昔は、スリムな車体に高性能な単気筒エンジンを搭載したスポーツバイクがあった。軽さと軽快なハンドリングを生かしてキビキビと走る。4輪のライトウェイトスポーツカー的存在だ。
ところが騒音規制でシングルは姿を消し、今や世の中は4気筒エンジンとツインばかり。ライディングを楽しめるスポーツシングルは、もうこの世に登場しないのかと思っていた。
ところがKTMはやってくれた。690デュークだ。新開発の高性能シングルLC4をトラスフレームに搭載。もともとはレーシングエンジンだから、スロットルを開けた時の瞬発力は爆発的。どの回転からでもスロットル操作だけでドカンと一瞬で加速する。それでいて150km/hオーバーで巡航してもほとんど振動はない。
ゆっくり走ればとても従順だからツーリングや通勤も十分にこなす。正直なことを言って、これだけ万能なシングルは、過去存在しなかったと思う。ハンドリングは軽快。バンク角も深いからスポーツバイクを涼しい顔で追いかけまわす。速く走ろうとすると少しだけテクニックが必要になるが、そういう辛口な部分も魅力。
現在、世界で唯一の本格的スポーツシングルデューク。こいつはブレークすると思う。なにしろ僕自身がテスト中、夢中になってしまうくらいコイツの走りは面白いんだから。 |