関東周辺には絶好のツーリングコースが山ほどある。広い関東平野を一歩出れば、そこはすべて極上のワインディングや温泉だといっても過言じゃない。そんな理由からか、関東地方から少々距離のある新潟を、ツーリングの目的地に選ぶことはほとんどない。
改めて新潟を思い浮かべてみる。コシヒカリ、佐渡、アルビレックス新潟……とまあ、なんとも乏しい。ボクの見聞の貧しさもたぶんにあるとはいえ、あまりにも知識がない。そうなるとがぜん興味が湧いてくるのがツーリングライダーの性。早々に地図を開き、ルートの吟味をスタートさせた。
温泉は豊富にある。国道や県道が中心ながら、ちょっと気になる山岳路もある。そして往復の距離や日程を考え合わせて、中越地方へと行くことにしたボクは、ヤマハ・ドラッグスター1100で雨混じりの天気のなか、関越自動車道を北上した。
「国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった」。川端康成の有名な小説『雪国』の一節からもわかるように、上越国境の三国トンネルを抜けると、天気は一変する。汗ばむほどの熱気と眩しい日差しがボクを迎えてくれた。魚野川沿いに広がる田んぼの緑が鮮やかだ。どうやら魚沼のコシヒカリは今年も順調に実りを迎えつつある。
六日町ICを降りて、まずは三国川ダムのしゃくなげ湖へ向かう。何年か前の真夏、一度だけツーリングで訪れたことがある。あまりの暑さにバイクを河原に止め、パンツ一枚になって川へ入った。童心に還って水と戯れた思い出が、ダムへの道を辿らせた。
ところが、湖へと通じる道は土砂崩れで通行止め。昨年10月に発生した新潟中越地震の爪痕はいまも残る。余震が続くなかで復旧も思うように進まないのだろう。ダムを仰ぎ見ただけで来た道を引き返した。
六日町へと戻り、国道253号線を八箇峠から魚沼スカイラインへとたどろうとしたが、その魚沼スカイラインも栃窪峠までの区間が通行止めとなっていた。そのためいったん塩沢に戻り、そこから県道で栃窪峠に上がりスカイラインへと入り込んだ。道幅は決して広くないしペースも上がらないけれど、南の谷川岳から続く峰々を眺めながらのクルージングが爽快だ。 |