラグを選ぶ必要があるということです。
プラグの熱価における2つの種類
プラグの熱価には、大きく分けて以下の2種類があります。熱価の数字は、大きいほど冷却性が高いことを意味します。
・低熱価(焼け型)とは?
ストリートバイクなどに使われることが多い種類です。低熱価のプラグには、発火部から放熱部(パッキン)までの距離が長く、燃焼ガスにさらされる面積が大きい特徴があります。このタイプのプラグの特徴は、爆発時の熱を受けやすく、熱を逃しにくいことです。
・高熱価(冷え型)とは?
スーパースポーツ系や、2ストバイクなどの高回転型エンジンに搭載されることが多い種類です。高熱価は、発火部と放熱部(パッキン)間の距離が短く、熱を受ける面積も狭い特徴があります。爆発時の熱を逃しやすい構造です。
どのような熱価のプラグを選ぶべき?
熱価(冷却性)という項目だけを見る場合、以下の基準でプラグを選ぶのがおすすめです。
ただし、プラグの性能は、形状や使用金属の種類によっても変わります。そのため、自分の愛車に合ったプラグを選ぶときには、熱価だけにこだわるのではなく、他の要素からも総合的に判断しましょう。
ここでは、耐久性や燃費、始動性などを向上させた3種類のプラグを紹介します。
・レジスタープラグ
セラミック抵抗体を内蔵することで、スパーク時に発生する点火ノイズを抑えられるプラグです。ノイズによってエンジン制御コンピュータが誤作動する、などの問題を防止できます。
・イリジウムプラグ
イリジウムという金属を混ぜ込んだ合金を使うことで、低燃費化やエンジンのパワー向上、加速性の向上などのメリットが得られる種類です。サーキットなどで高速走行を行なうことが多いバイクや、始動性が悪い車両におすすめです。
・多極プラグ
スパーク部の外側電極が複数ある種類です。この構造には、スパークする電極を分散させることで、余計なエネルギー消耗を抑えられる魅力があります。耐振性能や耐汚損性能などが優れている点も、大きな魅力です。
プラグの色による適正温度の見分け方
エンジンで火花がきちんとスパークしているか、また放熱ができているかどうかは、プラグの色で判断できます。
プラグ温度が適正な場合「キツネ色」
適正温度領域(約500度~800度以内)のプラグは、「キツネ色」もしくは「白色」です。有鉛ガソリンを使った場合、碍子(がいし)は「キツネ色」になりますが、無鉛ガソリンは「白」になるのが一般的です。
後述する「真っ黒」もしくは「漂白したような真っ白、灰色」でなければ、問題はないととらえてよいでしょう。
プラグ温度が低すぎる場合「真っ黒」
プラグが「黒色」の場合、うまくスパークできない「くすぶり」や「かぶり」が起こっている状態です。温度が低すぎて自己洗浄機能も働かないため、カーボン(すす)が堆積してプラグが黒くなります。
この色になる原因として多いのは、ガソリンやオイル漏れです。温度が低いというのは、放熱しすぎであるとも言い換えられます。したがって、今よりも熱価の低いプラグを選び、放熱量を小さくすることが必要だと考えられるでしょう。
プラグ温度が高すぎる場合「漂白したような真っ白、灰色」
プラグが「漂白したような真っ白」の場合、温度が高すぎてオーバーヒートしている状態です。異常燃焼(プレイグニッション)によるプラグの焼けすぎともいえます。この状態になると、外側電極や中心電極が溶解することで、プラグの電極表面に金属飛散物の付着や粒状の凹凸が見られる場合があるでしょう。
プレイグニッションが発生すると、燃焼室内が異常加熱されるため、エンジンへのダメージも大きくなります。また、電極の溶解で電気が正常に通らない場合、プラグが使用できなくなるかもしれません。
そのため、プラグが「漂白したように真っ白」な場合は、早めにプラグの熱価を上げるなどの対処をする必要があるでしょう。
プラグが焼けすぎる原因は「プラグ以外の可能性」もある
先述のとおりプラグの温度が低い場合は、熱価が高く冷却しすぎているか、ガソリンやエンジンが漏れている可能性が高いといえるでしょう。一方で、プラグの焼けすぎは、以下のようにさまざまなパーツの問題によって起こる場合があります。
ここでは、その一部を紹介します。
点火時期が進みすぎている
点火時期が進みすぎている場合、エンジンの始動性や乗り心地にも大きく影響します。場合によっては、急加速時にノッキングしやすくなることもあるでしょう。プラグの焼きすぎとともに、これらの症状も出ている場合は、点火時期のチェックと調整が必要です。
空燃比が薄すぎる
空燃比とは、空気の質量を燃費の質量で割った数字です。02センサーの調子が悪くなると、排気ガス中における酸素有無の検出が難しくなり、空燃比が薄すぎる状態に陥ります。マフラーのススが多い、燃費が悪いなどの症状が出ている場合、プラグとともに02センサーの点検を早めに行なったほうがよいでしょう。
潤滑油や冷却水が不足している
潤滑油や冷却水が足りない場合も、プラグの焼けすぎやオーバーヒートを起こしやすくなります。特に、真夏の冷却水不足は注意が必要です。こちらも、早めに点検・補充をしたほうがよいでしょう。
プラグの締めつけが甘い
プラグは、締めつけが強すぎても緩くても、最大のパフォーマンスが発揮できません。また、強く締めすぎた場合、プラグのネジが切れる可能性も出てきます。一方で緩すぎる場合は、端子が折れるおそれもあるでしょう。
このように、プラグはとてもデリケートな部品であるため、締めるときには直角に推奨トルクどおりに作業をすることが大切です。
バイクにおけるプラグの交換方法と手順
プラグの色確認や交換はセルフでも行なえますが、プラグに到達するまでの作業は、各車両のカウルの有無などによっても変わります。一般的には、プラグキャップさえ外してしまえば、それ以降の流れはほぼ同じです。
ここでは、プラグのチェックや交換における、基本的な作業手順を確認しておきましょう。
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まとめ
バイクのプラグは、発生させた火花によって爆発を起こし、エンジン内部にエネルギーを生じさせる部品です。そのため、プラグには、常に熱などの負荷がかかり続けます。
自分の愛車に合ったプラグを選ぶときには、使用金属や形状のほかに、熱価(番手)をしっかり確認することが大切です。熱価は、プラグが受ける熱を発散する度合い、すなわち冷却性を表します。低熱価(焼け型)と高熱価(冷え型)から、自分のバイクに合ったものを選びましょう。
適正温度で火花を出している場合、プラグは「キツネ色」もしくは「白」です。一方で、以下のような色の場合は、交換したほうが良いかもしれません。
また、プラグの焼けすぎは、以下のような原因でも起こる場合もあります。
愛車のプラグに異常加熱が起こる原因が特定できない、自分で交換作業が難しい場合は、早めにバイクの専門店に相談をしてみてください。
本記事は、2021年11月30日時点の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。