最近、旅先でのちょっとしたワンシーン、たとえば古い建物だったり、どこか懐かしいと感じる風景だったり……が、妙に気になるようになってきた。これは、以前の「走る」ことだけが命題で、風景はそのなかで前から後ろへと溶けて流れるものでしかなかった自分のツーリングスタイルからの、じつに大きな変化だ。
それが気持ち的な余裕から生まれたものなのか、単に歳のせいなのかは分からないのだが、とにもかくにも待ちに待ったツーリングシーズンの到来。いてもたってもいられず、冒頭の「日本的で懐かしい風景」を探しに、秩父路へとR1200GSを走らせることにした。
関越自動車道を花園インターで降り、荒川、秩父鉄道と交わりながら西南へと延びる国道140号を走る。まずは川遊びのメッカとして多くの人でにぎわう長瀞へ。
バイクを停め、歩いて商店街を抜けると、これぞ日本という風景が広がる。幾重にも折り重なるダイナミックな岩畳と静かな川面の対比がなんとも美しいのだ。まだ時間が早いこともあって河原に人影はなく、とてもゆったりとした時間が流れている。「静かでしょ」。土産物屋のおばちゃんの言葉に何度もうなづいた。
ここはやはりライン下りでもと考えたが、昨日までの晴天はどこへやら、今にも泣き出しそうな空を見て今回は断念。代わりに国道を挟んで鎮座する宝登山山頂の梅園を訪れ、春の香りを満喫する。
その後、名物「豚のみそ漬け」で空腹を満たしたボクは、バイクで降りられる河原を発見し、ちょっとだけお遊びモードに突入。見た目よりも滑りやすくギャップも大きいが、バランスのいい車体のおかげで想像以上に滑らかに走ることができた。GSの持つ道を選ばないマルチな性能が、多くの旅人にこのバイクを選ばせる理由のひとつなのだろうと妙に感心してしまった。 |