15年前、ピザ屋のアルバイトをしていたことがある。愛車はジャイロキャノピーだった。
ジャイロキャノピーは、リヤタイヤこそつねに垂直を保つが、前タイヤや車体部分をバンクさせて曲がる構造となっている。車体が長いこともあり、速くコーナーを駆け抜けるには、深いバンク角が要求される。
最初こそ、バンク時に屋根の重さが気になったけど、これはすぐ慣れた。それよりも、あまりタイトにインを攻めると、バンクさせたことによって内側へと張り出した屋根を、電柱や壁なんかにぶつけかねないから、これだけはいつも注意していた。なんにせよ、スタッフの間では、速いヤツがエラい、という暗黙の共通意識があったから、いつもトバしていた気がする。
そんな僕の青春バイクが、4ストに刷新された。僕の体重増もあって、さすがに加速はちょっぴり鈍かったけど、そのぶん環境性能がいいんだから、文句は言えない。それに、ピザの到着時間に影響するほどの差じゃないはずだ。
車体は昔より安定性が増した感じがした。ただし、基本的に乗り味は2スト時代といっしょ。おかげで昔を懐かしめた。ジャイロキャノピーを自家用として買うひとは極少数だろう。でも、これを活用する仕事はたくさんある。仕事やバイトで乗ることがあったら、独特の走行性能を、ぜひ楽しんでください。