海が見たい。うまい魚を食べたい。そんな欲求を満たすべく、ようやく取れた休日を利用して福島県いわき周辺へと向かったボクは、海とは反対方向の磐越自動車道のいわき三和ICで高速を降りた。まずは今日走る海岸線一帯を水石山から眺めようと考えたのだ。しかし軽快に高度を稼いでいくワインディングは、無情にも、というか予想どおり途中から完全に凍結。朝一のスカイビューはあきらめるしかない。残念……。
気を取り直し一路国道49号を東へ。「陸前浜街道」と呼ばれる国道6号を左折し、市としては日本でも最大級の面積を誇るといういわき市の中心街を抜けていく。夏井川を横目で眺めつつ走ると、やがて前方に海が見えてきた。
小さなトンネルを2つ抜けた所にある、いわき三大薬師のひとつ「医王山波立寺」の駐車場にバイクを停め小休止する。波立海岸は国道から見る景色が有名だが、弁天橋を渡って見られる奇岩「鰐が渕」の反対側がもっとすごい。打ち寄せる波の迫力とあいまって想像以上の光景だ。しばし呆然の後、道中の安全を願って手を合わせた。
ここからは白い砂が印象的な新舞子浜に沿って延びる県道382号を南下する。ムルティの軽快なパルス感を楽しみながら両サイドを松林に囲まれた道を駆け抜け、渚百選に選ばれた薄磯海岸へ。夏は海水浴客でごったがえすであろうこの近辺の砂浜にも、今はゆったりとした静かな時間が流れている。本当にキレイな海を見るならやっぱり冬なんだと改めて納得。
海岸から数分の密蔵院賢沼寺で、1mの大ウナギ!!が棲むという賢沼と沼の内弁財天を見物したボクは、勢い「美空ひばり」ゆかりの地として人気の高い塩屋崎と、さらに三崎公園へとムルティを走らせる。
小さなトンネルをいくつかくぐりながら進む県道15号は入り組んでいて少々わかりづらいが、ローカルムードは満点。折り重なって光る瓦屋根や、路地の向こうにちらっと見える海だとか、そうした道で出会う何気ない風景に、ボクなんかは余計に旅情をかきたてられてしまうのだ。
突端に設けられた展望台やマリンタワーなど、土地の利点をフルにいかした眺望施設で人気の三崎公園に着いたのは、おなかのへり具合のほうも気になりだしたお昼過ぎ。ひとしきり絶景を眺め、おいしいモノが待っているだろう小名浜港へと続く坂道を下った。 |