そもそもスーパーモトとは、ロードレースとモトクロスを組み合わせたようなシチュエーションで競われるレースで、今や新しいカテゴリーとしてすっかり定着。また、スーパーモトモデルは、路面状況などに左右されず、公道においてスポーツできるストリートファイターとしても注目を集めている。
世界選手権では、S2クラスが排気量450cc以下で、S1クラスが排気量無制限となるが、実戦ではバランスに勝る550〜650ccがS1クラスの主流になっている。
というわけで、このVツインエンジン搭載の990スーパーモトは、レース用ベースマシンではなく、スーパーモトのエッセンスを楽しめるリッタースポーツというのが本質だ。
もともとKTMのリッタースーパーモトは、05年に950SMとして登場。そして昨08年に、排気量をフルサイズとし、燃料供給をキャブから電子制御式とした990SMに発展。新登場となる990SMRは、SMをベースに、サーキット性能を高めたモデルである。
跨ると、標準モデルのSMよりも、また従来型となる950SMRよりもオンロード指向が高まっていることが明らかにわかる。レース用ではモトクロッサー並みに大きいサスペンションストロークも、ニュー990SMRでは、スタンダードな990SMより短縮されて、沈み具合はオンロードモデルらしくハードになっている。そのため、シート高の諸元値はSMと同じであっても、足着き性は決して良くはない。
また、ビッグオフローダーのハンドル幅を短くしたようなライポジは基本的にSMと同じでも、燃料タンクがコンパクト化され体重移動の自由度が高まっているし、車輌姿勢が若干後上がりになったことにともなって、少々前傾度が高まっている。
エンジンは、950よりも明らかに洗練された印象。そして、同系のエンジンを搭載するスーパーデュークよりも低中速が増強されていて、3〜4000回転ぐらいから欲しいトルクが湧き出てくる。
だから、サーキットでも回転域に気を使うことなく、走りに集中できる。KTMがトップモデルのRを作るにあたって、エンジン特性をSMから変更しなかった(SMTとも同じ)理由がわかるというものだ。
もちろん、950よりも高回転側に15馬力上乗せされているから、サーキットでも物足りなさを感じることなく、エキサイティングに楽しむことができる。
またSMRは、サーキットの高速コーナーでも、スーパースポーツに遜色のないコーナリング性能を発揮するし、強力なフロントブレーキにもバランスした車体を備えている。
スーパースポーツのようにどんな条件でもビシッとした安定性があるわけではないが、マシンを操る面白さでは負けない。そんな意味で“スーパー”なスポーツマシンなのである。
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