ボクの10代終わりから20代の始めごろは、夏になると必ず北海道にロングツーリングに出かけていた。まともな仕事もしていないうえに北海道に長くいるのが目的だったから、節約するために往きは高速やフェリーを使わず、国道4号線をひたすら北に向かって走り青森からフェリーで北海道に渡ったものだった。
どこに行こうかと地図を見ていると、そのころのことが懐かしく思い出される。国道4号線を辿ろうかななんて思って見ていたのだが、国道6号線も仙台まで行っていることを思い出した。しかも気持ちよさそうな海沿いを走っている区間もある。
インターネットで調べてみると、起点の東京・日本橋から水戸までを「水戸街道」、水戸から宮城県岩沼市の奥州街道交点までが「岩城街道」または「陸前浜街道」と呼ばれている。明治には両街道を合わせて「陸前浜街道」と呼んでいた時期もあった。しかも、この街道の歴史は古く、平安時代にはすでに存在していたという。浜街道という響きがなんだか気に入ってしまったボクは、ハーレーFLTRIロードグライドで陸前浜街道を走り岩沼を目指すことにした。
水戸を出発して80kmほど走ると茨城から福島に入る。県境を越えて6号線から西に入り、しばらく上ると勿来の関がある。この関を境に南は関東、北は東北となる。歴史は古く平安時代に蝦夷の襲来を防ぐために設けられたという。
木々の茂った展望台からは、五浦から菊田浦の海岸線を望むことができる。6号に戻り北上、小名浜から海岸線を辿って舞子浜へ。6km続く松林のなかを真っ直ぐ貫く道はなかなか気持ちいい。次の目的地は、地図で見つけた「アンモナイトセンター」なる施設。どんなところかも分からずに行ってみると、アンモナイトの化石発掘現場をそのまま建物で囲って見学できるようにしたもの。考古学やら化石好きのボクには予想外に嬉しい場所だ。近くにある「海竜の里」には某テレビ番組で発掘された海竜の化石なども展示してある。
海岸線に戻ってほっきめしの看板につられて飛び込んだのが「よつくらふれあい物産館」内の「くさの根」。福島沖は寒流と暖流がぶつかる絶好の漁場で、カツオをはじめカニやウニなど、知る人ぞ知る海産物の産地なのだ。この店では久之浜港に揚がった旬の魚を格安で食べることができる。こんな値段で本当にいいんですか?と聞きたくなるような海鮮丼と、1日限定15食のほっきめし定食はとくにオススメです。
ここから数kmは国道が海沿いを走る。浜街道といってはいるが浜に沿って走っている部分は少ない。貴重なセクションなのだ。しばらく走って楢葉町に入り木戸方向に右折する。ここが往時の浜街道の雰囲気を残す旧街道だ。今回のツーリングではどこにも「陸前浜街道」というロードサインは見つからず、この区間の2カ所の踏切に書かれた表示のみが「浜街道」と記されていた。
しばらく街なかや田園地帯を走る。信号も少なく適当なスピードで走れる分、交通量の多い国道より気分がいい。とくに停まるスポットも見あたらないので気持ちよく海の見える道や田園風景のなかを流していた。なんて思っていたのだが、後で地図をよくよく見たら本来の浜街道は双葉町あたりで国道から山側に別れていたのだった。 |