試乗レポート　ベスパ GTS300ie スーパー

　「スクーターって、国が違うとこんなに変わってしまうんだ」これがベスパGTS300ieスーパーの印象だ。イタリアの老舗、元祖スクーターメーカーであるベスパが日本に送り込んできたこのマシンは、モダンレトロなデザインが特徴。とても上品で洗練されていて、高級ブランド品的なオーラが漂っている。それもこのマシンにとっては、イントロに過ぎない。

　じつはこんな上品な顔をして、走らせるととても元気。ライダーを急き立てるようなフィーリングなのである。これには驚いた。

　車格は原付より少し大きい程度。これに300ccのエンジンを押しこんでいるのだから遅いはずがない。スロットルを開ければ、力があり余っているぞ、という感じで気持ち良く加速する。ブレーキの効きや足まわりの動きだってしっかりしている。良く見てみれば使っている部品はどれもスポーツバイクみたいなものばかり。大きなラジエターもついていて、走りにはまったく妥協していないことがわかる。

　ハンドリングもクイック。これに乗ると、なんだか他のスクーターが、とてももっさりしているように感じてしまう。お洒落で上品。普段はとても素直なんだけれど、いざ本気を出すとビックリするほど過激。そんなイタリア美人が近くにいたら、普段の生活にも張りが出てきそうな気がする。日本製とはまったく違う路線を追求したベスパは個性的、かつ魅力的。単なる移動手段ではなく、余裕のある真のオトナの乗り物である。