能、鼓(つづみ)、バイク……
大倉正之助さんの顏が頭に浮かぶ方は多いはずだ
「飛天双○能」という能と二輪を融合させたユニークな発想
世界のあらゆるジャンルのミュージシャンとの
コラボレーションなど、その活動は独創的だ
そんな大倉さんの根底にはやはりバイクがあった |
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能の囃子方である大・小鼓を十六代に渡って受け継いできた家に生まれた大倉流大鼓奏者である大倉正之助さん。能楽の人間がバイクに乗っていてもなんの不思議もないが、大倉さんは能と二輪を融合させたところが独創的なのだ。
「二輪というのは、明暗の二面を持ち合わせていますよね。そう快で鮮やかなライディングには、転倒するかもしれない危うさもありますが、能では、暗やみの冥界より、生前の戦語りや恋の物語をするために、この世に亡霊が宿り、この亡霊たちを明るみに出すことで、昇華させる意味があります。つまりそれぞれに暗、負の部分を持つことにより、明るさをより輝かせることができると思います。『いいことばかりがつねではない』、こんな共通項が能と二輪の両者にあるのではと思い、このふたつをつなぐ役目をしてみようと思ったんです」。
能と二輪。一見相反するような両者を結びつける。むろん、ご自分が能楽にたずさわるからこその発想だが、はた目から見ればビックリするほどの展開である。その根底には、多くの人に日本文化の伝統である能狂言に触れて欲しいという思いももちろんある。さまざまな取り組みはあるが「飛天双○能」そして「グローバルライダーズミーティング」といった、ライダーが能に触れられる場所を大倉さんは提供し続けている。
さらに能舞台を飛び出して、大倉さんは能を多くの子供たちにも体験してもらっている。大鼓を携えて、オートバイで旅をするという、いわば能とバイクの草の根的な活動である。
「人間は負の部分に背を向けたがります。バイクでいえば、事故で亡くなった人のことにはなるべく触れないでいようという気持ちですね。じつはこういったことがバイクの怖さや本当の姿を分かりにくくしていると思うのです。それならば、先人たちを祀って畏敬や畏怖の念をしっかりと持てるように、それを日本古来の能にならって欲しい。真正面から『死』に目を向け、自分たちの未来を見据えていかなければ、と思う。バイクに限らず、無念の思いを持って亡くなった者の夢を受け継いで、何をすることが亡くなった者に対するむくいとなるか、先人の死を無駄にしないように真剣に物事に取り組むことが大事ではないでしょうか」と、能の世界を通したバイクライフの未来を考えている。
そんな大倉さんの思いが今度はバイク造りの場にも生かされた。ヤマハ・MTー01がそれだ。このバイクをデザインしたGKダイナミックス代表の石山篤さんは大倉さんの飛天双○能に共感。石山氏曰く、「飛天を目指すグローバルライダー大倉正之助は日本古来の命の鼓動と叫びを発し、打ち込む大鼓のリズムにより芸道の神々を呼ばう」姿にMTー01を思い起こした。MTー01の愛称が「鼓動」と呼ばれるゆえんがここにある。
「大型車のなかで、日本車もしっかりとしたブランドを確立しないと生き残ってはいけないのではないでしょうか。MTー01には、これからの国産大型車のエポック的な存在になってもらいたいと思っていますよ。日本には哲学的な、そして文化的な背景がある。もちろんバイクは始めからあったわけではないけれども、武士たちによる騎馬文化がありました。いにしえの人々も馬に乗って旅をしたのです。だから単なる乗り物ではない『旅に出たい』と思わせるものが必要だとも思っています」と、MTー01のコンセプトそのものにも意見具申した大倉さんは言う。
「旅というのは、もともと徒歩だったわけです。現代でも徒歩で旅をできれば最高ですが、時間の問題など、さまざまなことがそれをさせてはくれません。徒歩の感覚に近いもの、それがバイクなのです。太陽や風、雨、そして香りなど、多くの自然の恵みを享受できることは、ライダーにとってかけがえのない経験です」
こういった取り組みが世界的に認められて、バイク文化がさらなる飛躍ならぬ「飛天」することを願って、大倉さんは今日も世界のどこかを大鼓を携えてバイクにまたがり奔走しているはずだ。 |
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●横浜飛天双○能とは「能」と「バイク」を融合させた、大倉さんならではの発想を具現化させたイベント。また、鈴鹿8耐と日本GPのスタートイベントにも出演の予定だ。 |
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能楽囃子大倉流大鼓方。重要無形文化財総合認定保持者である。室町時代から続く能楽囃子の家である、大倉流15世宗家故大倉長十郎長男である。能はもちろんのこと、日本古来の伝統的な舞台をつとめるほか、各国の民族芸能や音楽を紹介するために、さまざまなジャンルのミュージシャンなどとも交流を持ち、独創的なイベントを企画。また二輪と能の融合である「飛天双○能」は、昨年末で12年の節目を迎えた。 |
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